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レポート:「データ公開ニーズを深堀りする ~オープンデータトークシリーズ(1)」

2013年4月29日 in Featured, News, Special

904485_499182313481244_930106737_o4月26日、Open Knowledge Foundation Japanと国際大学GLOCOMオープンガバメント研究会は共催で、「データ公開ニーズを深堀りする」と題したイベントを開催しました。これは、2013年度から月1回のペースで開催していく「オープンデータトークシリーズ」の第1回です。

開催概要

◯日時 2013年4月26日(金)19:30〜21:30

◯会場 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター (東京都港区六本木6-15-21ハークス六本木ビル2F)

政府は新しいIT戦略の柱として公共データの活用を掲げ、今後、新規ビジネスの創出や官民協働を強力に進めていく方針を示しています。政府がデータ公開に積極的な姿勢を示しているいま、私達はどのようなデータの公開を求めていくべきでしょうか。またそれらが公開された時にどのように活用していくことができるでしょうか。「オープンデータアイディアボックス」に寄せられた意見や要望、その他の委員会等で公開されたニーズ調査の結果などを読み込み、皆さんと一緒に公共データ活用の具体的な姿を思い描く機会にしたいと思います。当日は参照資料などを元に多くの方に意見を出していただき、議論を深めたいと考えています。

◯参照資料

1.2月に政府が行った「オープンデータアイディアボックス」に寄せられた意見やデータ公開ニーズ

2.オープンデータ実務者会議等に提出された調査結果など

3.International Open Data Dayで発掘されたニーズ

◯主な参加者

平本健二氏 政府CIO補佐官 兼 経済産業省CIO補佐官

座間敏如氏 政府CIO補佐官 兼 財務省CIO補佐官

川島宏一氏 佐賀県顧問 (株)公共イノベーション代表

高木祐介氏  (株)自動処理代表取締役、オープンビジネスソフトウェア協会副会長

松谷豊氏・恩田さくら氏 一般財団法人日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)電子情報利活用研究部

庄司昌彦 国際大学GLOCOM/オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン代表 他

レポート

冒頭にOKFJ/国際大学GLOCOMの庄司が、「オープンデータの活用に関心が高まってきている中、『どんな情報にニーズがあるのか』あるいは『ニーズ調査をしたいのだが』といった相談を受けるようになってきた。政府が昨年度末に行った「オープンデータアイディアボックス」や経団連が行った調査、JIPDECが行った調査などにはそうした疑問に答える有益な情報が含まれており、これらの調査を紹介することで、もう一段深いニーズの検討ができるのではないかと思う」と会の趣旨を説明しました。

476953_499182616814547_370310320_o次に川島氏が政府のオープンデータ関連のこれまでの動きを概説し、「具体的な活用事例がどんどん出てきて欲しい。そのような動きが、その後の動きに拍車をかけていく。だから、今から想定されるデータを見ていただいて、狙いを定め、データ活用の準備を始めて欲しい。これからのオープンデータの動きは、事業仕分けの時のような国民的関心を起こせるかどうかが鍵になる。この意味で、政府側の最初の動きと合わせ、開発側、ニーズ側も大きなうねりを起こしていって欲しい」と強い期待を述べました。

そして、(株)自動処理の高木氏から政府の「オープンデータアイディアボックス」の投稿内容を整理したマインドマップの紹介、JIPDECの松谷氏・恩田氏から同協会が行った調査内容  (参考資料) の紹介、政府CIO補佐官の平本氏からこれまでの調査を俯瞰した分析やコード体系の一覧等の紹介が行われました。

その後は約50名の参加者が、これらの資料を踏まえ、「3つ以上のデータを活用した、ビジネス的・社会的インパクトが大きな具体的アイディア」を検討しました。進め方は次の通りでした。

