政府オープンデータをもっと利用者フレンドリーに:OKFJの懸念と日本政府へのお願い

2014年4月10日 in Featured, News


一般社団法人オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパン(OKFJ)は、昨今の日本政府のオープンデータ政策への取り組みに関して強い懸念を表明します。

1)オープンデータカタログサイト試行版の停止

政府のオープンデータカタログサイト試行版(http://data.go.jp/)は、残念ながら3月31日で停止してしまいました。昨年度の調査事業が終了した一方で、新年度のサービス調達がスムーズに行えなかったためとされており、再開は5月初旬を目指すとされています。

公開停止の経緯もまた、残念なものでした。公開停止のお知らせは、3月末の数日間だけサイトに掲載されていたようですが、停止後のサイトでは停止の理由や再開の見通しが説明されていません。多い時には1週間で20万ページビューものアクセスがあり、提供データを利用したアプリ等の開発も行われているため、関係者からは、年度が終わっても公開が止まることがないように希望する声が公式・非公式の場でたびたび指摘されていました。

オープンデータカタログサイトは、試行版とはいえ日本のオープンデータの大きな一歩でした。2013年12月20日にようやくオープンしてから3ヶ月程度ですから、オープンデータの利用者層の裾野を拡げるのに十分な期間とも思えません。

公開停止は、いくつかの無視できない問題を引き起こすと考えられます。

データを活用して事業を行おうとする企業等にとっては、サービスやソフトウェアを開発している途中で、3月までの予定とは少し異なるデータがないかを改めて検索したいと思っても、現在は検索できません。

また、1万点を超えるデータセットが、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下に提供され、自由な利用が可能になっていましたが、今はそのライセンスも提供されなくなったため、新たに政府データを入手しても、総務省の情報通信白書や経産省のOpen Data METIに掲載されているデータ等の一部を除けば「All Rights Reserved」の状態に戻っており、個別に利用許諾が必要になってしまっています。

継続的に提供されるオープンデータを活用したいと考えていたサービスやソフトウェアは、今回の件で再考を迫られるでしょうし、既にそのような活用をしていたサービスやソフトウェアは、対応に苦慮するでしょう。

オープンデータは2014年度、15年度が取り組み強化期間ですが、そのスタートがこのようなものであることには危機感すら抱きます。そして、これがオープンデータの潜在的利用者の信用を失い、期待感を削ぐような効果を持ってしまうことも、避けられないでしょう。

OKFJも、これまで、このデータカタログサイトのローンチを心待ちにし、ローンチ後は国内外様々な場で紹介し、日本のオープンデータの発展のために応援して来ましたが、残念ながら足元を掬われてしまいました。オープンデータは政府が提供するだけでは政策目標はほとんど達成できません。利用者に利用されなければ効果が出ません。それにも関わらず、利用者を軽視するかのような展開になってしまったことは、大変残念です。

ですが、われわれは、手軽にデータを検索でき、使いやすいライセンスでデータを提供するデータカタログのような仕組みは、オープンデータの幅広い利用に不可欠だと考えます。今回の出来事はとても残念ですが、今後とも日本政府を応援し、日本のオープンデータの成功に向けて貢献していきたいと考えています。そこで、政府データカタログサイトData.go.jp の(完全ではありませんが)代替となるサイトDatago.jp を立ち上げました。このサイトは特定非営利活動法人リンクト・オープン・データ・イニシアティブ一般社団法人コード・フォー・ジャパンとともに始めたData for Japanという活動の一環として運営しています。

日本政府も、挽回のために相応の取り組みをして頂けることを強く願います。

2)政府サイトの利用規約(案)

4月1日にはもうひとつ、日本のオープンデータに関して同じくらい残念な展開がありました。オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパンとしては、この問題についても懸念を表明し、ここに広く関係者の注意を呼びかけます。

現在、政府では政府全体でウェブサイトの利用規約を書き換え、サイト上で提供されているほとんどの情報を自由に利用できるようにしようという取り組みが行われています。しかしその内容が利用者の利便性に十分配慮していないものになりそうであるということを指摘したいと思います。

「政府標準利用規約(第1.0版)」(仮称)(案)として電子行政オープンデータ実務者会議に提出された案は、複数の点で残念な内容を含んでいました。

a) これまでは制約なく利用できたデータにも、今後は利用の制約をかけてしまう

オープンデータは本来、データをより利用し易くするための取り組みであるはずです。数値データやそれを単純なグラフにした図の中には、データ構造や、グラフの描き方などの創作性が乏しく、いわゆる「著作権フリー」のデータとして使ってよいものも多くありました。

著作権がない場合、データは自由に使うことができますが、現在の利用規約案ではそのようなデータにも利用にも制約が課されることになってしまいます。これは、オープンデータ政策に逆行するものです。

例えば、政府サイトから桜の開花状況や、異常気象の情報を見つけて共有したい場合、あるいはパブリックコメントを実施して広く意見を募っているのを知って、共有したい場合、ソーシャルメディアで仕事の関係者や同僚に送りたいことがあるでしょう。その場合にも、利用規約に従って、クレジット表記をしなければならなくなります。

b) 内容が曖昧で利用者を萎縮させかねない制約条件を含んでいる

利用規約案には、「公序良俗に反する利用」や「国家・国民の安全に脅威を与える利用」を禁止するという規定があります。違法な利用以外にこのような利用を禁止する、ということになっているので、合法だけれども公序良俗に反したり安全に脅威を与える利用が禁止されることになります。これはどのような範囲の禁止になるでしょうか?

