オープンデータのライセンスを考える(5)データベース権

2012年10月23日 in Special


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1996年3月11日、EUはいわゆる「データベース指令」を発表した。域内で元々進められていた法的な枠組みを統一するための整備と再構築の一環であり、データベース産業の育成を狙いとして策定されたものである。

この指令は知的財産権のひとつにスイ・ジェネリス(特別)権、すなわち「データベース権」を加えた。この権利はデータの入手、検証、提供に関して量的、質的に実質的な投資(substantial investment)をしてデータベースを作成した人に与えられるものだ。
この権利の保有者はデータベースの全体または実質的な部分(substantial part)を抽出あるいは再利用する行為を妨げる権利を持つ。保護期間は15年であるが、内容の追加修正のために実質的な投資を行った場合にはさらに保護期間が与えられる。

何をもって実質的(substantial)と判断するかという点には多分に曖昧さが含まれるが、これはデータベースの価値が様々であることによる。著作物で無いもの、例えばWeb上に掲載された事実情報を集めても付与される権利なので、例えば1万件のデータベースから単純に1件、1回だけ抽出したというだけでは、量的にその権利を侵害したとは考えづらく、またそのデータベースから抽出したことを証明することも難しい。逆にごく一部であってもそのデータベースの根幹をなす情報であれば質の面で抽出したものと捉えることができるかもしれない。

仮に「競馬予想師的中率データベース」なるものが合法的に存在したとする。全国の予想師1万件のデータがあり、そのうち的中率90%以上の予想師がひとりだけいたとしよう。そのデータを1件だけ抽出した場合には「質的」に実質的と判断される可能性は十分にある。

今やデータ/データベースが国境を越えるのは極めて容易な時代である。EU加盟国は全てこの「データベース指令」に基づき2002年までに法制化を終えている。一方国内ではデータベースの権利は著作権の拡大解釈や他の法令とのあわせ技でなんとかカバーしている印象がある。これまで産業界自体にその権利に対するニーズが薄かったのかもしれないが、このところ注目が集まるビッグデータに関してはどうであろうか。グローバルな視点での法整備がなされないままではオープンとは逆の方向に向かう懸念がある。この点においてビッグデータにはオープンデータとはまた別の文脈がありそうな気がしてならない。

参考資料:
CA1155 – データベースの法的保護に関するEU指令
カレントアウェアネスNo.219 1997.11.20

データベースの法的保護に関する動向調査 調査報告書
平成15年12月 財団法人データベース振興センター

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Shu Higashi (東 修作)

Written by

Georepublic Japan に勤務。OKJP事務局長及びオープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン 事務局を兼務。Code for Japan設立発起人。内閣府電子行政オープンデータ実務者会議利活用推進WG構成員。 OpenStreetMapという自由な世界地図を作る活動をきっかけにオープンデータの活動に関わりはじめました。主な関心領域はデータのライセンシング、コミュニティ活動、市民参画、国際連携など。 投稿記事の内容はあくまで個人としてのものであり、所属する組織を代表する見解ではありません。