オープンデータビジネス9 MRIS、住む前に全てがわかる「不動産高度情報サービス」

2012年11月15日 in Special


アメリカでは不動産に関するさまざまな情報がMultiple Listing Service(MLS)と呼ばれるシステムに登録されており、MLSを通じて不動産の売手業者と買手業者が協力して不動産の仲介をしたり、MLSに登録されている情報をもとにして不動産の価値を評価したりすることができます。

Metropolitan Regional Information Systems(MRIS)は、アメリカで最大規模のMLSであり、メリーランド、ワシントンD.C.、北バージニア、西バージニアとペンシルベニアの一部を含む、ワシントン・ボルチモア広域都市圏をカバーしています。MRISには価格、写真、住宅ツアー、フロアプラン、地図など、日本でもお馴染みの情報だけでなく、公的機関から入手したデータを選択・加工・編集し、利用者が理解しやすいような形式で提供しています。MRISが提供している情報量は驚くほど多彩で、ここではその一端をご紹介します。

MRISはHomesDatabaseというWebサイトを通じて、一般消費者向けにもデータをわかりやすい形で提供しています。HomesDatabaseはMRISのCore Productsを利用したサイトであり、最も集客力のある不動産サイトの1つで、毎月平均50万人が訪れており、2万人もの新たな見込み客が生まれています

Miner Elementary School のDC-CASデータ
出典: http://www.greatschools.org/washington-dc/washington/4-Miner-Elementary-School/?tab=test-scores

HomesDatabaseでは、住宅、住人、経済、学校、環境、クオリティ・オブ・ライフ、地図などの分野ごとに詳細な情報を知ることができます。例えば学校に関しては、住所、電話番号、対象学年、生徒数、先生一人当たりの生徒数、生徒一人当たりの支出額、各学年の生徒数などに加えて、DC-CASの国語・数学・科学のテスト結果まで知ることができます

DC-CASとはコロンビア特別区で実施されているテストで、コロンビア特別区が定めた標準に対して生徒がどれだけ習熟しているのかを判断するために実施されています。

近隣の生活環境情報
出典:http://www.homesdatabase.com/homes-for-sale/DC/WASHINGTON/20002/1241-18TH-ST-NE-2-77875755

環境に関しては、高度、年間降水量、年間降雪量、1月の平均最低気温、7月の平均最高気温、年間の降雨日数、年間の晴天日数、快適指数などに加えて、大気の品質、流域の品質、一人当たりの医師の数、医療経費指標、スーパーファンドサイト指数、紫外線指数などまで知ることができます

医療経費指数とは、入院や通院、健康維持にかかる費用を相対的に比較するために指数で、国を100とした際の相対値で表しています。スーパーファンドサイト指数とは、産業廃棄物などが投棄されている汚染場所からどれくらいの影響を受けるのかを示す指数で、やはり1から100の値をとり、値が高いほど汚染されていないことを示しています。

MRISは公的機関を中心としたさまざまな機関からデータを得ています。

MRISの主なデータ源
出典:http://www.rdesk.com/communityinfo/NSR_Sources.htm

MRISは1993年の創業以来、順調にカバーエリアを拡大しており、現在は25の不動産協会、そのメンバーである5万もの不動産業者とビジネスをしています。MRISは主要なツールやデータ、サービスをCore Productsとして不動産業者などに有料で提供し、新規加入の際に295ドル、四半期ごとの利用料として165~258ドルの料金を得ており、その他に有料のPremium Productsも各種提供しています。以下に示すようにMRISを利用した不動産売買は非常に活発に行われています

  • 登録物件総数は54,266件(住宅37,353件、土地13,207件)(2012/11/15現在)
  • 1日当たりの平均売買高が9260万ドル(2011年)
  • 年間売買件数が10万4千件年間売買高が338億ドル(2011年)

MRISはアメリカでオバマ政権が誕生しオープンデータが本格化するかなり前から、さまざまな公的機関からデータを入手し、それを活用したビジネスを展開してきました。MRISの事例が示しているのは、こうしたオープンデータ運動が始まる以前から、公的機関はある程度の、またはかなりの種類・量のデータを実はすでに公開しており、そうした公的データを利用したビジネスを行うことは可能であったという事実です。

MRISが提供している情報は非常に多様で、とてもここですべてを紹介できるものではありません。是非、HomesDatabaseを使用してご自分の目で確かめてみてください。

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)