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イズリントン議会に7万ボンドの罰金、誤って精神疾患や家庭内暴力被害者のデータを公開

2013年8月29日 in News

イギリスの情報コミッショナー事務局(Information Commissioner’s Office, ICO)は、イズリントン・ロンドン特別区を管轄とするイズリントン議会に対して、個人情報を不適切に公開したとして7万ポンド(約1千万円)の罰金を命じました。イズリントン議会が情報公開請求に応えて公開したデータの中に、2千人を超えるイズリントンの住人に関する個人情報が含まれていたためです。

イズリントン議会が誤って公開したデータの中には、住人の精神疾患に関する情報や、家庭内暴力の被害者であるかどうかといった、極めて影響の大きい個人データも含まれていました。しかもオンラインで公開されたことによって、多くの住人が被害を受けました。

イズリントン議会によれば、「今回、不適切な個人情報を公開した担当者は、スプレッドシートから誤りを見つけて修正できる十分な能力を有していなかった。今は、情報公開に対応する業務に携わる全職員に対して追加のトレーニングを実施し、公開情報をどうやって準備したら良いのかを習得させている」とのことです。

情報公開請求が増え、対応業務の負荷が増す中、対応する自治体職員のミスはなかなか防げるものではありません。情報公開請求業務の負荷を下げるためには、カリフォルニア州の例にもあるように公開して差支えないデータは基本的に住民に公開し、住民の情報ニーズを満たすとともに情報公開請求件数を削減するという施策が有効です。公的機関が公開するデータに関して、不適切なデータが含まれていないかどうかチェックする方法についても、職員の目視チェックだけではバラつきが大きくなります。不適切ワードや過去の失敗例などのデータを利用したフィルタリング・システムも整備する必要があります。

 

参考: Islington fined £70,000 for publishing personal data on residents

 

情報公開請求の負担増に対して、「手数料を上げる渋谷区」と「データ公開に踏み切ったカリフォルニア州」

2013年8月28日 in Special

2013年8月27日の毎日新聞の報道によると、渋谷区が区情報公開条例の改正案を来月の定例議会に提出し、情報公開請求制度に基づいて開示する文書のコピー代金を1枚10円から20円に値上げするとのことです。改正案ではさらに、情報公開請求制度における権利の乱用と認められるような大量の情報公開請求については却下できるとする事項も盛り込まれます。

情報公開請求が地方自治体の業務において大変な重荷となっているという現状は理解できます。一度の請求に対して数千枚もコピーをしなければならないとすれば、大量のコピーを断りたくなる気持ちもわかります。市民の「知る権利」に対する認識が高まり、情報公開請求という手段があることが浸透すれば、情報公開請求は増え、コピーをはじめとする情報開示業務の重荷が地方自治体職員の肩にさらに重くのしかかることになるのは明らかです。

この問題は渋谷区に限ったことではありませんし、日本に限ったことでもありません。例えば、米カリフォルニア州も、渋谷区と同じか、あるいはさらに困難な状況に追い込まれていました。しかし、カリフォルニア州のとった対応は渋谷区とは全く逆の方向だったのです。

カリフォルニア州の情報公開制度は、連邦政府の情報自由法(FOIA)よりもさらに厳しく、公文書の開示請求があった場合には、10日以内にコピーを提供しなければならないとされています(州法政府規則第6253項)。もちろん、誰が要求したのかとか、その枚数が何枚であるとかによって、市民からの開示請求を断ることは一切できません。日本の情報公開制度では、公開の可否の通知を30日以内に行い、さらに30日以内に受け取り方法を指定するという規則ですので、カリフォルニア州の情報公開制度が自治体にとっていかに過酷なものであるかわかると思います。

カリフォルニア州政府は、増え続ける公文書の開示請求に対して、何をするにも手間と時間がかかる官僚的で非効率な組織で対応することは不可能と判断しました。そこでカリフォルニア州がとった決断は、データを公開することで開示請求自体を減らそうというものでした。

カリフォルニア州政府がロウデータの公開を始めると、さまざまな組織がそのデータを利用し始めました。例えば非営利団体のCalifornia Common Senseは、医療、学校、支出など市民が特に高い関心を持つデータを中心に、Socrataのプラットフォームを利用してデータを公開しています。Socrataを利用することで、市民は検索やビジュアル化を自由に、柔軟に行うことができるようになりました。

