debugIT、オープンデータで抗菌薬耐性と闘う

2012年10月19日 in Special


世界保健機関(WHO)によれば、感染症の原因となる微生物がその治療薬の効果から逃れる方法(耐性)を身につけ、治療薬が効かなくなる抗菌薬耐性は、以下に示すような深刻な問題を世界中で引き起こしています

  • 毎年44万人もが新たに多剤耐性結核(MDR-TB)にかかり、そのうち少なくとも15万人が死亡している
  • 院内感染の多くがメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)のような高度耐性菌によって引き起こされている

出典:(※1)

抗菌薬耐性に関するこうした危機的な状況に立ち向かうために、EUが始めたプロジェクトがdebugITです。DebugITとは、”Detecting and Eliminating Bacteria Using Information Technology”のことであり、多数の医療機関が保有するデータを集めて解析し、抗菌薬耐性と闘う方法を協働で発見する仕組みです。DebugITは、欧州委員会の第7次枠組計画(FP7–217139)から資金を得て、2008年1月1日から2012年6月30日にかけて実施され、ベルギー、ドイツ、ブルガリア、フランス、チェコ、スウェーデン、ギリシャ、イギリス、スイスから14の医療機関・大学が参画しました。

出典:(※1)

debugITでは、形式も内容も異なる、さまざまな病院情報システムから情報をかき集めて、それを共通のドメインのオントロジーにマッピングします。集めたデータに対しては、データマイニングの技術によって解析が行われ、有用な知識を抽出します。抽出された知識はクラウド上に1つのリポジトリとして置かれ、どこからも利用することができます。

出典:(※1)

医療関係者はdebugITを利用して、医療機関における抗菌薬耐性の発生状況をモニタリングし、どのタイプのバクテリアがどのタイプの抗生物質に耐性を示しているのかを突きとめ、その状況下において最も効果的な薬剤を選択し、治療計画を策定することができるようになります。

debugITプロジェクト関係者によれば、抗菌薬耐性へ迅速で的確に対応するためには、コミュニティや国レベルではデータ量が足りず不可能であり、EUレベルの多数の国から医療機関が参加し、大量のデータの蓄積と解析を行う必要があるとのことです。大きな問題に取り組むためには、大きな枠組みと協力体制が必要になる場合もありますが、その効果は非常に大きいものがあります。

(※1) http://www.debugit.eu/news/documents/DebugIT_Les_Pensi%C3%A8res__2_.pdf

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)