アジアで電気代が一番高いフィリピン(1)、その理由がわかるアプリとビデオ

2013年8月12日 in Special


アジアで一番電気代が高い国、フィリピン。意外と知られていませんが、日本やシンガポールよりもフィリピンの電気代は高い言われています。なぜフィリピンの電気代が高いのか、その理由がよくわかるアプリとビデオをご紹介します。

フィリピンの電力代が非常に高いことについては、日本からフィリピンに長期滞在した方や、移住した方のブログなどでときどき報告されています。その中でよく指摘される原因の1つが盗電です。盗電とはその名の通り、配電事業者と契約をしていない人が電線から勝手に電気を引き込んで使ってしまうことです。盗電による損失は配電事業者が負担するのではなく、Systems Lossの一部として電気代に加算され、電気代を支払っている人が負担しています。そのため、高い電気料金に苦しんでいる人から見れば、盗電は憎むべき犯罪とみなされています。

それでは実際に盗電がどれくらい電気代に影響しているのか見てみましょう。フィリピンの電力事業を取り仕切るエネルギー省は、フィリピン国内の電力事業者に関する情報を公開するサイトkuryenteを立ち上げました。kuryenteはタガログ語で電力の意味です。kuryenteではフィリピンの街の名前を指定したり、電力事業者名を指定することで、電気代について詳しく調べることができます。

例えば、マニラ近郊を事業地域とするフィリピン最大の配電会社Manila Electric Corporation、通称MERALCOについて調べてみます。kuryenteでテキストボックスにManilaとタイプしていくと、候補がドロップダウンリストに表示されます。Manila, NCR – METRO MANILA MERALCOを選択するとMERALCOの電気代が、どんな構成になっているのか詳しく知ることができまます。MERALCOの電気代はこのブログ執筆時点で、11.25php/kwh(約24.86円/kwh)となっています

 

 

フィリピンの電力セクターは、発電、送電、配電に分割されています。MERALCOは配電事業者ですから、発電、送電の各事業者への支払いをそれぞれGeneration Charge、Transmission Chargeとして加算し、さらにMERALCO自らの配電コストをDistribution Chargeとして加算しています。Metering Chargeとは、配電事業者であるMERALCOが負担しているコストで、電力メータの設置、メンテナンス、メータ読み取りなどにかかる費用です。

MERALCOの場合、Systems Loss Chargeは0.58php/kwhで、電気代の5%ほどを占めています。ここで表示されているSystems Lossには配電上の技術的な問題から生じる正真正銘のロスも含まれており、残念なことに盗電と実ロスとの切り分けはできていないため、盗電が電気代を実際にどのくらい押し上げているのかはわかりません。少なくともMERALCOの場合、盗電によるロスはは電気代の5%以下と言うことができます。

UCで始まるコストは、ユニバーサルチャージ(Universal Charge)に関するもので、電力供給の不平等をなくしたり、環境への負荷を低減するためのプログラムを実行するためのコストを、広く電気利用者に負担してもらおうというものです。例えばUC-MEは、Universal Charge for Missionary Electrificationのことで、ユニバーサルチャージのうち電力供給が遅れている地方の電化に使われる部分であり、UC-ECはUniversal Charge-Environmental Chargeのことで、環境負荷低減プログラムへ使われます。

さらにkuryenteは、配電事業者をさまざまなデータをもとにしてランキングする機能を備えています。電気代、従業員数、営業収益、技術的な優越でランキングを表示したり、条件を指定してフィルタリングをすることができます。たとえばSystems Lossがどうしても気になる方は、Systems Lossの最も少ない配電事業者を簡単に見つけ出すことができます。

フィリピンの電気代はなぜ高いのか、過去の経緯を含めてもっと詳しく知りたい方には、ソーシャル・ニュース・ネットワークRAPPLERが作成したビデオ、Why are Electricity Rates in the Philippines the Highest in Asia?がお勧めです。電気代を構成する費用や収益の構造だけでなく、電力に関する過去の歴史や政治的な経緯などを含めて実に詳しく、楽しく解説してくれます

 

解説はひとつひとつのコストを積み上げる形で進んでいきます。発電・送電・配電のコスト、利益の上乗せ、ユニバーサルチャージ、過去の負債の清算など、電気利用者の肩に次々と重しが積まれていく様が、ホワイトボード上に実にダイナミックに描かれていきます。最終的に出来上がったイラストは、高額な電気代を背負い、四苦八苦しているフィリピン市民を描いた秀逸なものに仕上がっています。

アジアで電気代が一番高いと言われているフィリピンですが、電気代に関するデータ公開という点でもアジア最高クラスにあると言えます。

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)