 

また、予算に関する情報開示請求は自治体にとって最大の悩みの種の1つです。毎日新聞によれば、渋谷区のある区議も「区の予算が適正に使われているかどうかを調査しようと思ったら何千枚になることもある」と指摘しているとのことです。これに対してCalifornia Common Senseのメンバーの1人は、カリフォルニア州のパロアルト市と協働で、パロアルト市の支出に関するデータをグラフなどでビジュアライズするクラウドサービスOpenGovを開発しました。

 

このOpenGovは、年間1,100ドルから4,500ドルで利用することができます。渋谷区の試算では、コピーにかかる人件費とコピー機器代が27円/枚であったとのことですから、コピー枚数に換算すると年間約4000枚~17,000枚のコピー代金でOpenGovのサービスを利用することができます。つまり、予算に関する情報公開請求が年間3人あれば十分にペイするサービスと言えます。パロアルトから始まったOpenGovのサービスは、マウンテンビュー、サウスオレンジなどにも広がり、カリフォルニア州を中心に採用する自治体を確実に増やしています。

カリフォルニア州やパロアルト市の例は、自治体がロウデータを公開することによって、さまざまな組織がそのデータを使ったサービスやビジネスを作り上げた好例です。忘れてはならないのは、ロウデータを公開することによって、地方自治体も情報公開請求にかかわるコストを大幅に削減できたことです。California Common SenseやOpenGovがはるかにわかりやすい形で市民にデータを提供しているため、地方自治体に対する情報開示請求は確実に減少します。

自治体は次第に重荷となる情報公開請求に対して、できるだけ開示しない方向に舵を切るのか、それとも、すべてを開示する方向に進むのか、重要な決断を迫られています。カリフォルニア州やパロアルト市の例は進むべき方向がどちらであるのかを示しているのではないでしょうか。日本において、データ公開に進む自治体がひとつでも増えるようにすることがOKFJの重要な使命であることは言うまでもありません。

 

参考:

 

BioMed Central、論文中のデータをCC0で利用可能に

2013年8月26日 in News

Open Access出版のBioMed Centralは、2013年9月3日から論文中のデータに対してCreative Commons CC0を採用すると発表しました。CC0とは、いかなる権利も保有しないことを宣言するものです。9月3日からBioMed Centralが発行する論文中のデータはパブリックドメインとなり、誰でも自由に利用することができるようになります。

 

BioMed Centralによると、対象となるのはBioMed CentralおよびChemistry Centralで発行される論文中のデータであり、表のデータ、グラフのデータポイント、文献データなどを自由に再利用することができるようになります。論文に添付されているファイルも対象になります。ただし論文自体に対しては従来通り、原著作者のクレジット表示を義務付けるCC BYが適用されますので注意してください。

BioMed Centralが他社に先駆けてデータに対するCC0適用に踏み切ったのは、ECの施策によってOpen Accessが世界中に広まり、今後採用する国が急速に増えることが予想される中、データに対するOpen Access分野でリーダーシップを取る狙いがあります。

 

出典: Opening up the data – an update to BioMed Central’s Copyright and License Agreement

Open Accessは間もなくティッピング・ポイント越え、ECが調査結果を発表

2013年8月26日 in News

欧州委員会(European Commission, EC)は2013年8月21日、公的機関から資金を得て実施した研究成果を誰でも自由の無料で利用できるようにする取り組みOpen Accessが間もなくティッピング・ポイントを超えると発表しました。ECはOpen AccessがEUのイノベーション推進の原動力になると考え、2012年7月17日に研究成果のオープン化に大きな一歩を踏み出しましたが、いよいよその努力が実を結びつつあります。

今回のECの発表は、EUおよびその近隣国に加え、ブラジル、カナダ、日本、アメリカにおいて、このOpen Accessが各国でどの程度実施されているのかを調査した結果に基づいています。ECの調査によれば、2011年に出版された科学論文誌の約50%が無料で利用可能になっており、これは前回行った調査の約2倍の割合に相当します。2004年から2011年の間に世界で出版されたピアレビュー済み科学論文の40%以上がOpen Accessの要件を満たすフォーマットでオンラインで利用可能になっています。

