『ベンチを直す人は出せないが、ペンキならある』、FixMyStreetでわかったこと

2013年2月12日 in Special


2月11日千葉市にて、FixMyStreetを使った『こどもNo.1度チェック』というイベントを開催しました。これはInternational Open Data Day in Japanの一環として23日に千葉市で開催予定の『Chiba Open Data Day 2013 – こどもNo.1千葉 –』のプレイベントとして、Chiba Open Data Day 2013実行委員会が開催したものです。当日は北風が徐々に強まる寒い日にもかかわらず、16名の方に参加していただくことができました。参加者は3つのグループに分かれ、千葉市を熟知した市民リーダーと一緒に街歩きをし、こどもにとって危険な場所や、改善した方が良いところがないかをチェックしました。

この街歩き&レポートイベントでは、札幌のダッピスタジオが開発したFixMyStreet Japanを活用しました。FixMyStreetと言えば、あのUKのmySocietyが有名ですが、今回利用したのはmySociety版ではなく、ダッピスタジオがmySocietyの承諾を得て独自に開発した日本版です。スマートフォンにアプリをインストールするだけで準備OK。あとは気になる箇所をカメラでパチリ、位置はGPSで自動的に取得されます。タイトルを書き、分類を選び、どこが問題なのかを簡単に書いて、その場でレポートをアップして1件完成。今回は3チーム、総勢16名(うち、こども3名)が1時間半ほど歩いて、60件のレポートをアップしました

街歩きの後は、参加者全員でレポートを見ながら、報告者がなぜそこをレポートしたのかについて説明し、それについてどんな改善方法があるのかなどを自由に話し合いました。市民の皆さんが「これは行政の仕事だろう」と思っていたのが、実はそうではなかったりするものもあり、とても有意義でした。

その中でも、私が一番「コレは!」と思ったのは、あるベンチについて話をしている時です。そのベンチは木製で、作られてからかなり年月が経っているのか、表面がひどく傷んでいました。さらに横木が一本外れてしまっていて、こどもがそこに足を挟んでしまう恐れもありました。「ベンチを取り換えたり全体を修理すると数十万円かかる」、「横木を修理するとなると素人では難しい」、「傷みがひどすぎて修理するのは無理だろう」、「もっと早くメンテナンスしていたら良かったのに」、等の話が次々と出る中、千葉市役所に勤めているある参加者の方が

『ベンチを直す人は出せないが、ペンキならある』

と発言しました。市役所が常にベンチをメンテナンスすることは難しいが、もしペンキの塗り替えなどを市民がやってくれるのなら、それに必要なペンキは提供できるということです。これは些細なことに聞えるかもしれませんが、従来の「サービス提供者vsサービス消費者」という関係を越える非常に画期的な出来事です。

今回の壊れたベンチ問題についての典型的なシナリオは次のようになります。

  • 市民:ベンチをメンテナンスするのは市役所の仕事、税金も払っているんだからきちんとやって欲しい
  • 市役所:市民のためにメンテナンスしたいのは山々だが、予算にも限りがあり、全部をやるのは到底不可能
  • 市民:市役所はきちんと仕事をしてくれない
  • 市役所:市民は役所の仕事をわかってくれない

これではいくら市民が問題点を指摘しても、進展する望みはありません。市民も市役所も、お互いにフラストレーションが溜まるだけです。どうしてそうなってしまうのかというと、「完全にやる(やらせる)か、まったくやらない(やらせない)か」という考え方にとらわれすぎているためです。市民は「税金をはらっているのだから市役所で全部やって欲しい」、市役所は「やるなら全責任をもって自分たちでやらなければならない」と考えています。この壁を壊して、お互いにオープンになることで、「わが街、千葉」のためにできることは大きく拡がります

FixMyStreetは市民が行政に対して問題点を指摘するツールではありません。「わが街」のために市民と行政が一緒になって考えるテーマやきっかけを提供するツールです。FixMyStreetで問題箇所をレポートし、後は行政にお願いという使い方は正しくありません。FixMyStreetのレポートをもとに市民や行政が話し合い、お互いに協力できるところは協力し、妥協できるところは妥協していくという、話し合いのプロセスこそが最も重要です。今回の千葉市でのプレイベントは、そのことの重要性を改めて思い出させてくれました。

寒い中、参加していただいた皆様、本当にありがとうございました。

23日も引き続き千葉市でFixMyStreetを活用したイベントを開催しますので、ご興味のある方は是非ご参加ください。

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)