投票率のライフサイクル説!?

2012年12月22日 in Special


2012年12月16日に行われた第46回衆院選の結果をうけて、若者の投票率低下とその反動としての高齢者優遇の「シルバーデモクラシー」への懸念が取りざたされていますが、本当に若者は投票に行かなかったのでしょうか?数字を元にして、その検証にチャレンジしてみました。

・・・と、いきなりですが、第46回衆院選の全国のオフィシャルな投票結果が見当たりません。新聞やウェブ上の記事で総務省発表の投票率を引用しているものは多数見受けられますが、総務省のウェブサイトには見当たりません!
現在掲載されているのは前回第45回と前々回第44回の内容です。数字はプレスにだけリリースしているのでしょうか。速報値として、ウェブサイトで広く公開して欲しいものです。

気を取り直して、各都道府県のウェブサイトで発表されている投票率を個々に拾ってみたのがこちらです。

都道府県別にランダムな数字を並べただけでは素人目にはなかなかその「意味」が浮かび上がってきませんのでこれ(前回H21年との投票率の差)を日本地図上に視覚化してみたのが下の図です。

出典: Geofuse

赤色が濃いほど投票率の低下を表します。全体として投票率の低下は明らかですが、その中でも関東・近畿といった大都市圏では、その低下率が比較的少ないことがわかります。一見、高齢化の進んだ地域での投票率低下が全体として多いように見受けられます。これは若者よりもむしろ高齢者が投票に行かなかったことを示すのでしょうか?

視点を変えて、年齢別の投票率を時系列で比べてみましょう。これは明るい選挙推進委員会が公開している過去の衆院選年齢別投票率の推移です。

出典: http://www.akaruisenkyo.or.jp/070various/071syugi/693/

社会情勢などにより全体としての投票率は上下していますが、20歳代から60歳代にかけて年齢とともに投票率が次第に上昇して行く傾向はほぼ固定化されているように見えます。これは、投票とその向こうにある政治というものに対して、社会の中での個人の位置づけが年齢とともに次第に関わりを増していく様を表しているのではないでしょうか。

つまり、卒業→就職→昇進→退職、といった社会の中でのライフサイクルに付随して、投票行動を決める「投票のライフサイクル」ともいうべきものがあるのではないでしょうか。

上記グラフの切り口を少し変えて、平成以降について、年齢を横軸にとって並び替えてみましょう。

年齢が上がるほど投票率が上がるという折れ線の傾きについては、どの選挙でも驚くほど似ていることが読み取れます。この傾向をさらに細かく見ると、年齢があがるにつれて選挙ごとの振れ幅は小さくなり、投票率の増加は60歳代をピークに以後下がり始める、というライフサイクルがより明らかになります。第46回(H24)の衆院選投票結果はまだ年齢別のデータが公開されていませんが、投票ライフサイクル説が正しければ、投票率が戦後最低であったことから上記グラフのいちばん下に同じような傾きの折れ線が引かれることになるでしょう。

横軸を選挙実施年に切り換えるたものが下記グラフです。

水色の70歳以上の線がいちばん安定しており、選挙に関わらず投票率が70%前後で落ち着いています。紫色の60歳代も80%前後で安定しており、人口構成の多さと併せて選挙結果に最も大きな影響を与えている世代と言って良いでしょう。振れ幅が大きく、いちばん不安定なのはやはり20歳代と30歳代です。中でも30歳代の第43回(H15(2003)年)での投票率が他の世代と比べて大きく下がっている点が特異な動きです。1980年以降に、もっとも失業率があがり、就職氷河期と言われる時期が長らく続いた時期であることと関係がありそうです。

出典: http://ecodb.net/country/JP/imf_persons.html#lur

ここから先、正確な分析には都道府県別の投票動向を年齢別に掘り下げて行く必要がありそうですが、今回そこまでデータが揃いませんでした。

ここまでに挙げた材料を元に投票率に関する考察を改めてまとめると以下のようになります。

・「投票ライフサイクル」ともいうべき年齢に応じた投票行動パターンがあるのではないか。
・今回の衆院選の結果も過去の年齢別投票率曲線と同じような形状を取るのではないか。
・若者が選挙に行ったかどうかの判断は現状のデータだけでは難しいが、投票ライフサイクルがあるとすれば、若者の投票率が上がれば他の世代も上がることになる。若者の投票率「だけ」が上がるには、これまでに無い何らかの環境変化や動機付けによる、社会への参加意識の高まりが必要と思われる。正規雇用の拡大はひとつのカギではなかろうか。
・既に若者とは呼ばれなくなった世代も、若者と呼ばれていた頃には同じ投票行動(低投票率)をしていたはず。

最後に、分析に際しては数字のトリックに気を付ける必要があります。例えば投票率は比率であって絶対数ではありません。高齢化社会を迎えた日本では現在の60歳前後と36歳前後のベビーブーム世代のところにヤマがありますが、以後の人口は減少の一途をたどっています。「シルバーデモクラシー」が日本のこれからの社会にとって本当に問題なのであれば、選挙によってそれを変えるべきは有権者数の多い世代なのではないでしょうか。

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Shu Higashi (東 修作)

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Georepublic Japan に勤務。OKJP事務局長及びオープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン 事務局を兼務。Code for Japan設立発起人。内閣府電子行政オープンデータ実務者会議利活用推進WG構成員。 OpenStreetMapという自由な世界地図を作る活動をきっかけにオープンデータの活動に関わりはじめました。主な関心領域はデータのライセンシング、コミュニティ活動、市民参画、国際連携など。 投稿記事の内容はあくまで個人としてのものであり、所属する組織を代表する見解ではありません。