リミックス・アートが彩るコペンハーゲン・メトロのフェンス

2013年7月9日 in Special


拡張を続けるコペンハーゲン・メトロは、新しく線路が通る地域の住民にとって不満の種でした。フラストレーションがたまる住民感情を少しでも和らげるために、コペンハーゲン・メトロは地域コミュニティと協力して、フェンスを綺麗に飾ることを思いつきました。

この活動に協力したのがコペンハーゲン国立美術館(Statens Museum for Kunst, SMK)です。SMKはフェンスを飾る材料として、所蔵美術品のデジタル化されたイメージデータを提供したのです。

SMKで毎週ボランティアとして創作プログラムに参加してきた若きアート・パイロットの集団、”Young People’s Laboratories for Art” (ULK)が中心となり、地下鉄沿線に住むさまざまな人々と協働でフェンスをアートで飾る活動が行われました。

デジタル・ネイティブのアート・パイロットたちは、ロウデータとして提供されたイメージをPhotoshopで編集したり、重ね合わせたりして、独自の作品に仕上げました。また、もっと若い子どもたちは、親の手助けを受けながら、さまざまな芸術作品を切り貼りし、独特なコラージュに仕上げました。

若者たちにとっては、たとえどんなに有名な芸術作品であっても、そのデジタルデータを自由に加工、編集し、自分のアイデアやイメージを表現するための材料として使うのはごく当たり前のことで、まったく抵抗はありませんでした。

しかしこうした若者たちの行為は、年齢の高い世代の住人にとってはオリジナルの芸術作品に対する暴力のようにも感じられたそうです。こうした芸術作品の再利用について、世代を超えて活発な議論が行われたことも、このプロジェクトの大きな成果の1つとなりました。

SMKはこれまで、芸術作品のデジタルデータをパブリック・ドメインで公開し、自由に再利用できるようにしてきましたが、そうした芸術作品の再利用を促す行為がある人々にとっては好ましくないことがわかった点も大きな収穫となったとSMKは述べています。

芸術作品に対する思い入れは人それぞれ違いがあり、その違いを無視した一方的な施策は地域社会にとって決して良いことではありません。一方、芸術作品の再利用は、特に教育分野で非常に期待が高まっています。芸術作品は人の感情が大きな部分を占めるという点で、気象や輸送などのデータとは異なります。芸術作品の公開、再利用については、統計などのデータとは異なるアプローチが必要になるのではないでしょうか。

出典: Case Study: Remixing Openly Licensed Content in the Public Space

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)