ECの調査によれば、一般科学技術、生物医学研究、生物学、数学、統計などの分野では大部分の論文が自由に利用可能となっている一方で、社会学、人文科学、応用科学、工学、技術などの分野はOpen Accessが一番遅れているとも指摘しています。また現在、出版物に対するOpen Accessポリシーは整備されつつあるものの、その基礎となった科学的データに関するポリシーはまだまだ整備されていません

ECは、研究やイノベーションを促進するフレームワークであるHorizon2020から資金提供を受けた2014年から2020年までのプログラムにおいて、データに対するOpen Accessを検証するパイロットプログラムを実施するとしており、被譲与者の商業利益やプライバシー、セキュリティなども考慮しながらデータのOpen Accessを進めていく計画です。

 

出典: Open access to research publications reaching ‘tipping point’

 

新しい時代のメディアを創造するイベント「メディアソン」(日経オープンデータ情報ポータル主催)

2013年8月23日 in Events, News

日経新聞のオープンデータ情報ポータル( http://opendata.nikkei.co.jp/ )は、8月31日(土)に、新しい時代のメディアを創造するイベント「メディアソン」を開催します。このイベントの開催にオープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン(OKFJ)は協力します。

これは「新しいメディア」をテーマに、オープンデータや新聞記事などのコンテンツを使い、ハッカソン的な手法でアプリやサービスの開発に取り組むものです。エンジニアの方はもちろん、情報の「伝え方」「表現」にご興味のある方は、ぜひご参加ください。

この映像は主催者が最近試作した「フリーハンドで読む電子版」です。「こんなものに興味がある方も大歓迎」だそうです。

【期日】8月31日(土)9時~19時(前日の19時より、オリエンテーションを行います。ネット視聴可)
【会場】日本経済新聞社 東京本社ビル(千代田区大手町1-3-7)
【参加費】無料

ご興味のある方は、詳細をメールでお送りしますので、 dg_lab[ at mark] nex.nikkei.co.jp へご連絡ください。(担当 市毛)

台湾、Open Data Alliance結成、150の企業・機関が参加

2013年8月22日 in News

2013年8月21日、Open Data Alliance(Open Data聯盟)という組織が台湾で立ち上がりました。情報サービス提供業者、ソフトウェア企業、研究機関など、これまでに150の企業や機関が参加しています。IBM、Microsoft、SYSTEXなどの著名な企業もメンバーになっています。

Open Data Allianceは、主に産業界のために、食料、衣料、住宅、交通、教育、娯楽の分野でオープンデータの活用を促進することを目的として設立されました。これからは、さまざまなレベルの討論会を開催し、政府関係者をその場に招く予定とのことです。

代表の 彭啟明(Peng Qiming)によると、Open Data Allianceは「オープンデータ・アプリケーション白書」を作成し、政府機関だけでなく市民の関心を高め、台湾産業界をさらに一段階上にグレードアップさせる計画です。

 

参考

  • OPEN DATA聯盟21日成立(工商時報)
  • 尋找Open Data的台灣優勢(聯合晚報)

 

千葉市のオープンガバメント、その本気度をチェック!

2013年8月22日 in Events, News

まち歩き後に市民からの質問に答える熊谷市長

まち歩き後に市民からの質問に答える熊谷市長

 8/17(土)に市長と一緒に”ちばレポ“を使ったまち歩き体験会を開催した千葉市ですが、そのオープンガバメント/ガバメント2.0に向けた本気度はどの程度でしょうか?

