情報公開請求の負担増に対して、「手数料を上げる渋谷区」と「データ公開に踏み切ったカリフォルニア州」

2013年8月28日 in Special


2013年8月27日の毎日新聞の報道によると、渋谷区が区情報公開条例の改正案を来月の定例議会に提出し、情報公開請求制度に基づいて開示する文書のコピー代金を1枚10円から20円に値上げするとのことです。改正案ではさらに、情報公開請求制度における権利の乱用と認められるような大量の情報公開請求については却下できるとする事項も盛り込まれます。

情報公開請求が地方自治体の業務において大変な重荷となっているという現状は理解できます。一度の請求に対して数千枚もコピーをしなければならないとすれば、大量のコピーを断りたくなる気持ちもわかります。市民の「知る権利」に対する認識が高まり、情報公開請求という手段があることが浸透すれば、情報公開請求は増え、コピーをはじめとする情報開示業務の重荷が地方自治体職員の肩にさらに重くのしかかることになるのは明らかです。

この問題は渋谷区に限ったことではありませんし、日本に限ったことでもありません。例えば、米カリフォルニア州も、渋谷区と同じか、あるいはさらに困難な状況に追い込まれていました。しかし、カリフォルニア州のとった対応は渋谷区とは全く逆の方向だったのです。

カリフォルニア州の情報公開制度は、連邦政府の情報自由法(FOIA)よりもさらに厳しく、公文書の開示請求があった場合には、10日以内にコピーを提供しなければならないとされています(州法政府規則第6253項)。もちろん、誰が要求したのかとか、その枚数が何枚であるとかによって、市民からの開示請求を断ることは一切できません。日本の情報公開制度では、公開の可否の通知を30日以内に行い、さらに30日以内に受け取り方法を指定するという規則ですので、カリフォルニア州の情報公開制度が自治体にとっていかに過酷なものであるかわかると思います。

カリフォルニア州政府は、増え続ける公文書の開示請求に対して、何をするにも手間と時間がかかる官僚的で非効率な組織で対応することは不可能と判断しました。そこでカリフォルニア州がとった決断は、データを公開することで開示請求自体を減らそうというものでした。

カリフォルニア州政府がロウデータの公開を始めると、さまざまな組織がそのデータを利用し始めました。例えば非営利団体のCalifornia Common Senseは、医療、学校、支出など市民が特に高い関心を持つデータを中心に、Socrataのプラットフォームを利用してデータを公開しています。Socrataを利用することで、市民は検索やビジュアル化を自由に、柔軟に行うことができるようになりました。

 

また、予算に関する情報開示請求は自治体にとって最大の悩みの種の1つです。毎日新聞によれば、渋谷区のある区議も「区の予算が適正に使われているかどうかを調査しようと思ったら何千枚になることもある」と指摘しているとのことです。これに対してCalifornia Common Senseのメンバーの1人は、カリフォルニア州のパロアルト市と協働で、パロアルト市の支出に関するデータをグラフなどでビジュアライズするクラウドサービスOpenGovを開発しました。

 

このOpenGovは、年間1,100ドルから4,500ドルで利用することができます。渋谷区の試算では、コピーにかかる人件費とコピー機器代が27円/枚であったとのことですから、コピー枚数に換算すると年間約4000枚~17,000枚のコピー代金でOpenGovのサービスを利用することができます。つまり、予算に関する情報公開請求が年間3人あれば十分にペイするサービスと言えます。パロアルトから始まったOpenGovのサービスは、マウンテンビュー、サウスオレンジなどにも広がり、カリフォルニア州を中心に採用する自治体を確実に増やしています。

カリフォルニア州やパロアルト市の例は、自治体がロウデータを公開することによって、さまざまな組織がそのデータを使ったサービスやビジネスを作り上げた好例です。忘れてはならないのは、ロウデータを公開することによって、地方自治体も情報公開請求にかかわるコストを大幅に削減できたことです。California Common SenseやOpenGovがはるかにわかりやすい形で市民にデータを提供しているため、地方自治体に対する情報開示請求は確実に減少します。

自治体は次第に重荷となる情報公開請求に対して、できるだけ開示しない方向に舵を切るのか、それとも、すべてを開示する方向に進むのか、重要な決断を迫られています。カリフォルニア州やパロアルト市の例は進むべき方向がどちらであるのかを示しているのではないでしょうか。日本において、データ公開に進む自治体がひとつでも増えるようにすることがOKFJの重要な使命であることは言うまでもありません。

 

参考:

 

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Tomihiko Azuma

Written by

Chief Fellow, Institute for International Socio-Economic Studies (株式会社国際社会経済研究所 主幹研究員)