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「ちばレポ」に対する市民の反応はいかに

2013年9月23日 in Events, News

2013/9/14 CITOイベントの様子

2013/9/14 CITOイベントの様子

9/20に「ちばレポ」参加者へのアンケート結果が公表されました。
◆ちばレポ第2回アンケート調査結果

調査対象690名に対して回答率は18%(124人)。うち実際に投稿したことがあるのは34.7%(43人)。
投稿者のレポートに対する市の対応状況については「満足」が51.2%(22人)、「不満」が48.8%(21人)とほぼ拮抗する回答結果となっています。一般化するには母数としてやや不十分かもしれませんが、今後の進め方のカギとなる部分ですのでこの結果を少し考察してみます。

そもそも「ちばレポ」はトライアルとして行われ、実際の対応は原則として行わない位置づけで始まりました。

◆ちば市民協働レポート実証実験(ちばレポ)

今回の実証実験(トライアル)では、市民の皆様などから寄せられた様々な地域課題について分析を行い、従来の行政が行う対応に加え、市民の皆様と市との協働による解決の可能性について検討を行います。なお、実証実験(トライアル)では投稿課題に対し、仮想業務処理(実際の処理はしない)を基本とします。ただし、緊急性等により現実的な対応が必要な場合は、所管において業務処理を行います。

しかしながら、いざフタを開けてみると、
◆ちば市民協働レポート実証実験[ちばレポ(トライアル)] 「現在のレポート件数」

総受付件数372件に対して、何と約半数の183件が対応済みとなっています。(2013/9/22現在)

やはり目の前に課題が提示されると担当部局としては責任感ゆえ看過できなかったのでしょうか。課題や所管が明らかなものについては比較的早期に対応されています。
いったん対応が始まると、投稿者から見れば自分のレポートが対応されていないと気になります。こうした経緯で上記の「満足」と「不満」が半々という結果になったものと思われます。

これに対して、千葉市では声明を出しました。
◆「ちばレポ」の現状について(平成25年9月13日)

本来対応を約束していたものでは無いにも関わらず、対応が遅れているものに対しても個々に判断して、市役所の所管外のものを含めて引き続き切り分けや対応を進めていくことを改めて告知しました。いわば大人の対応です。

例えば道路ひとつ取っても国道、県道、市町村道でそれぞれ所管が異なり、道路わきの道路標識は警察の所管です。その違いは市民にとって区別がつきにくいので、一緒くたに「ちばレポ」として上がってきます。従来型の苦情受付であれば、管轄外で済まされていたものが、これらを一括して受け取り、内部の所掌のみならず、外部のものまで交通整理して課題を受け渡すところにまで踏み込む内容になっています。縦割りに慣れた組織にとって横断的な全体調整はかなり困難を伴うものでしょう。これはまさにオープンガバメントに向けた動きであり、心よりエールを送ります。

こういった千葉市の姿勢は立派だとは思いますが、本来「ちばレポ」は市側に一方的な作業を押し付けるものではないはずです。今後は市民側からの自発的な参画とも連携する必要があるのではないででしょうか。例えば、ある程度レポートが溜まったところでその内容について、市側と市民が集まり、どのように考えて行けば皆が幸せになれるのか、といった意見交換ができれば良いのではないかと感じました。統計的な数値から何らかの傾向が得られたり、市民側からの自発的なアイデアが出てくるかもしれません。
実はこの動きに向けてもすでに手が打たれており、千葉市では市長と市民との対話会がいくつか予定されています。
◆【市長との対話会】参加者募集中

テーマは「「平成24年度決算とこれからのまちづくり」」ということで、一見「ちばレポ」とは無関係に見えますが、市民参画や協働の本丸は自治体の予決算に市民も何らかの形で関わることです。こういった市民との対話を通じた千葉市の次の一手に、さらに期待がかかります。

閑話休題。

ここで、9/14(土)に開催したCITOイベントについても併せて報告します。(冒頭の写真)
2回目となるCITO(プレ)イベントですが、今回は「ジオキャッシング」「ゴミ拾い」「ちばレポ」の3つを同時に行う欲張りな内容でした。ジオキャッシングという宝探しゲームを楽しみつつ、落ちているゴミを拾い、気づいた課題を「ちばレポ」にレポートしました。