  1. 各自で「3つ以上のデータを活用した具体的アイディア」をたくさん考える (20分)
  2. 5人程度のグループでアイディアを紹介しあい、そのグループで「最もビジネス的・社会的インパクトが大きなアイディア」を決める(20分)
  3. アイディアを(1)内容の解説と、(2)使用するデータ、に分けてTwitterに投稿する(10分程度)
  4. Twitterの投稿を読み上げ、内容を全体で共有

各グループのアイディアは次のとおりでした。

461311_499182073481268_48502705_o第1グループ

  • 政治資金収支報告書×公共投資情報×公共工事発注データ×得票率×雇用×受注企業=公共事業による影響と政治家の影響力と選挙結果の相関を把握
  •  地価×各自治体における気象および災害に関わるデータ×犯罪情報×交通事故多発時点情報×公共交通×道路情報×予防接種×通勤所要時間×保育園×避難地図×家計調査×都市計画
  • 住みたい街、住みやすい街を、教えてくれるwebサイト・サービスの構築

第2グループ

  • RSMDP Project = “Realtime Seafood Market Data Platform” 天候や、POSデータなどと組み合わせ消費量や小売価格を予測することで、漁師が最適な売り場(=漁港)に行くことができ、国民も最適なシーフードに辿りつける。日毎に変動する、漁港ごとの水揚げ量、価格をデータとして提供してもらうことが前提。
  • 使うデータ 【天候】【漁港ごとの日別水揚げ量/価格データ・出荷量】【POSデータ】【地方自治体によるイベントカレンダー】

第3グループ

  • 行政の効率の可視化、全国的な収支の可視化
  • 使用データは、町丁目単位の人口、行政単位の収支(経年)、GDPを元に、GDPを指標として全国平均に比べて非効率な運営がされている改善ポイントを探し、ビジネスチャンスを明らかにする。

第4グループ

  • あらゆる層の人たちが暮らしやすい街を見つけることができるスマートライフ構想
  • 使用データ:駅の数、混雑率、路線数、始発終電時間。医療機関の数、待ち時間。メッシュの年齢別人口分布、雇用分布。公共サービスのサービスコードとサービスレベル。

第5グループ

  • 災害時の要避難支援者リストと避難所、避難ルート、避難支援者のデータから避難計画を作成し、発災時にはスマホアプリ(online、offline)により避難支援を行う
  • 使用データ:地番現況図、住居表示地図、避難所リスト、道路ネットワークデータ、標高データといったオープンデータ+個別情報(要避難支援者、自治会等の支援者リスト)

第6グループ

  • Government Data Store. ①公共データを使った様々なデータサービスのお題とデータフォーマットをアップ、②政府、自治体、市民がデータをクラウド入力、③出来上がったデータサービスを企業に提供。たとえば、わが街チョイス、ジャパラン。
  • 使用データ:たとえば、学校テストデータ、緑化率、喫煙率、高齢化比率、、、、、etc.

第7グループ

  • ゴミを減らす方法(環境問題対策)
  • 使用データ:処理量、ゴミの量(種類別)、地域別処理能力、人口、カラスの棲息数、食品廃棄量、環境汚染度、搬入搬出量

第8グループ

  • 地域(自治体)と,移動を検討している主体(人や組織)をマッチングするサービス.例1: 補助金を狙っている企業が質問に答えていくと,マッチする地域と,その補助金の効果もあわせて可視化.
  • 使用データ:例1の場合,補助金・公募情報と,法人情報と,税金と,許認可情報など

第9グループ

  • アイデア:子どもがいる親向けのトイレ情報、コンセプト:公共データx民間データで価値を出す、プレーヤー:子ども向けサービスをやっている業者。
  • 使用データ:公共トイレの位置(公共データ)+建物の建築申請の図面からトイレデータを抽出(民間データ)+民間も含めたトイレ口コミデータ(特に子どもの使いやすさ:バリアフリー、おむつテーブル)+空き情報(リアルタイム)

