英国では昨年、内閣府(Cabinet Office)がデータ戦略ボード(Data Strategy Board)をサポートするためにOpen Data User Group(ODUG)を設立しました。
ODUGの役割は英国政府に対して、国民の視点からどのようなデータを優先的にオープンデータ化すべきかをアドバイスすることです。ODUGは国民が具体的にどのようなデータを必要としているのかを知るために、データ公開のリクエストを広く受け付けています。
こうしたODUGのような活動は日本でも必要であると思われますが、やり方を良く考えないとうまくいかない可能性があります。ODUGのサイトを見ると一目瞭然でわかるのですが、これまで通算で寄せられたデータリクエスト数はわずか503しかありません(2013/1/29現在の値、2008年からの累計数)。しかもそのうち492がデータ待ち状態です。
ODUGの意図に反してデータ公開要求が集まらない理由はいくつか考えられます。
- リクエストしてもデータ公開がされないから嫌気がさしている
- data.gov.ukで多くのデータを公開しておりデータ公開要求がそもそも少ない
- どんなデータを要求すれば良いのかよくわからない
この中で特に注目したいのが3の理由です。ODUGが実施しているデータ公開要求は次のことを前提としています。
「何か問題を抱えている人は、その問題を解決するために必要なデータが何かわかっている」
この前提が成り立たない例はいくらでも挙げることができます。
- いじめられている子どもをできるだけ早く発見したい
- 高齢者が生きがいを持って生活できる街にしたい
- 子どもが安全に遊べる場所を増やしたい
つまり、社会的な問題の多くは、1つのデータセットで解決できるほど単純なものではなく、そもそもどんなデータが問題解決に役立つのか簡単にはわからない場合が多いということです。
問題や課題を解決するために役立ちそうなデータを予測するのは、膨大なデータから新しい意味を発見するデータ解析スペシャリストにとってはそれほど難しいものではないかもしれません。しかし、一般の人にとって目の前の問題を具体的なデータに置き換えるのは簡単なことではありません。このギャップは企業のデータに関するニーズ調査についてもそのまま当てはまります。
社会的なニーズやビジネスニーズを満たすために必要なデータを予測し、特定していくスキルが今必要とされています。ニーズとデータのギャップを克服し、ニーズを具体的なデータセットにまで落とし込む部分を支援することは、Open Knowledge Foundation Japanにとっても重要な役割の1つだと思います。