 国連経済社会局行政開発管理課による市民参画のためのオープンガバメント・データに関するガイドラインにある「オープンガバメントデータ・レディネス評価用チェックリスト」を使って評価してみました。これはオープンガバメント/オープンデータを推進するための準備がどの程度整っているのか、政府・自治体が自己診断する為のチェックシートです。カテゴリごとに全部で40件のチェック項目があります。今回、このチェックシートに基づき、試験的に評価してみました。なお、これは僭越ながら筆者が外から見た、主観による評価なのであくまで参考程度に見てください。■は準備OK、□は準備NGもしくは不明を表します。『』内は筆者のコメントです。

  • A.政治的コミットメントおよび適切な政策
  • ■1.ガバメント・データをオープンにするためのトップレベルの意思決定者からの政治的コミットメントがありますか?『市長の強いコミットメントあり』
    ■2.透明性、説明責任および参加のためのトップレベルの意思決定者からの政治的コミットメントがありますか?『市長の強いコミットメントあり』
    ■3.腐敗と戦うトップレベルの意思決定者からの政治的コミットメントがありますか?『市長の強いコミットメントあり』

  • B.市民社会、メディアおよび他の再利用者の能力
  • ■4.透明性、説明責任および参加の概念を促進する増幅者として動機づけられた変革推進者がいますか?『業務改革推進課。OKFJもその支援団体のひとつ。』
    □5.これらの変革推進者は、独力で処置を取り講ずる権限を与えられますか?『不明』
    □6.これらの変革推進者は、OGD創設に従事するために必要な能力(知識、技術)リソース(人的、財政的)を持っていますか?『財政的リソースが不明。他はOK』
    □7.市民社会とメディアに透明性、説明責任および参加に対する需要がありますか?『メディアの関心は強い。市民の方はまだこれから(現時点でも一部に活発な市民はいる)』
    □8.市民社会とメディアに情報の自由とガバメントデータをオープンすることに対する需要がありますか?『メディアの関心は強い。市民の方はまだこれから(現時点でも一部に活発な市民はいる)』
    □9.技術的なリテラシーを持つ市民社会がありますか?CSO(市民社会組織)あるいは「市民ハッカー」がいますか?『一部にいるが連携、組織化はこれから』
    □10.自分たちのアドボカシーまたは市民サービスプロジェクト用に実際にOGDを再利用しているCSOはありますか?『これから』

  • C.法制度と規制の枠組み
  • □11.情報へのアクセスに関して組織内の規定がありますか?『不明』
    ■12.情報へのアクセスに関する法制度がありますか?『情報公開法』
    □13.情報制度へのアクセスは、受け身的な開示と同様に率先した開示に対する規定を含んでいますか?『不明』
    ■14.データ・プライバシーに関する組織内の規定がありますか?『通常あるはず』
    ■15.データ・プライバシーに関する法制度がありますか?『個人情報保護法』
    □16.オープンデータに関する法制度がありますか?『これから』
    □17.データ・プライバシーに関する国際協定の批准がありますか?『不明』
    □18.PSIの中に知的財産権を規制する法制度がありますか?また、それは、PSIの再利用を支援しますか?『不明』

  • D.制度的枠組と組織的な条件
  • ■19.情報(あるいはプライバシー)コミッショナーがいますか?『CIO補佐監』
    □20.情報コミッショナーかそれに準ずる人は幹部から独立していますか?『不明』
    □21.全国レベル、あるいは準国家レベルにオープンガバメント・データに責任を持つ単独の政府機関がありますか?『なし』

  • E.文化的、人的リソースの状況
  • ■22.人間の価値と市民の権利は、社会の中で広く認められていますか?『はい』
    □23.市民とコミュニティーのエンパワーメントおよび自決を支援する環境がありますか?『一部あり』
    □24.市民の教育と知識の共有を支援する環境がありますか?『一部あり』

  • F.財政的な状況
  • □25.オープンガバメント・データの費用は問題となりそうでしょうか?『不明』
    ■26.OGDイニシアチブを実施する利点はコストより大きくなり得ますか?『大きくなることが見込まれる』

  • G.技術的インフラ
  • ■27.国全体でインターネットは充分に浸透していますか?都市/地方で『はい』
    ■28.モバイルは充分に浸透していますか?また、人々はどのようにモバイルのデータサービス(SMS、3Gなど)にアクセスしていますか?都市/地方で『はい』