第10グループ

  • 自殺と気象と経済の関係性
  • 使用データ:気象情報(アメダス、紫外線(UV等))、市区町村単位の自殺データ、経済指標

第11グループ

  • 空き地情報を利用したマイクロビジネス活性化アイディア。空き地情報を地価とセットで公開し、空き地所有者と空き地を借りたい人をマッチングするサービス。
  • 使用データ:不動産登記情報、路線価、周辺人口情報

当日のツイートは以下にまとめられています。
Togetter:「データ公開ニーズを深堀りする」国際大学GLOCOMオープンガバメント研究会 / Open Knowledge Foundation Japan共催 ~オープンデータトークシリーズ(1)

今後もこうした勉強会的イベントを月1回のペースで開催していく予定です。ご期待ください。

オープンデータの技術革新が日本から!富士通研究所が大規模LOD格納・検索技術を開発

2013年4月26日 in News

 

先週、ネット上では富士通研究所が開発した次世代ユーザーインターフェース(プレスリリース動画)が”未来的過ぎる”と各所で話題になりました。

 

それと同日、富士通研究所はもう一つのプレスリリースを出しています。それが、大規模なLinked Open Dataの格納・検索技術です。

オープンデータの活用革新! リンクが張られた公開データ(LOD: Linked Open Data)向け 大規模データ格納・検索技術を開発|富士通

 

4月11日の日経一面に「公共データを民間開放、新産業創出 政府IT戦略素案 」が載るなど、政府の成長戦略におけるオープンデータの利活用について、日本でもようやく注目されるようになってきましたが、IT戦略本部が発表しているロードマップ案を見ても、データ規格やAPI規格などの技術仕様については今後一年間かけて行われるなど、オープンデータポータル公開までの道のりは、まだ道半ばです。

 

公開されるデータ形式・規格については、電子行政オープンデータ実務者会議にてオープンデータ流通推進コンソーシアムが提言しており、最新の発表資料には「情報流通連携基盤システム」の規格案(P.12~)として”SPARQLベースのAPI”というものが提案されています。

オープンデータ先進国である英国のオープンデータプラットフォーム「data.gov.uk」でも一部のデータがSPARQLを問い合わせ言語とするRDF形式で公開されており、このRDF形式で公開されているオープンデータはLinked Open Data(LOD)と呼ばれています。このLODと呼ばれるデータセット群は年々増加しており、その公開サイトがバラバラであったり、複数のデータを組み合わせた処理が複雑であるなど、様々な問題が浮き彫りになってきていました。

 

そして、それらの問題を解決できる技術が、今回、富士通研究所とDigital Enterprise Research Institute(DERI)が共同開発したものになります。プレスリリースの中で、開発することになった背景・課題や開発された技術についてかなり詳細に書かれていますので、是非読んでください。

 

また、発表会の動画がYoutubeにアップされており、以下の動画の最初から2分22秒まで、この大規模LOD格納・検索技術のことが説明されています。

今後の予定としては、このLOD活用基盤を2013年中に世界に先駆けて日本で無償公開予定となっているそうで、4月17日にドバイで開催されたXBRL26 Conferenceでは、今年末には正式ローンチまでのロードマップが公開される(今後2年は継続開発)と発表されたようです。

 

今後、日本政府が公開予定のオープンデータプラットフォームにおいても、RDF形式のLODが公開される可能性は高いです。これら大量のLODをハンドリング・分析できる人の需要は間違いなく増えてくると思います。もし、Linked Dataについて詳しく知りたい・技術的なところを勉強したい方がいましたら、リンクト・オープン・データ・イニシアティブの方々が翻訳された日本語での唯一の解説書である『Linked Data: Webをグローバルなデータ空間にする仕組み』がオススメです。

また4月20日に開催されたデータサイエンティストの勉強会として有名なR勉強会@東京(#TokyoR)でも一つの題材とされており、このような方々とオープンデータを結びつける活動をOKFJとしても支援していければと考えています。

Developing Latin America 2012の英語版ビデオ公開

2013年4月24日 in News

2012年12月に開催されたDeveloping Latin Americaの英語版ビデオが公開されました。最初から1分間ほどの部分は、どこでも使えるほどわかりやすくとても良い内容だと思います。参加者の生の声や受賞作品の紹介などもあります。