「ちばレポ」ではゴミを報告するカテゴリがありますが、報告しているうちに、細かいゴミは写真に撮って送るよりも自分でその場で対応したくなります。しかし、ゴミを拾っても捨てる場所を見つけるのが難しい。自分ひとりでゴミ袋を用意して拾って歩くのも気恥ずかしい面もあり、ついついゴミ拾いは他人任せになってしまいます。

今回、市の関係者の計らいでゴミ袋と集積場所を用意して頂きました。そのような準備ができていて、複数名で街歩きしながらゴミを集めてみると、目的が明確で、楽しみながらゴミ拾いができました。10KMほど歩いたので、運動不足気味の身には健康のためにも良かったと思います。こうした楽しみを交えたゴミ拾いセットのようなものを用意して、希望する団体に提供する仕組みがあれば、市民参画のきっかけになるのではないかとふと思いました。

ゴミ拾いの後には汗と埃にまみれた体を松の湯という銭湯で洗い流し、風呂上がりにはコーヒー牛乳という、昭和ロマンを彷彿とさせるコースで締めくくりました。また企画しますのでお近くの方、ぜひご参加ください。

千葉市のオープンガバメント、その本気度をチェック!

2013年8月22日 in Events, News

まち歩き後に市民からの質問に答える熊谷市長

まち歩き後に市民からの質問に答える熊谷市長

 8/17(土)に市長と一緒に”ちばレポ“を使ったまち歩き体験会を開催した千葉市ですが、そのオープンガバメント/ガバメント2.0に向けた本気度はどの程度でしょうか?

 国連経済社会局行政開発管理課による市民参画のためのオープンガバメント・データに関するガイドラインにある「オープンガバメントデータ・レディネス評価用チェックリスト」を使って評価してみました。これはオープンガバメント/オープンデータを推進するための準備がどの程度整っているのか、政府・自治体が自己診断する為のチェックシートです。カテゴリごとに全部で40件のチェック項目があります。今回、このチェックシートに基づき、試験的に評価してみました。なお、これは僭越ながら筆者が外から見た、主観による評価なのであくまで参考程度に見てください。■は準備OK、□は準備NGもしくは不明を表します。『』内は筆者のコメントです。

  • A.政治的コミットメントおよび適切な政策
  • ■1.ガバメント・データをオープンにするためのトップレベルの意思決定者からの政治的コミットメントがありますか?『市長の強いコミットメントあり』
    ■2.透明性、説明責任および参加のためのトップレベルの意思決定者からの政治的コミットメントがありますか?『市長の強いコミットメントあり』
    ■3.腐敗と戦うトップレベルの意思決定者からの政治的コミットメントがありますか?『市長の強いコミットメントあり』

  • B.市民社会、メディアおよび他の再利用者の能力
  • ■4.透明性、説明責任および参加の概念を促進する増幅者として動機づけられた変革推進者がいますか?『業務改革推進課。OKFJもその支援団体のひとつ。』
    □5.これらの変革推進者は、独力で処置を取り講ずる権限を与えられますか?『不明』
    □6.これらの変革推進者は、OGD創設に従事するために必要な能力(知識、技術)リソース(人的、財政的)を持っていますか?『財政的リソースが不明。他はOK』
    □7.市民社会とメディアに透明性、説明責任および参加に対する需要がありますか?『メディアの関心は強い。市民の方はまだこれから(現時点でも一部に活発な市民はいる)』
    □8.市民社会とメディアに情報の自由とガバメントデータをオープンすることに対する需要がありますか?『メディアの関心は強い。市民の方はまだこれから(現時点でも一部に活発な市民はいる)』
    □9.技術的なリテラシーを持つ市民社会がありますか?CSO(市民社会組織)あるいは「市民ハッカー」がいますか?『一部にいるが連携、組織化はこれから』
    □10.自分たちのアドボカシーまたは市民サービスプロジェクト用に実際にOGDを再利用しているCSOはありますか?『これから』

  • C.法制度と規制の枠組み
  • □11.情報へのアクセスに関して組織内の規定がありますか?『不明』
    ■12.情報へのアクセスに関する法制度がありますか?『情報公開法』
    □13.情報制度へのアクセスは、受け身的な開示と同様に率先した開示に対する規定を含んでいますか?『不明』
    ■14.データ・プライバシーに関する組織内の規定がありますか?『通常あるはず』
    ■15.データ・プライバシーに関する法制度がありますか?『個人情報保護法』
    □16.オープンデータに関する法制度がありますか?『これから』
    □17.データ・プライバシーに関する国際協定の批准がありますか?『不明』
    □18.PSIの中に知的財産権を規制する法制度がありますか?また、それは、PSIの再利用を支援しますか?『不明』

