23andMe、遺伝子分析サービスとデータ駆動型スパイラルアップモデル1

2012年12月20日 in Special


従来、オープンデータのビジネスモデルは、公的機関が保有するデータを利用して新しいサービスを開発したり、新しいサービスを構築するための支援環境を提供したりするものが主でした。この枠組みにおいては、オープンデータの提供者は公的機関であり、企業はそのデータの消費者、市民はデータを活用したサービスの利用者という位置付けになります。データの流れから見ると、「公的機関→企業→市民」という一方向であり、データが多様な主体を経由するチェーン構造をとることはあっても、ループ構造になることはほとんどありません。

しかし最近になって、公益性の高いデータを市民から収集し、それをデータベース化して公開する企業が現れてきました。しかも単にデータ公開するだけではなく、データを公開することによって新しい顧客の開拓につなげており、従来のデータの提供者としての公的機関、データの利用者としての企業という関係を超えたモデルが生まれてきています。ここではこの新しいモデルを便宜的にデータ駆動型スパイラルアップモデルと呼んでいます。

今回ご紹介するのは、アメリカで遺伝子分析サービスを提供している23andMeです。23andMe は、DNA分析における最新技術とWebツールを活用することによって、個人が自分自身の遺伝子情報をより詳細に知ることができるようにすることを目的として、2006年に創業しました。23andMeという名前は、人のゲノムを構成している23個の染色体の組に由来しています。

23andMeは、顧客の遺伝子情報を分析し、疾患リスクなど以下に示す245項目について判定するサービスを99ドルで提供しています(2012/12/20時点)。

  • 遺伝性疾患の可能性: 嚢胞性線維症、鎌状赤血球貧血、テイ・サックス病など、48種類
  • 疾患リスク: 2型糖尿病、加齢(性)黄斑変性症、パーキンソン病など、120種類
  • 薬に対する副作用:クロピドグレル有効性、ワルファリン感受性など、20種類
  • 遺伝的な形質:アルコールによる紅潮反応、慢性B型肝炎など、57種類

出典:https://www.23andme.com/howitworks/

23andMeを利用して遺伝子分析をするのは極めて簡単です。23andMeのWebサイトでサービスを購入すると、数日の内に遺伝子検査用のキットが届きます。利用者はこのキットに付いている容器に検査サンプルとなる唾液を入れ、23andMeに送り返すだけです。アメリカ国内だけでなく、海外からも利用することができます。

23andMeは届いた唾液からDNAを取り出し、イルミナ社のOmniExpress Plus Genotyping BeadChipという装置に、23andMe独自のバリアントを加えてカスタマイズしたものを用い、約31億にも上る塩基対の中から、23andMeが分析対象としている疾患やリスクに関係する約100万個の一塩基変異多型(SNP, single nucleotide polymorphisms)だけを解析します。4週間から6週間後、利用者は23andMe解析結果をWebやスマートフォンで見ることができます。

(2へ続く)

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)