EU、オープンデータ・スコアボード発表、イギリスがトップ、スペインとフランスが続く

2013年4月23日 in News

EU各国におけるオープンデータ進捗度を表すスコアボードが公開されました

このスコアボードは以下の7つの観点から各国のオープンデータ度を評価したものです。

  • PSI指令の実施状況(2指標)
  • 再利用状況(5指標)
  • フォーマット(4指標)
  • 価格(3指標)
  • 排他的な協定(3指標)
  • 地方におけるオープンデータ実施状況(3指標)
  • イベントや活動(3指標)

評価指標の詳細はこちらで公開されています。グラフの上には7つの評価観点をトグルボタンで選べるようになっており、それぞれの部門でどこがトップかを見比べることができます。

総合点では予想通りイギリスがトップ、スペインとフランスがそれに続きます。スペインというと意外に思われるかもしれませんが、オープンデータの取り組みは以前から非常に活発な国の1つです。政府の財政危機という背景もあるかもしれませんが、メキシコ、ブラジルをはじめ、ラテン系の国々は総じてオープンデータに積極的です。あのお祭りの国イタリアは、イベントや活動でトップにランキングされています。

出典: European PSI Scoreboard

スイスのロシュ、タミフルなどの全臨床試験データを公開へ

2013年4月19日 in News

スイスの大手製薬メーカー、ロシュが承認済みの製品に関する臨床試験データを公開すると発表しました。

ロシュに対しては、正しい医療情報を伝える活動を世界的に展開しているコクラン共同計画(Cochrane Collaboration)や、イギリス医師会雑誌(British Medical Journal)などが長年に渡って臨床試験データの公開を要求してきました。

さらに、欧州医薬品局(EMA)が臨床試験データを原則公開すると発表したこと、同じく大手製薬メーカであるグラクソ・スミスクラインがEMAの方針に沿って自ら臨床試験データを公開すると発表したことなども、ロシュの今回の決断を後押ししました。

ロシュについては以前からインフルエンザ治療薬「タミフル」の有効性について疑問の声が上がっていました。ロシュは世界的に豚インフルエンザが流行した際に、タミフルによって 32億スイスフラン(26億ユーロ)の利益を上げたと言われています。コクラン共同計画などは、ロシュからタミフルに関するデータを入手し、その有効性について独自の調査を開始する計画です。

EMA、グラクソ・スミスクライン、ロシュと続く臨床試験データ公開の流れは、これからさらに加速していくことでしょう。こうしたデータ公開によって、良質の薬だけが市場に残り、副作用が減り、創薬のスピードがアップするなど、さまざまな効果が期待できます。一方で、長年データを秘匿することによって年間1兆ドルもの経済規模を維持してきた製薬業界がどのように変わっていくのかについても注目したいと思います。

参考: Roche to Release Drug Data

dandelion、地理&リンクトデータのワンストップショップ

2013年4月18日 in Special

イタリアのSpazioDatiが開発したdandelionという地理&リンクトデータのワンストップショップが、いよいよプライベートβに入ります。

SpazioDatiはセマンティックウェブやリンクトオープンデータを専門とする企業で、従来からイタリアの自治体・地方議会・投資・人口・経済などの統計情報や観光情報をウィジェットやAPIを通じてアクセスできるサービスを販売してきました。dandelionはSpazioDatiの従来のビジネスを自然に拡張したワンストップマーケットです。

dandelionは、信頼できるデータ源からデータを収集して顧客に提供します。一般消費者に対してはできるだけ利用しやすいよう複数のデータをマッシュアップして提供し、開発者に対してはできるだけ多くのプラットフォームと言語で利用できるAPIとして提供します。企業や政府機関にとってのdandelionは、データを公開して多くの人々に活用してもらう場であり、またデータを販売する場でもあります。

