アルツハイマー病克服に向けて、患者800人以上の全ゲノム解読データ公開へ

2013年7月17日 in News


アルツハイマー病は米国で85歳以上の約半数が罹り、死亡原因の6番目となっています。米政府は2013年、アルツハイマー病治療のために2030億ドルの費用を負担しており、2050年にはアルツハイマー病対策費用が1兆2000億ドルに達すると予想されています。国民の健康を守るためにも、政府の費用負担をできるだけ軽減するためにも、アルツハイマー病対策は一刻も早く始めなければならない大きな課題となっています。

こうした中、2013年7月13日から18日にかけてボストンで開催されたアルツハイマー病に関する国際会議Alzheimer’s Association International Conference 2013において、アルツハイマー病克服に向けた動きを大きく加速する発表がありました。Alzheimer’s AssociationBrin Wojcicki Foundationが協働で、Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative(ADNI)に登録している800人以上のアルツハイマー病患者に関する全ゲノム解読データを公開すると発表しました。

ADNIはアメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)や製薬企業、財団などからの資金を得て設立された官民共同のプロジェクトで、アルツハイマー病に関する研究を行ってきました。ADNIはこれまでもデータ公開や共有には積極的で、臨床データや画像データ、バイオマーカーなどのデータを世界中の4000名以上の科学者に提供してきた実績があります

今回、ADNIが提供する全ゲノム解読データはGlobal Alzheimer’s Association Interactive Network (GAAIN)を通じて公開される予定であり、そのデータ量は200テラバイトにも上ります。世界中の科学者がクラウドで提供されるGAAINを通じて全ゲノム解読データを無料で検索したり、ダウンロードすることができるようになります。

 

 

Alzheimer’s Associationはアルツハイマー病の治療や支援、研究に取り組んでいる世界的な非営利団体で、アルツハイマー病に関する研究成果を共有するネットワークGAAINの設立に500万ドルの資金を提供しました。一方、Brin Wojcicki FoundationはGoogleの共同創立者であるセルゲイ・ブリンとその妻アン・ウォジツキが設立した財団で、医療分野だけでなくさまざまな活動に資金援助しています。例えば、2013年3月にBrin Wojcicki FoundationはWikimedia Foundationに50万ドルの助成をしました。アン・ウォジツキは、99ドルで遺伝子検査ができる23andMeの共同創立者でもあります。

米国では深刻化するアルツハイマー病克服に向けて、官民が資金や知識を出し合い、共同で取り組んでいます。その中心となっているのは研究に欠かせない膨大な量の個人データです。全ゲノム解読データの公開にはついては個人が特定される可能性などのリスクがあり、慎重な対応が必要です。研究者の資格審査を行うなど、データへのアクセスを制限せざるを得ない部分もあります。しかし、今できる範囲で一歩踏み出すことで、リスクとメリットとのバランスについて新しい知見が得られたり、社会的な合意形成が可能になるのではないでしょうか。

 

出典

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)