  • D.制度的枠組と組織的な条件
  • ■19.情報(あるいはプライバシー)コミッショナーがいますか?『CIO補佐監』
    □20.情報コミッショナーかそれに準ずる人は幹部から独立していますか?『不明』
    □21.全国レベル、あるいは準国家レベルにオープンガバメント・データに責任を持つ単独の政府機関がありますか?『なし』

  • E.文化的、人的リソースの状況
  • ■22.人間の価値と市民の権利は、社会の中で広く認められていますか?『はい』
    □23.市民とコミュニティーのエンパワーメントおよび自決を支援する環境がありますか?『一部あり』
    □24.市民の教育と知識の共有を支援する環境がありますか?『一部あり』

  • F.財政的な状況
  • □25.オープンガバメント・データの費用は問題となりそうでしょうか?『不明』
    ■26.OGDイニシアチブを実施する利点はコストより大きくなり得ますか?『大きくなることが見込まれる』

  • G.技術的インフラ
  • ■27.国全体でインターネットは充分に浸透していますか?都市/地方で『はい』
    ■28.モバイルは充分に浸透していますか?また、人々はどのようにモバイルのデータサービス(SMS、3Gなど)にアクセスしていますか?都市/地方で『はい』

  • H.データと情報システム
  • □29.OGDとしてのPSIの作成と公表を支援するデータ管理および情報システムが適所にありますか?『これから。CKANは設置済み』
    □30.適所のデータ管理と情報システムは、PSB(公共機関)の間のデータの有効な交換を可能にしますか?『不明』
    □31.データはウェブ(形式を問わず)上で、オープンなライセンスで利用できますか?『これから』
    □32.データは構造化された機械可読なデータとして利用できますか?『これから』
    □33.上記全てに加えて非プロプライエタリな形式ですか?『これから』
    □34.上記全てに加えてW3Cのオープン・スタンダードを使っていますか?『これから』
    □35.上記全てに加えてLinked Data ですか?『これから』
    ■36.ガバメント・データあるいはガバメント・データの編纂は、現在著作権あるいは他の知的財産のような体制によって保護されていますか?『はい』
    □37.データは、再利用を制限するなんらかのライセンスを前提としていますか?『これから』
    □38.料金はアクセスおよび再利用に対して、限界費用(例えば原価の回収を支援するため)を超えて請求されますか?『これから』
    □39.データは商用再利用を含め、目的を問わず自由に再利用できますか?『これから』
    □40.「表示」や「継承」以外の制限は何かありますか?『これから』

 今回は全40項目中、13項目が準備OKという結果となりました。一見残念な結果に見えますが、やや厳し目に評価した点、外部からは分からない部分がある点、市民や中央政府の果たすべき役割部分もある点などから、取り組みを始めてまだ日が浅い現時点としては実際のところこれはかなり良い数字だと言えます。

 筆者も市長とのまち歩きに参加しましたが、市民側の反応はほとんど好意的なものでした。今回の試みは実験段階であり参加者数は30名と限定的なものでしたが、従来から公園の清掃などのボランティア活動をやられている方々や、これまであまりそういった活動の経験が無い方々など多様なバックグラウンドの方々が参加していました。リタイア世代の方々が7割ほどの印象でしたが、現役世代の方々も見受けられ、中には高校生も参加していたようです。従来型の市民活動も尊重しつつ、新しい枠組みでの市民協働の可能性が見えてきた印象があります。また、運営側もひとつの部局ではなく、市民局、総務局、都市局、建設局など幅広い組織が関与し、うまく横連携されている様子が窺えました。

 自治体だけが頑張っても「まち」は変わりません。県・中央政府の後押しや市民との連携が今後のカギになりそうです。千葉市の次の一手が楽しみです。

(参考:熊谷市長とのまち歩きイベントの様子は下記記事にまとまられています。)
街の問題 スマホ活用して改善(NHK NEWSWEB)
ちばレポ実証実験 市長とまち歩き(千葉市長・熊谷俊人Blog)
ちばレポ実証実験 ~市長とまち歩き~(千葉市議会議員 福谷章子のまちづくり)
ちばレポ実証実験、市長とまち歩きに参加してきました。(千葉市議会議員(美浜区選出)たばた直子「真っ直ぐな視点を千葉市に!」)

