市民参画に向けた試み

2013年6月1日 in News, Special


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 オープンガバメントの大きな目標のひとつである市民参画の実現に必要なものを考えてみます。

 市民が街の課題に関する議論に参加する場合に、そのベースのひとつはオープンデータであり、まずはその公開を進めることが重要ですが、公開された後、分析や議論はどうやって進めれば良いのでしょうか。町内会、商工会、政治団体、学校、NPOなど、既存のステークホルダーは、影響力の大小はさておき、それぞれ意見交換や集約した意見を自治体などに伝える手法やルートを持っている場合が多いでしょう。しかし地縁の薄い浮遊層が多い都市部ではそのような手法やルートを持たない人の方が多い場合があります。こういった人々にマッチする手法がITを使ったコミュニケーションです。

 こういったコミュニケーションはまだ試行錯誤の段階ですが、興味深い試みも出てきています。まず思いつくのがソーシャルメディアを使ったコミュニケーションでしょう。千葉市の熊谷市長は政策に関わる市民との意見交換をtwitterで日常的に行なっています。こういったコミュニケーションでは普通の講演会や対話集会では得られない幅広い層の意見をほぼリアルタイムで得ることができます。とはいえ、批判的な意見へも丁寧で真摯な対応が必要であり、ひとつ対応を間違えば容易に炎上するという危険なツールでもあります。使いこなすには高いリテラシーと明確なポリシーが必要でしょう。例えば印鑑証明の見直しに関するやり取りを見るとどうしても反対意見のやり取りの方が多くなる傾向はありますが、主張に合理性があれば一定の評価は得られているように見えます。

 次に政府の事例として、国土地理院は保有する地理データをできるだけ広く使ってもらうために「電子国土Web.NEXT」の試験公開を始め、様々な機能改良を行なっています。昨今の技術動向を取り入れ、かなり使いやすくなってきています。ここで注目すべきはその電子国土ポータルにある「お問い合わせ」フォーム下部の電子国土Web.NEXT技術掲示板です。リンクをクリックするとGithubのイシュートラッカーに飛ぶようになっています。イシュートラッカーはオープンソースソフトウェアなどで課題を管理するのによく用いられるツールですが、こういった問い合わせにも使うことができます。

 従来の問い合わせとの違いは、そのやりとりが広く一般公開されている点です。質問側は他のやりとりを参考にすることができ、どのようなやりとりが行われているか状況が把握しやすく、同じような問題にぶつかった人は質問をし直す必要がありません。回答側も改善要望という形で様々なアイディアをもらうことができます。ただし、注意点は上記のtwitterの例と同様で、真摯な対応が見られないと炎上したり、利用者が離れて行ったりします。しかし何でも対応するという訳には行かないということは他の投稿内容を見たり、少し考えたりすれば分かることであり、利用者側のマナーも試されます。
こういったやりとりはオープンソースのコミュニティや商用サービスではよく見られるものですが、政府・自治体が直接窓口になって広く公開の場での質問や要望にタイムリーに答える、という事例はこれまであまり多くはありませんでした。そういう意味では試験的な試みとはいえ画期的なものです。

 市民参画の推進にあたってはこのような直接対話をどのように進めるかがカギとなります。ITを活用した幅広い層への働きかけと、従来型の組織などを通じた意見集約を併用し、最終的には様々な立場のステークホルダー(利害関係者)が公開の場で直接対話に臨めるよう、オンラインとオフラインのコミュニケーションをうまく使い分けることが必要です。

 ポイントとなるのは「公開」の議論である点です。政府・自治体VS市民という対立構図だけでは解決できない課題が、市民同士でも立場により意見が異なることに気づき、お互い相手の言うことに耳を傾けることで視野が広がり、解決の糸口につながる可能性が広がるのです。

 今回取り上げたtwitterもGithubも長所があるとはいえ、情報の信頼性や使いやすさの面でまだ課題があります。こういった用途に、より適した制度やツールの登場が待ち望まれます。

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Shu Higashi (東 修作)

Written by

Georepublic Japan に勤務。OKFJ事務局長及びオープンストリートマップ・ファウンデーション・ジャパン 事務局を兼務。Code for Japan設立発起人。内閣府電子行政オープンデータ実務者会議利活用推進WG構成員。 OpenStreetMapという自由な世界地図を作る活動をきっかけにオープンデータの活動に関わりはじめました。主な関心領域はデータのライセンシング、コミュニティ活動、市民参画、国際連携など。 投稿記事の内容はあくまで個人としてのものであり、所属する組織を代表する見解ではありません。