ウリヤノフスク州政府、世銀のオープンデータ準備度アセスメントを経てデータを公開、自治体の一つのモデルとなるか?

2013年7月11日 in Special


2013年7月8日、ロシア連邦のウリヤノフスク州政府はオープンデータポータルを立ち上げたと発表しました。公開されているデータセットは25種類と決して多くはありません。しかしその内容は、住宅、公共施設、ヘルス・ケア、社会福祉、ウリヤノフスク市当局に関するデータ、街路や道路のネットワークなどであり、非常に質の高いデータを厳選して公開しています。

ウリヤノフスク州政府がこれらのデータを優先的に公開したのには訳があります。州政府はオープンデータポータル開発前に、世銀からオープンデータ準備度に関するアセスメントを受けており、その結果に基づいてオープンデータポータルを構築しました

2012年10月、ウリヤノフスク州政府は世銀とオープンデータ推進に関する覚書を交わしました。この覚書にもとづき2013年2月、アンドリュー・ストットに率いられた専門家チームは、世銀が開発したOpen Data Readiness Assessment Toolを用いて、ウリヤノフスク州のオープンデータ準備度の評価を行いました世銀がOpen Data Readiness Assessment Toolのドラフトを公開したのは2013年1月です。これを考えれば、ウリヤノフスク州政府のオープンデータに関する意思決定や行動がいかに素早いものであるのかがわかります。

アンドリュー・ストットはイギリス政府のデータポータルdata.gov.ukの開発に多大な貢献をした人物で、イギリス政府だけでなく世界的にオープンデータをリードしてきた超一流のコンサルタントです。Open Knowledge Foundation(UK)のアドバイザリー・ボードにも加わっています。

世銀が実施したウリヤノフスク州政府に対するアセスメントのサマリーは以下の通りです。

Ratingの意味は次の通り

  • G(緑):準備が整っていることを示す明らかな証拠がある
  • Y(黄):準備が整っていることを示す証拠はあるが、やや不明確
  • R(赤):準備が整っていることを示す証拠が存在しない
  • O(灰):準備度を評価するための情報が十分でなく評価できない

ウリヤノフスク州政府は資金調達を除いたすべての項目で、GまたはYと評価されています。州政府はオープンデータを進める上でのリーダーシップや政治的/法的な枠組み、組織構造と責任ある体制、技術やスキルなどのインフラはほぼ整っており、企業や市民からのデータに対するニーズも高く、データを中心としたコミュニティについても形成されつつあると評価されています。さらに評価項目の中には、市民参画を促すために重要なデータセットが明記されており、こうしたデータを政府が公開できる準備がほぼ整っていることも確認されました。

Open Data Readiness Assessment Toolはあくまで「証拠」に基づいて評価している点にも注意が必要です。政府関係者や首長の意気込みやアイデアなどではなく、実際に起きていることや実際に存在していることを第三者が観察できるかどうかによって準備度を評価します。

特にデータセットに関しては詳細なアセスメントが行われます。10数種類のデータカテゴリそれぞれについて、データセット公開が政策面、技術面、制度面から実現可能性があるかどうかがチェックされ、公開した際の便益とリスクを明らかにし、さらに即効性のある対策と重要で中期的な対策とがアドバイスされます。

以下は世銀のウリヤノフスク州政府に関するアセスメントレポートにおけるKEY DATASET FINDINGS AND RECOMMENDATIONSにおいて、”School profiles and ratings”というカテゴリーのデータセットに関するアセスメント結果をまとめたものです。

ODRA-School-Ratings

ODRA Ulyanovsk Final eng 2013-04-15 clean.doc
“School profiles and ratings”を翻訳

今回、ウリヤノフスク州政府はこうした世銀による徹底的なアセスメントの結果をもとにして、25のデータセットを選び、オープンデータポータルを通じて公開しました。

オープンデータ政策の進め方には様々な方法があります。市民の関心を高めるためのイベントを開催したり、まずできるところからデータを公開していくという方法もあります。それぞれの方法にはメリット、デメリットがあり、どの方法が一番良いのかを判断することはできません。

もし、データをせっかく公開したのに市民に使ってもらえない、あるいは、データポータルを準備したのに政府内の各部門がデータを提供してくれないなどの問題をできるだけ避けたいのであれば、ウリヤノフスク州政府のようにアセスメントを基礎にしたデータ公開を検討してみるのも良いのではないでしょうか

参考

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)