オープンデータのライセンスを考える(15)国土地理院による利用規約(試作版)

2012年11月24日 in Special


出典:http://www.gsi.go.jp/kiban/riyoukiyaku.html

嬉しいニュースが飛び込んできた。国土地理院が基盤地図情報の新たな利用規約(ライセンス)を試作し、11/22(木)より意見募集を開始した。よく練られた内容であり、政府や公共機関によるオープンデータのライセンスとしてひな形となり得るものではないかと思う。こういったものをベースに、利用規約の表記をできる限り統一的なものにすることがオープンデータの幅広い利活用には不可欠である。
個人的な感想を交えながら中身を見て行きたい。
尚、■部分の条項が今回の試作版の対象であり、□部分は従来よくありがちな条項であるが、今回は対象外となっている。

1.利用規約への同意
■この測量成果を利用する時に、以下の記載事項の内容(ライセンス)を承諾し同意したとみなし、この規約の範囲内で自由な利用を認める

2.禁止事項
■法律、法令、条例又は公序良俗に反する行為もしくはそれらを助長する行為
■国家・国民の安全に脅威を与える行為又はそれを助長する行為
■国土地理院が不適切と判断した行為

政府としてはもっともな条項であり、内容としては納得できる。オープンネスの思想から見れば公序良俗とはどこまでを言うのか等、境界線上の事例は出てくるであろうが、それらは個別に協議し、相互理解を深めていくべきものであろう。

一方、ここに書いても書かなくても、個別の法令は有効であり、違法な行為が裁きを免れるものではない。この点において、違法な行為に対する禁止事項は改めて明記する必要は無い、とする考え方もできるのではないか。

3.利用条件
■測量に使用し又は測量に使用するために複製する場合は、測量法に規定された手続きに従い申請を行い承認を受けること
□そのまま複製は不許可
□公衆に提供又は公衆送信は不許可
■複製物及び利用者が翻案(加工)して作成した製品(二次的著作物)に出所の明示をすること
□利用者が翻案(加工)して作成した製品(二次的著作物)にも本ライセンスと同じ利用条件を付すこと。ただし、利用者は二次的著作物の著作者人格権の行使はしないものとする
□営利目的及び商業目的での利用は不許可

詳しくは、『測量成果の複製・使用』をご覧下さい。

条件が最低限の2つだけとなっており、コンピュータやWeb上での活用に配慮されている。ひとつ目は測量法に基づくものであり、「測量」の範囲がどこまでを指すのか、という点がひとつのポイントであろう。例えば地図を下絵に使ったり、地理データをコンピュータ処理して何らかの可視化表現をする、といった使い方は「測量」にはあたらないと思われ、いちいち利用申請する必要が無いので、非常に使いやすくなったと言えよう。誤解なきよう補足すると、「測量」に該当する場合でも即利用できない訳ではなく、利用申請して承認を受ける必要がある、ということである。
ふたつ目の条件はいわゆる「表示」条項に相当する。これはデータの場合には、トレーサビリティの観点からは不可欠なものであろう。
これら2つの条項以外の□部分が外してある意義は大きい。

4.免責事項
■この測量成果の利用により発生する直接または間接の損失・損害等に対して、提供者は一切の責任を負わない
■この測量成果に関して、提供者はいかなる保証も提供しない

自己責任を前提とした利用という形で、全く問題ないと思う。

5.その他
■本ライセンスの準拠法は日本国の法律とし、本規約により国土地理院と利用者との間で生じた一切の紛争は、水戸地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする
■国土地理院は、利用者に事前の通知をすることなく、本規約の変更を行うことがある。その場合、利用者に公表した時点で効力が生じるものとする

海外製のライセンスには所轄裁判所の指定が海外である場合が多いので、現実問題として国内を指定するのはもっともな話だ。

以上、ごくおおざっぱに言えば、イギリスやフランスのオープンガバメントライセンスと考え方は同じで、基本的には「表示」ライセンスである。その上で国内の各種法令と整合性を取ろうとしているものだ。

欲を言えば、非著作物のデータをどうとらえるか、次の段階として踏み込んで頂きたいものである。

アンケートの形で意見を募集しているので、関心がおありの方はぜひよりよいものにするために意見表明頂きたい。繰り返しになるが、地理データにとどまらず、政府・公共機関のオープンデータに対するライセンスとして、ひな形となり得るものだ。関係者の努力に敬意を表したい。

1 response to オープンデータのライセンスを考える(15)国土地理院による利用規約(試作版)

  1. これは確かに非常に重要な一歩ですね。地図データがオープンデータ化すれば、それ自体のインパクトもさることながら、他のデータホルダーに対しても大きな影響を与えること必至です。早速、アンケートに応援メッセージを書き込んでお送りしました。

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Shu Higashi (東 修作)

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Georepublic Japan に勤務。OKJP事務局長及びオープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン 事務局を兼務。Code for Japan設立発起人。内閣府電子行政オープンデータ実務者会議利活用推進WG構成員。 OpenStreetMapという自由な世界地図を作る活動をきっかけにオープンデータの活動に関わりはじめました。主な関心領域はデータのライセンシング、コミュニティ活動、市民参画、国際連携など。 投稿記事の内容はあくまで個人としてのものであり、所属する組織を代表する見解ではありません。