このように範囲が曖昧な規定は、利用者から見ると何をしてはいけないかがはっきりしないため、利用の萎縮をもたらしかねません。例えば、オープンデータ実務者会議でも指摘があった通り、夜道の明るさを知らせるアプリは、安全な道を探す人が暗いエリアを避けることにも使えますが、犯罪者が暗いエリアを探すことにも使えます。これは国民の安全に脅威を与える利用でしょうか?あるいは、公序良俗に反するでしょうか?

政府の提供する地図データを使って、東アジア地域の戦争をシミュレートできるようなゲームを作ったらどうでしょうか?災害時に正確な情報を提供すると、かえってパニックが起きる可能性があるという指摘がありますが、そのような正確な情報を政府サイトから収集・提供することも「国民の安全に脅威を与える」から禁止されるのでしょうか?

利用規約案の解説資料を参照すると、公序良俗は次のように説明されています。

「犯罪にかかわるもの、人倫(婚姻秩序・性道徳)に反するもの、賭博にかかわるもの、人の自由を極度に制限するもの、暴利行為又は不公正な取引行為などがあり、典型例としては、法に抵触する行為を助長する利用、卑猥又は脅迫的な利用などが挙げられる。」

既存の法律で違法な行為の外に、公序良俗に反する行為があると想定しているため、犯罪の教唆や幇助にもあたらなくても、犯罪に関係がある場合にはデータの利用が利用規約違反になるのでしょうか?私たちは基本的に、データは、目的によって利用が制限されるべきものではないと考えます。

c) データの組み合わせ利用にフレンドリーな設計になっていない

データの利用条件は、独自のもので、国内の自治体や海外でも採用例が増えているクリエイティブ・コモンズ・ライセンスを採用しておらず、また、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスとの互換性も確保されていません。

そこで、地方自治体のデータと国のデータを組み合わせて利用したいと考える人は、2種類のライセンスの条件を満たす方法を考えなければならなくなります。

d) 国際的な問題を生み出す温床になっている

この利用規約は、国際的な問題を生み出す温床になるリスクがあります。たとえば、海外のデータ利用者は、日本のデータを利用して、日本に観光に訪れる人向けのアプリケーションを作りたいと思うかも知れませんが、公序良俗に反する利用の禁止規定を見て、日本では何が公序や良俗に反するか判断できず、そのようなプロジェクトにはリスクがあるため、弁護士に相談する時間と費用をかけるなど、開発コストを多くかけなければならないと考えるかも知れません。

他国のデータの利用条件と互換性が十分確保されていないため、複数の国のデータを組み合わせるようなサービスやアプリケーションも、作りにくくなるかも知れません。

また、日本の利用条件を海外に輸出した場合、国によっては、公序良俗(英語で Public Order and Morality などと訳されます)に反した利用を禁止するという規定が日本とは大きく異なる形で利用され、自由な言論や、政府の批判や、集会の自由が妨げられるようなことになるかも知れません。日本政府におけるデータの利用条件が統一されることは、データの利用を簡便にするので、一般的には望ましいことですが、この利用規約は多くの国で用いられては困るような利用規約になっているのではないでしょうか。

オープンデータにおける「オープン」の意味は、オープン・ナレッジ・ファウンデーションのプロジェクトのひとつ、Open Advisory Council の議論を通じて、これまでにオープン・ソース・ソフトウェアやウィキペディアなどを通じて培われた知見を参照しながら、議論されてきました。この利用規約はそのような国際的な議論の場でも、おそらく「オープンとは呼べない」ということになるでしょう。関係者の間では、このような日本の動きを指して、「日本がガラパゴス化」がここにも起きつつあると指摘する声もあがっています。

オープン・ナレッジ・ファウンデーション・ジャパンは、このように、今の利用規約案にはデータの利用を萎縮させたり、利用したい人に不便を強いるような側面があるため問題だと考えています。

もっとも、政府サイトに掲載されている著作物を断りなしに利用できるような原則への転換という側面を見ると、これは大きな進歩でもあります。また、データの組み合わせ利用に不便が残るとしても、国のデータだけを組み合わせる場合や、単一のデータだけを利用する場合など、従来よりも簡便になるところもあるでしょう。また、政府のウェブサイト全体を対象に、利用条件を大幅に緩和しようという取り組み自体は大いに評価されるべきものでしょう。また、利用規約は全体として簡潔・手短で読みやすい(クリエイティブ・コモンズ・ライセンスよりも遥かにわかりやすい)ものになっていることも、データを利用する人にとってはとても有難いことです。

そのような取り組みは賞賛・感謝しつつも、やはり上のような問題が大きく、OKFJが理想とするような、自由なデータ利用の実現に照らせば重大な懸念材料であることを指摘さざるを得ません。

会議資料によれば2014年と15年はこの利用条件を使い、2015年に再検討を行う計画がありまが、これはデータポータルの停止期間よりもはるかに長い期間です。その間に、海外の開発者が日本のデータ利用をあきらめ、著作権フリーのデータを自由に使っていた事業者が不便を被り、曖昧な規定にリスクを感じた開発者があきらめる、といった犠牲が出ることも、おそらく不可避でしょう。

そのような犠牲を少なく抑えるべく、速やかな見直しや不明瞭な規定のより明確な解説など、政府が適切な対応をすることを願います。

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