  • H.データと情報システム
  • □29.OGDとしてのPSIの作成と公表を支援するデータ管理および情報システムが適所にありますか?『これから。CKANは設置済み』
    □30.適所のデータ管理と情報システムは、PSB(公共機関)の間のデータの有効な交換を可能にしますか?『不明』
    □31.データはウェブ(形式を問わず)上で、オープンなライセンスで利用できますか?『これから』
    □32.データは構造化された機械可読なデータとして利用できますか?『これから』
    □33.上記全てに加えて非プロプライエタリな形式ですか?『これから』
    □34.上記全てに加えてW3Cのオープン・スタンダードを使っていますか?『これから』
    □35.上記全てに加えてLinked Data ですか?『これから』
    ■36.ガバメント・データあるいはガバメント・データの編纂は、現在著作権あるいは他の知的財産のような体制によって保護されていますか?『はい』
    □37.データは、再利用を制限するなんらかのライセンスを前提としていますか?『これから』
    □38.料金はアクセスおよび再利用に対して、限界費用(例えば原価の回収を支援するため)を超えて請求されますか?『これから』
    □39.データは商用再利用を含め、目的を問わず自由に再利用できますか?『これから』
    □40.「表示」や「継承」以外の制限は何かありますか?『これから』

 今回は全40項目中、13項目が準備OKという結果となりました。一見残念な結果に見えますが、やや厳し目に評価した点、外部からは分からない部分がある点、市民や中央政府の果たすべき役割部分もある点などから、取り組みを始めてまだ日が浅い現時点としては実際のところこれはかなり良い数字だと言えます。

 筆者も市長とのまち歩きに参加しましたが、市民側の反応はほとんど好意的なものでした。今回の試みは実験段階であり参加者数は30名と限定的なものでしたが、従来から公園の清掃などのボランティア活動をやられている方々や、これまであまりそういった活動の経験が無い方々など多様なバックグラウンドの方々が参加していました。リタイア世代の方々が7割ほどの印象でしたが、現役世代の方々も見受けられ、中には高校生も参加していたようです。従来型の市民活動も尊重しつつ、新しい枠組みでの市民協働の可能性が見えてきた印象があります。また、運営側もひとつの部局ではなく、市民局、総務局、都市局、建設局など幅広い組織が関与し、うまく横連携されている様子が窺えました。

 自治体だけが頑張っても「まち」は変わりません。県・中央政府の後押しや市民との連携が今後のカギになりそうです。千葉市の次の一手が楽しみです。

(参考:熊谷市長とのまち歩きイベントの様子は下記記事にまとまられています。)
街の問題 スマホ活用して改善(NHK NEWSWEB)
ちばレポ実証実験 市長とまち歩き(千葉市長・熊谷俊人Blog)
ちばレポ実証実験 ~市長とまち歩き~(千葉市議会議員 福谷章子のまちづくり)
ちばレポ実証実験、市長とまち歩きに参加してきました。(千葉市議会議員(美浜区選出)たばた直子「真っ直ぐな視点を千葉市に!」)

米連邦政府職員の給与を名前付きで全部公開、当然とみなすか、身も蓋もないと考えるか

2013年8月20日 in News

先日、米連邦政府職員の給与データを公開するサイト、GovernmentSalaryData.comがオープンしました。GovernmentSalaryData.comでは連邦政府職員の給与を、所属と肩書き、名前、場所によって検索することができます。さらに全米地図の上に連邦職員をマークしたインタラクティブマップもあります。さすがに全員をマッピングすることはできませんので、インタラクティブマップでマークされているのは全体の1%ほどです。

 

ある職員の給与を検索した後、その人の同僚がいくらもらっているのかも簡単に調べることができます。以下の例ではStacy Plebanski Swentkoさんの同僚がWork Colleagues of Stacyとして左側に一覧で表示されています。それぞれのリンクをクリックすると、各同僚の給与も調べることができます。この同僚リンクは、該当する同僚が一人もいなくなるまでたどることができます。

 

このWebサイトはGovernmentSalaryData.comという名前の営利企業が立ち上げたもので、同企業によると、このサイトの目的は「連邦政府機関に透明性をもたらし、さまざまな連邦政府機関に関する洞察を深める」ことにあります。さらに同企業は、「連邦政府職員のプライバシーは尊重するが、こうした公共サービスに従事する人は、給与などの情報はパブリックドメインであると認識していると思う」とも述べています。