CITOプレイベントを開催しました

2013年6月10日 in Events, Special

スマートフォンでキャッシュを探す様子

スマートフォンでキャッシュを探す参加者

 ジオキャッシングをご存知でしょうか。2000年に米国でそれまで民生用のGPS電波に行われていた精度低下の加工が解除された際、それを祝ってGPS受信機を使った宝探しパーティが開催されたのがきっかけで始まった、だれでも参加できる世界規模の宝探しゲームです。
 全体的には海外での参加者が多いのですが、このところ国内でも会員サイトの日本語化が進み、手軽なGPS受信機としても使えるスマートフォンの普及ともあいまって参加者が増えています。

 キャッシュとはお宝を指しますが、実際には高価なものではなく、バッジなどの小物が防水性の容器に入れられています。キャッシュは誰でも探せるのはもちろん、誰でも隠すことができるというセルフサービスで運営が行われています。キャッシュの設置場所はその地域の名所案内を兼ねていることが多く、その案内文は英語と日本語の両方で書く決まりなので、外国からの訪問者も数多くキャッシュ探しに訪れます。

 このジオキャッシングの楽しみ方にはバリエーションがあり、そのひとつがCITO(Cash in Trash out) という、宝探しを楽しみながらゴミ拾いもやってしまおうというものです。日本では式根島で毎年開催されています。(関連記事

キャッシュの位置を表す地図

キャッシュの位置を表す地図


 今回開催されたのは、自治体がCITOを開催するとしたらどのような課題があるのかを探るためのプレイベントです。自治体関係者、地元でボーイスカウトをお手伝いされている方、ジオキャッシングの経験者、民間企業に勤める方など7名に参加頂き、2時間半ほど千葉市の中心部を歩いて都合9個のキャッシュを見つけました。その後、室内に移動し、開催に関わる課題を話し合いました。その結果下記のような意見がいくつか出されましたが、みんなで議論するうちにいずれも解決のメドを立てることができました。

Q)コンピュータに不慣れな人に対する考え方は?
A)広い層を対象とするなら、スマートフォンやGPSが使えない方は紙地図でも楽しめる。子どもを中心に考えると、親御さんはスマートフォン所有層が多いので、スマートフォン利用を前提としても良いかも。

Q)キャッシュを発見するにはある程度サポートが必要な気がするが、少人数のチームが複数できた場合にそういった体制が取れるか。
A)運営側で全てやると考えるのではなく、構想段階から想定する参加者(例えば子ども)を巻き込んだ進め方が良いのでは。子ども自身に企画段階から事前準備に参加してもらってはどうか。

 町内の清掃日もゲームに仕立てることで、楽しみながら参加することができます。子どもが参加したいと言えば親御さんもついてくるでしょう。地域への関心が薄い方でもゴミの捨てられ方を自分の眼で見ると、何らかの意見が出てくるかもしれません。自分の町を知るきっかけにもなります。つまり、行政との対話の受け皿としての様々なステークホルダーによるコミュニティ作りや市民参画のきっかけとなる可能性を秘めているのです。

 あなたの町でも試してみませんか。

オープンガバメントのキモは地域再生

2013年4月12日 in Special

Collaboration / ChrisL_AK / CC BY

Collaboration / ChrisL_AK / CC BY

普請から公共事業へ、そしてこれから

普請(*1)という言葉をご存知でしょうか。普(あまねく)請(こう)の字義どおりみんなに呼びかけて何かをやろうとするものです。古くは近所の道路整備や家の建築など、身近な共同体の相互扶助として行われてきました。後の公共事業の原型でもあります。

近代国家を作り上げるため、あるいは戦後の復興を成し遂げるため、国を挙げて大掛かりな公共事業を行い、経済と共に社会を回して行く仕組みで日本は発展してきました。しかし、完璧な社会は人類史上未だ登場していません。世の習いとして発展はいずれ停滞に至り下降が始まります。日本では団塊世代を中心とした戦後の発展が停滞期を迎え、既に高齢化、少子化社会に向けてまっしぐら。政府・自治体主導の公共事業への依存を大きく方向転換する時期に来ています。