dandelionが現在利用しているデータは、DBpediaOpenStreetMapGeoNames、その他政府機関のオープンデータです。DBpediaはWikipediaから情報を抽出して、それらを別のデータとリンクして公開するプロジェクトであり、OpenStreetMapは誰でも自由に利用できる世界地図を作るプロジェクト、GeoNamesは世界の地理データを集めた無料のデータベースを作成するプロジェクトです。

danndelionは将来的には無償・有償の民間企業のデータも活用し、それらと公的機関のデータとをリンクする考えであり、具体的な計画はこの夏に明らかになる予定です。これからはデータマーケットビジネスの領域にも、リンクトオープンデータを売り物にする企業が増えてくると思われます。

参考: Geo and Linked Data Marketplace: Dandelion’s Private Beta

Sunlight Foundation、ハッカソンなどの主催者向けスポンサープログラムを強化

2013年4月17日 in News

アメリカで政府の透明性向上に取り組む非営利団体Sunlight Foundationが、ハッカソンなどのイベントがより活発に開催されるよう、イベントスポンサープログラムを強化しました。対象となるイベントはハッカソン、ミートアップなど7種類。ハッカソンには200ドルから500ドル、ミートアップには100ドルから200ドル、小規模なカンファレンスには1,000ドルまで資金が提供されます

Sunlight Foundationは、イベント主催者向けにツールキットを整備し、イベントで使えるデータについても提供します。イベント主催者はSunlight Foundationと契約を結び、ロゴを掲載したり、会場にプリント配布スペースを設けたりする義務があります。詳しくはツールキットに含まれている契約書を参照してください。

出典: Unveiling Sunlight Open Gov Events

オープンガバメントのキモは地域再生

2013年4月12日 in Special

Collaboration / ChrisL_AK / CC BY

Collaboration / ChrisL_AK / CC BY

普請から公共事業へ、そしてこれから

普請(*1)という言葉をご存知でしょうか。普(あまねく)請(こう)の字義どおりみんなに呼びかけて何かをやろうとするものです。古くは近所の道路整備や家の建築など、身近な共同体の相互扶助として行われてきました。後の公共事業の原型でもあります。

近代国家を作り上げるため、あるいは戦後の復興を成し遂げるため、国を挙げて大掛かりな公共事業を行い、経済と共に社会を回して行く仕組みで日本は発展してきました。しかし、完璧な社会は人類史上未だ登場していません。世の習いとして発展はいずれ停滞に至り下降が始まります。日本では団塊世代を中心とした戦後の発展が停滞期を迎え、既に高齢化、少子化社会に向けてまっしぐら。政府・自治体主導の公共事業への依存を大きく方向転換する時期に来ています。

世界の動き

一方、世界を見るとどうでしょうか。

2009年1月、米国オバマ大統領はその就任に際して「透明性(transparency)」、「国民参加(participation)」、「協業(collaboration)」というオープンガバメントの3原則を提示しました。

2009年9月、オライリー・メディア社のファウンダーであるティム・オライリーはガバメント2.0を提唱しました。これはITを活用したプラットフォームとしての政府や、Do It Ourselves な社会を指しています。(*2)

2010年7月、英国キャメロン首相は新政権の社会政策として「大きな政府」ではなく「大きな社会(Big Society)」を打ち出しました。その内容は中央政府から地方自治体への権限移譲、地域住民の行政への参画、民間非営利部門の支援、政府データの公開などです。(*3)

オープンガバメントガバメント2.0、そして大きな社会というコンセプトは表現こそ違え、いずれもオープンデータやIT技術を媒介として個人やコミュニティ(地域の共同体)を中心とする新しい社会をめざしている点で、通底する思想はほぼ同じと言えるでしょう。

こういった動きは日本で根付くのでしょうか?IT技術に縁のない人には関係のない話なのでしょうか?

