日本政府開設の「オープンデータアイデアボックス」の意義と、英国から学ぶオープンデータの需給ギャップ

2013年2月7日 in Special


日本政府は2013年2月1日~2月28日まで、行政・公共機関保有データのオープン化を促進するため、国民からのアイデアを募集するサイト「オープンデータアイディアボックス」を開設しています。

意見やアイデアを募集しているカテゴリーは、以下5つとなっています。

  • 公共データの利活用アイディア
  • 公開を希望する公共データとその形式
  • 公共データの公開・利用ルール
  • オープンデータ推進に関する全般的な意見
  • オープンデータの成功事例

 

世界的に見るとオープンデータの推進・利活用が遅れている日本ですが、この「オープンデータアイデアボックス」によって、日本政府のオープンデータポータル開設前の段階で国民の声に傾聴するという施策は、とても意義あることだと思います。

特質すべきポイントとしては、国民と政府のやりとりが、投稿フォームやメールなどのような一方通行的なものではなく、国民と政府が、そして国民と国民がそれぞれの意見やアイデアに対して双方向での議論が出来るということです。

 

イギリスでは昨年の7月、国民などの視点からどのようなデータを優先的に公開すべきかを政府にアドバイスする組織 Open Data User Group (ODUG) を設立しました (OKFJでの紹介記事)。

上記記事にもある通り、国民からのデータ公開リクエスト数は少なく、 その要因の一つとして「どんなデータを要求すれば良いのかよくわからない」という点があります。

ODUGによるリクエストの受付は、投稿フォームにリクエスト対象データやどのような目的に活用するのか、事細かに詳細を記入し一方的に送信してもらうというもので、これでは「課題も、それを解決するために必要なデータも、わかっている」方しか投稿出来ないでしょう。

 

今回の「オープンアイデアボックス」で、国民同士、国民と政府側である事務局による双方向での活発な議論がされれば、これを解決する手段の一つになるのではないでしょうか。

今回は2月28日までの期間限定での開設ですが、この中で有益な議論が多く行われ、その中から成功事例としての成果物が出来上がれば、今後も定期的(もしくは恒常的)にこのサイトが開設されていく動きになるかもしれません。

是非、多くの方に「オープンアイデアボックス」に参加していただき、日本のオープンデータを推進していきましょう!

 

英国でのオープンデータの需給ギャップ

上記だけでは、イギリスのオープンデータがうまくいっていない様に感じてしまいますが、そもそもイギリスはオープンガバメント先進国であり、既に多くの公共データが公開されています。

オープンデータを活用したビジネスも出始めており、経済に与える効果についての調査もオープンデータ推進と並行して行われています。

 

例えば、Deloitte UKはオープンデータを活用したビジネス開発に取り組む政府機関のOpen Data Institute (ODI) と共同で、”オープンデータと経済成長”についての分析レポートを昨年から随時公開しています。

昨年12月にブリーフノートとして公開された” Open growth: Stimulating demand for open data in the UK”では、英国での「オープンデータの需給ギャップ」についての定量的な分析結果が書かれています。

 

分析対象はイギリス政府の3つのオープンデータポータル (data.gov.uk、 www.ons.gov.uk、 data.london.gov.uk) で、「財政支出」から「エネルギー消費」まで幅広いカテゴリーで公開されている37,000以上のデータセットです。下図にオープン化(いわゆる供給)されているデータセット数をカテゴリー別にバブルの大きさで可視化しています。

これを見ると一目瞭然ですが、「財政支出」に関するデータが圧倒的に多くなっています。これは、オープンガバメントの大きな目的の一つである”行政の透明性”のために公開されているのが大きな要因でしょう。

「財政支出」データの公開については、議論の余地も、疑う余地もなく最優先事項であることは間違いありません。しかしながら、国民からの需要と比較するとそこにギャップが生じます。

 

下図は、上図と同じ3つのオープンデータポータル (data.gov.uk、 www.ons.gov.uk、 data.london.gov.uk) で、どのカテゴリーのデータセットがダウンロード(もしくは公開先へのリンクをクリック)されたかを可視化したものです。

公開されている全データセットの33%は「財政支出」カテゴリーですが、それに対してダウンロード数で見ると全体の1.5%にしかならないそうです。

 

上位に「経済」「人口統計」「ビジネス」などが来ているのは、それらを活用できるセクターが幅広いということと、そもそも既に活用されているからという理由もあります。

初期段階では活用しやすいデータのダウンロード数の割合が高くなるということは、日本でも同じような傾向が出るのではないでしょうか。

 

もう一つ「健康・社会介護」に注目してみると、公開されているデータセット数では上から4番目であるものの、ダウンロード数で見ると下から3番目となっています。

果たして、本当に「健康・社会介護」のデータに対する需要は無いのでしょうか。

 

日本では、先月・今月にかけて「高齢社会アイディアソン・ハッカソン」が開催され、そこでも介護に関するデータの必要性が少なからず出てきており、今後、「人口統計」や「地理情報」などのその他様々なデータとのマッシュアップによって、「健康・社会介護」のデータ活用が進んでいくのではないでしょうか。特に、少子高齢化でシニア領域が今後の成長市場となる日本では言わずもがなです。

 

もし、日本政府のオープンデータポータルが開設されても、なかなか民間や非営利団体による利活用がされないという事態になれば、日本のオープンデータの取組みが停滞してしまう可能性があります。

改めてになりますが、是非この機会に「オープンデータアイディアボックス」に参加し、様々な意見・アイデアについての議論を深め、本当に必要な公共データのオープン化を推進していきましょう。

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Naoyuki Ito

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マーケティングリサーチ会社にて、データ分析によるマーケティング支援やデータ分析環境の開発・構築。2014年4月からは、デジタルマーケティングへの3D(オープンデータ、パーソナルデータ、ビッグデータ)活用によって、生活者主導で豊かな生活が送られる社会の実現を目指しています。