職場において誰がいくらもらっているのか、あまりに簡単にわかってしまうと職場の雰囲気が壊れると心配する方もいます。一方で、連邦政府などの公的機関で働く人がいくらもらっているのかは公開した方が良いと考える人もいるでしょう。実際に今回のデータ公開は法に基づくものです。しかし、データ公開とプライバシー保護の境目をどこに設定するのかは法律だけで決められない部分もあり、今回のデータ公開がこうした微妙な問題に関する議論を市民の間に巻き起こし、さらに深めていく効果だけは間違いなくあると思います。

 

参考: New Web site allows easy salary spying on federal workers(Washington Post)

G8再考(3)先進国に追いつくか、途上国にとどまるか、決断を迫られる日本

2013年8月19日 in Special

世界的な非営利団体であるWorld Wide Web Foundation(WWWF)は、2012年9月18日に世界各国のオープンデータ進捗度Open Data Indexを発表しました。WWWFは以前から、インターネットの接続状況、インフラの整備具合などを評価し指標化したWeb Indexを発表しており、Web Indexの評価項目の中からオープンデータに関する14の評価指標だけを抜き出しOpen Data Indexとして公開しました。G8各国のOpen Data Indexは、米1位、英4位、加8位、伊13位、日本19位、仏23位、露25位、独36位となっています。

またOpen Knowledge Foundationは、オープンデータ度を評価する別の指標としてOpen Data Censusを発表しています。Open Data Censusは、政府の透明性向上や市民サービス向上のために必要な10分野のデータ公開がどの程度進んでいるかを測定したものです。Open Data Census は現在評価中で全体ランキングは未発表であるが、G8に限定した順位だけを見ると、米、英、仏、日本、加、独、伊、露の順となっています。

Open Data IndexおよびOpen Data Censusの両評価結果から、英米がオープンデータを世界的にリードしていることは明らかです。一方、日本はいずれの指標においてもG8においては中位にとどっており、オープンデータの世界標準に照らし合わせると、日本はオープンデータ途上国とも言える状態です。

日本政府はG8直前の2013年5月24日、「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ(案)」及び「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)(案)」を公開し、パブリックコメントの募集を始めました

日本政府が「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ(案)」において、公開を優先するとした重点分野は「白書、防災・減災情報、地理空間情報、人の移動に関する情報、予算・決算・調達情報」となっています。G8で合意したデータカテゴリと比べると、「法人、犯罪と司法、地球観測、教育、エネルギーと環境、世界的な開発、健康、科学と研究、社会的流動性と福祉、輸送と社会基盤」など、多くのデータカテゴリが含まれていません。現状はまだ案レベルでこれから改善の可能性は残されていますが、日本政府のオープンデータ政策はデータ公開のカテゴリだけを見ても、世界標準から大きくかけ離れています。

日本政府はG8での合意に従ってデータ公開や人材の育成やビジネス創出を積極的に進め、先行する英米を追いかける積極的な政策に転換するのか、それとも現状のガイドラインで示すように、できるところからデータを順次公開していくというこれまで通りの消極的な政策を続けるのか、大きな決断を迫られています。

オープンデータ政策の遅れは、オープンデータビジネスの遅れに直結します。それは国内だけの問題ではありません。もし日本政府が早期にオープンデータ政策をG8で合意したような世界標準に合わせられなければ、オープンデータビジネスを担う人材の育成が遅れ、日本におけるオープンデータビジネス市場は育たず、世界のオープンデータビジネス市場に参入するチャンスも失います。日本の国際的な競争力は間違いなく低下するでしょう。豊富な天然資源に恵まれながら極度な貧困から脱することのできない途上国と同様の運命をたどりかねません。

2011年時点の英米の状況と2013年の英米の状況を比べてみればわかり通り、2年間で両国はオープンデータに関して政策的にもビジネス的にも著しく進展しました。これからの2年間、英米はさらにスピードアップすることは間違いありません。2013年時点の英米のレベルに日本が2015年に追い付くようなロードマップでは、いつまでたっても追いつけません。それどころか、さらに遅れてしまいます。難しいことではありますが、官民一体となって2015年末の世界最先端を予測し、あるいは自ら描き、英米にどうやってキャッチアップし、追い抜くのか、具体的な政策立案と迅速な実行が今こそ必要です。