道普請やご隠居に見る社会参画

かつて日本には中央や地方の政府とは別に、身近な集落内で助けあう共同体はごく普通に存在しており、例えば「道普請」は今でも行われています。(*4)政府や自治体に税金をつぎ込んでもらうだけでなく、自分たちでやれることはやってしまおうというならわしの背景には、精神論だけではなく経済的な合理性もあります。

また、江戸時代には早ければ40歳台半ばにはリタイアする「ご隠居」がかなりいたとする説があります。(*5)ご隠居とは次世代に家督を譲り、直接的な利害関係を離れて街を見守る、いわばスーパーバイザーです。おそらく自分の家族のことだけでなく、町内やより広い社会の「全体最適」の視点を持ちやすい存在だったのではないでしょうか。こういった人たちが地域の自治に意見を出したり、参加したりする自律的な社会は、まさに今必要なものです。

地域の行政は全て役所の役割として一方的に任せてしまうと役所に対する声の大きい人の意見だけが通ったり、受益者としての市民の権利意識が強くなりがちで、結果的に不平等であったり高コストな社会を生み出しやすいといった弊害が出てきます。これからの日本にはリタイアした人も、現役の人も、社会におけるそれぞれの立場から、声の大小ではなく、オープンデータという客観的な事実に基づいて、自分の住む地域の行政をウォッチし、意見し、参加すべきです。他の誰でもない、自分自身が参加意識を持つことが必要です。

古くて新しいオープンネス

「情けは人の為ならず、巡り巡って己が為」ということわざがあります。他人への思いやりは長い目で見れば相手だけでなく、社会のつながりを経て最終的には我が身のためにもなる、といった意味合いです。利己的な考え方というよりも、情けを受ける側の負担感を減らす思いやりのある言葉だと思います。「オープンネス」の考え方も全く同じです。公開することによる直接的な利益は短期的には必ずしも明らかではありませんが、長期的にはその波及効果は社会全体に利益をもたらすと考えられています。

直接民主主義に近づくツールとしてのIT

民主主義の理想は全員が直接的に政治に参加する直接民主主義ですが、これまで住民全員が社会の運営に参加することが不可能であったため世界の多くの国々で間接民主制あるいは議会民主制がとられています。しかしITやソーシャルメディアの発展はこの常識を変えようとしています。ソーシャルメディアを使う人は社会全体からみればまだ一部に過ぎません。しかし、投票にもあまり行かず、社会で声を上げる機会が少なかった人たちから幅広く、低コストで意見を吸い上げられる可能性があるのです。ガバメント2.0などの文脈でITが大きく取り上げられる理由はそこにあります。
(参考:ITを使った場合でもひとりひとりが全てバラバラな意見を言うだけではとりまとめが困難なので、意思決定をその分野に詳しい知り合いに委任することができるという、いわば餅は餅屋式の仕組みを持つ液体民主主義(*6)という考えもあります。)

一方でデジタルデバイドや声を上げにくい社会的弱者の存在には十分配慮する必要があります。こういった人たちも含めた多方面のステークホルダーが、オープンにされた情報やデータに基づいて多様な意見をぶつけ合う場を設け、みんなで街づくりを考えていくことが、様々な課題にとって解決の糸口となることでしょう。

むすび

ITのチカラを借りて新しい社会のあり方を目指すオープンガバメントやガバメント2.0は、なんだか遠い世界のことのようにも聞こえますが、そのアプローチは実は私たち日本の文化にはとてもなじみ深いものです。日本各地に残る共助の仕組みや地域再生の試みを再評価し、さらには市民自らが行政に積極的に参画する時が来ているのです。

参考資料:
(*1) 普請
(*2) ティム・オライリー特別寄稿:ガバメント2.0―政府はプラットフォームになるべきだ
(*3) 英国新政権の市民社会政策-「大きな社会の構築」について-
(*4) 道普請(みちぶしん)」って何???
(*5) 江戸時代のくらしとご隠居パワー
(*6) 液体民主主義 液体フィードバック入門

manabalss.lv、ラトビアの優れものオンライン請願システム

2013年4月12日 in Special

オンライン請願システムとしては、We the PeopleChange.orgなどが有名です。We the Peopleはアメリカ政府が運営し、Change.orgは民間企業であるChange.org, Inc.が運営しています。それぞれ素晴らしいシステムなのですが、残念ながら欠点もあります。

