データドリブンソサエティ6 地域を変える「ちょっとしたスパイス」

2013年1月11日 in Special


前回、ルイシャム・ロンドン特別区の市民参加型環境向上システムLove Lewishamについてご紹介しました。ルイシャムではLove Lewishamに加えて、市民を公共サービス提供に参画させるためのさまざまな取り組みを行っています。アクティブモードに切り替わった市民をいかにして具体的な行動に導いていくのか、そのためにはちょっとしたスパイスが必要です

ルイシャムが採用している仕組みの1つが、Spiceが開発したエージェンシー型タイムバンキングです。Spiceとは、タイムバンキングの応用例をイギリス中に普及させるために設立された法人で、主に公共サービスの共同生産促進を目的としたエージェンシー型タイムバンキングの普及に力を入れています。

伝統的なタイムバンキングでは「個人対個人」でタイムクレジット(時間)の交換を行います。これに対してエージェンシー型タイムバンキングは、タイムクレジットのやり取りを「個人対個人」ではなく、「個人対エージェンシー」の形に発展させ、公的サービスの共同生産に主眼を置いている点に特徴があります

エージェンシー型タイムバンキング

左図の例では、アン、デイブ、ジョージは共同で公園を清掃するなど、公的サービスの共同生産に自らが参加することによってタイムクレジットを手に入れ、各人のタイムクレジットはエージェンシーに預託されます(タイムイン)。

その後各人は好きな時に、エージェンシーが提供するサービスリストに掲載された各種サービスとタイムクレジットを交換することができます(タイムアウト)。

つまり、アンは公園の清掃に参加することで、駅まで送ってもらうサービスをエージェンシーから受けることができるようになり、同じくデイブは公園の清掃に参加することによって、車を修理してもらうサービスを受けることができます。

エージェンシーがタイムクレジットと引き換えに提供しているサービスは、公共サービスの供給能力の余剰部分や、公共施設の遊休時間などを活用したものが含まれています。例えば、地方自治体が主催しているカルチャースクールの定員に空がある場合や、会議室や体育館などの公共施設に遊休時間がある場合には、その利用権がサービスリストに掲載されます。ルイシャムでもさまざまなサービスをリストに載せています。こうした余剰能力の有効に生かすことで、ほぼ追加コストゼロでサービスを提供することが可能になります。

さらに、営利企業の有償サービスがエージェンシーのサービスリストに掲載される場合もあります。営利企業がタイムクレジットとの交換で有償サービスの提供に応じているのは、地域に貢献したいという慈善的な動機や、イメージアップを狙う意図があるのはもちろんですが、集客効果を生かしたフリーミアム型ビジネスモデルによって、収益を上げることが可能だからです。

Spice導入による地域社会活性化効果は著しいものがあります。Spiceの調査によれば、120名の地域社会メンバーのうち9割以上が「新しい人との出会いが増えた」「新しい活動に参加する機会が増えた」と回答しており、「地域社会がより良くなった」と回答した人も72%に達しています。

Spiceはその革新性が認められ、2012年2月19日、英国国立科学・技術・芸術基金(NESTA)によって、OpenStreepMapなどと共に、Britain’s 50 New Radicalsに選出されました。2012年6月にはロンドン市でもSpiceが導入されました

ちょっとしたスパイスですが、その効果は絶大です。

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)