G8再考(2)オープンデータ先進国、英米の思惑

2013年8月16日 in Special

G8首脳コミュニケに別添された技術的文書Technical Annexには、G8各国が公開すべき「価値の高いデータ」が具体的に指定されており、G8各国は以下のデータを優先して開示しなければならないとされています。

データカテゴリやデータセットの例を見ると、なるほどと納得できる点も多々あります。しかしどんなデータを公開するのかは、基本的に各国政府の自由裁量に委ねるという選択肢もあったはずです。

もし、仮にTechnical Annexにおいてデータセットを明記するにしても、今回のG8ではオープンデータはトップアジェンダではなく、透明性の中の3つのサブテーマの1つにすぎないのですから、国際関係の透明性に関わるデータを優先して公開するということであれば納得がいきます。しかし、Technical Annexで指定されているのは透明性の範囲をはるかに越えた多様なデータセットです。なぜわざわざG8でこのような具体的なレベルまで踏み込んだのか、ここで少し考えてみたいと思います。

G8で合意された公開すべき「価値の高いデータ」には、オープンデータ先進国である英国の思惑が色濃く反映されています。例えば上記のデータと、英キャメロン首相が2010年から2011年にかけて書簡で政府機関に公開を指示したデータ とを比べてみると、多くの項目に重なりがあることは前にも指摘した通りです。G8ホスト国のトップでオープンデータ推進に極めて積極的なキャメロン首相が、オープンデータを推進するOpen Data InstituteOpen Knowledge Foundation などの協力を得て、オープンデータ憲章の策定にリーダーシップを発揮した結果だと思われます。

一方、米国はオバマ大統領が2009年にOpen Government Directive を発行したのを皮切りに、これまで政府機関に対してさまざまな種類のデータ公開を求めてきました。やはりその大部分もG8のオープンデータ憲章に反映されています。つまり、オープンデータ先進国の英米はすでに実施済み、あるいは自国にて実施中のオープンデータ政策を改めてオープンデータ憲章として今回のG8に提案し、他国から国際合意を取り付けたとも考えられます。

G8首脳コミュニケにわざわざ技術的文書Technical Annexを添付して公開すべきデータを明記したのは、英米がこれらのデータを自国にとって経済的価値が高いデータであるとみなしているからです。オープンデータ先進国である英米は、ビジネス化する上で重要な経済的価値の高いデータを世界標準として定めることで、国内のオープンデータビジネス市場のみならず、G8をはじめとする海外のオープンデータビジネス市場への参入をも視野に入れています

例えば2013年6月13日、台湾のQuanta Computer(広達電脳)は英国のOpen Data Institute(ODI)と業務提携を結び、ODIのメンバーとなりました。Quanta ComputerはノートPCの受託生産大手企業で、今後はODIとクラウドコンピューティング分野やオープンデータの推進に協力していきます。ODIは公設民営のような組織で、運営については一般の営利企業とほとんど変わりません。ODIのCEOガービン・スタークスはスタートアップ育成のプロ中のプロで、実績も豊富です。

この提携に関して、British Trade and Cultural Office (英国貿易文化弁事処)のクリス・ウッド所長は2013年6月19日の記者会見において、「今回の提携を通じてオープンデータの最新動向が台湾に伝わり、産業のイノベーションにつながるだろう」と指摘し(NAA)、「インフラ構築、鉄道と地下鉄、サービス産業、情報と通信技術、クリエイティブ産業において、英国と台湾はさらなる協働を推進する」と共に、英企業の台湾投資を積極的に支援していく意向を表明しました(BBC)。

英国がオープンデータを英企業の海外進出にとって非常に重要な要素と位置付け、国家戦略として推進していることは明らかです。今回のG8におけるオープンンデータ憲章の合意は、そのための周到な地ならしと見ることもできます。世界でオープンデータ運動が高まり、公的機関をはじめとするさまざまな機関が経済的な価値の高いデータを公開しはじめたときに、どうしたら世界のビジネスにおいて主導権を握ることができるのか、オープンデータ先進国の英米はそこまで視野に入れて行動しています。

 

参考:

  • UK wants more trade, energy, infrastructure ties with Taiwan – diplomat(BBC)
  • 広達電脳、英ODIとオープンデータで提携(NAA)