たとえばWe the Peopleでは、請願に対する署名が2万5千人を超えると政府は公式に回答をしなければならないとされています。請願の内容に厳しい制約はないため、2016年までにスターウォーズの「デス・スター」の建設開始を求める、というような実現性に疑問のある請願に対しても、署名が基準を超えればアメリカ政府は公式に対応をする必要があります

一方、Change.orgは民間企業が運営するサイトであるため、請願に100万人の署名が集まったとしても、その請願を検討するかどうかは政府が判断します。署名を多数集めることは政府に対する強力な圧力になりますが、その請願を政府が公式に扱うか否かはあくまで政府次第です。

ラトビアのオンライン請願システムmanabalss.lvは、偶然の幸運と独自のスクリーニングシステムによって、We the PeopleやChange.orgのこうした問題をうまく回避しています

ラトビアといえば、一部の有力者が権力を握る密室政治で有名な国であり、市民の政治参加や政府に対する信頼はEU内で最低クラスとも言われてきました。

こうした状態を変えるためラトビアの20代の若者2人がmanabalss.lvというオンライン請願システムを立ち上げました。manabalss.lv立ち上げから間もなく、引退間近の大統領がただちに支持を表明し広く使うよう働きかけを行ったことから、議会はmanabalss.lvに投稿された最初に請願について投票することを決め、その後の審議を経て、この最初の請願が成立しました。

その最初の請願とは

manabalss.lvで1万人以上の署名を集めた請願については、ラトビア議会は公式に審議しなければならない

というものです。

さらに、manabalss.lvは、議会が実現性の高くない請願について審議しなくても済むように、独自のスクリーニングシステムを構築しています。

  1. 請願が登録されると24時間以内に専門家グループから、請願には足りないものは何か、請願をもっと良くするにはどうすれば良いかなどのフィードバックを受ける
  2. 請願を修正後、請願にはURLが割り当てられ、請願者はそのリンクをTwitterやFacebookで共有して100人から署名を集める
  3. 100人の署名が集まった段階で、ボランティアの法律家が請願をチェックし、法的に適切かどうか、憲法に違反していないかどうか、問題に対する真の解決策になっているかどうかなどを確認する
  4. 法律家のチェックをパスした請願についてだけ、議会で審議するために必要な1万の署名集めを開始する

オープンガバメントやオープンデータに関しては、これまで遅れていると考えられてきた国が、1つの活動をきっかけに最先端に出てくるケースをしばしば目にします。そうした国は資金的にも豊かでない場合が多く、ボランティアの専門家やソーシャルメディアを上手く使いこなしています。“mana balss”とは”my voice”の意味で、市民の声が市民の後押しを受け、専門家の支援のもと議会に届き、法案へと繋がっていく素晴らしい仕組みがラトビアにはあります。

 

参考: 

International Open Data Day 2014、2月22日(土)開催か!?

2013年4月11日 in News

Open Data Dayのメーリングリストによると、2014年のInternational Open Data Day(IODD)は2月22日(土)開催が有力になっています。オランダだけでなんと38都市での開催に向けてすでに動き始めているとの事情もあり、日程の確定を早くして欲しいとの要望があがっていました。

一方で、中国の春節が(2014年は1月31日)にあることから、2月では世界中の中国系の人たちがOpen Data Dayに参加しにくくなるのではないかという懸念の声も上がっています。こうした声が上がるようになったのもOpen Data Dayが世界的に広がってきた証拠であるとも言えます。

日本では参加都市がどれくらいの数に増えるのか、IODD2013では時間切れであきらめたアジア圏でのネットワーキングを実現できるのかなど、IODD2014に向けてまた新しいチャレンジが始まります。

正式な日程は2013と同じく、Wikiにてアナウンスされる予定です。

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