世界の動き

一方、世界を見るとどうでしょうか。

2009年1月、米国オバマ大統領はその就任に際して「透明性(transparency)」、「国民参加(participation)」、「協業(collaboration)」というオープンガバメントの3原則を提示しました。

2009年9月、オライリー・メディア社のファウンダーであるティム・オライリーはガバメント2.0を提唱しました。これはITを活用したプラットフォームとしての政府や、Do It Ourselves な社会を指しています。(*2)

2010年7月、英国キャメロン首相は新政権の社会政策として「大きな政府」ではなく「大きな社会(Big Society)」を打ち出しました。その内容は中央政府から地方自治体への権限移譲、地域住民の行政への参画、民間非営利部門の支援、政府データの公開などです。(*3)

オープンガバメントガバメント2.0、そして大きな社会というコンセプトは表現こそ違え、いずれもオープンデータやIT技術を媒介として個人やコミュニティ(地域の共同体)を中心とする新しい社会をめざしている点で、通底する思想はほぼ同じと言えるでしょう。

こういった動きは日本で根付くのでしょうか?IT技術に縁のない人には関係のない話なのでしょうか?

道普請やご隠居に見る社会参画

かつて日本には中央や地方の政府とは別に、身近な集落内で助けあう共同体はごく普通に存在しており、例えば「道普請」は今でも行われています。(*4)政府や自治体に税金をつぎ込んでもらうだけでなく、自分たちでやれることはやってしまおうというならわしの背景には、精神論だけではなく経済的な合理性もあります。

また、江戸時代には早ければ40歳台半ばにはリタイアする「ご隠居」がかなりいたとする説があります。(*5)ご隠居とは次世代に家督を譲り、直接的な利害関係を離れて街を見守る、いわばスーパーバイザーです。おそらく自分の家族のことだけでなく、町内やより広い社会の「全体最適」の視点を持ちやすい存在だったのではないでしょうか。こういった人たちが地域の自治に意見を出したり、参加したりする自律的な社会は、まさに今必要なものです。

地域の行政は全て役所の役割として一方的に任せてしまうと役所に対する声の大きい人の意見だけが通ったり、受益者としての市民の権利意識が強くなりがちで、結果的に不平等であったり高コストな社会を生み出しやすいといった弊害が出てきます。これからの日本にはリタイアした人も、現役の人も、社会におけるそれぞれの立場から、声の大小ではなく、オープンデータという客観的な事実に基づいて、自分の住む地域の行政をウォッチし、意見し、参加すべきです。他の誰でもない、自分自身が参加意識を持つことが必要です。

古くて新しいオープンネス

「情けは人の為ならず、巡り巡って己が為」ということわざがあります。他人への思いやりは長い目で見れば相手だけでなく、社会のつながりを経て最終的には我が身のためにもなる、といった意味合いです。利己的な考え方というよりも、情けを受ける側の負担感を減らす思いやりのある言葉だと思います。「オープンネス」の考え方も全く同じです。公開することによる直接的な利益は短期的には必ずしも明らかではありませんが、長期的にはその波及効果は社会全体に利益をもたらすと考えられています。

直接民主主義に近づくツールとしてのIT

民主主義の理想は全員が直接的に政治に参加する直接民主主義ですが、これまで住民全員が社会の運営に参加することが不可能であったため世界の多くの国々で間接民主制あるいは議会民主制がとられています。しかしITやソーシャルメディアの発展はこの常識を変えようとしています。ソーシャルメディアを使う人は社会全体からみればまだ一部に過ぎません。しかし、投票にもあまり行かず、社会で声を上げる機会が少なかった人たちから幅広く、低コストで意見を吸い上げられる可能性があるのです。ガバメント2.0などの文脈でITが大きく取り上げられる理由はそこにあります。
(参考:ITを使った場合でもひとりひとりが全てバラバラな意見を言うだけではとりまとめが困難なので、意思決定をその分野に詳しい知り合いに委任することができるという、いわば餅は餅屋式の仕組みを持つ液体民主主義(*6)という考えもあります。)

一方でデジタルデバイドや声を上げにくい社会的弱者の存在には十分配慮する必要があります。こういった人たちも含めた多方面のステークホルダーが、オープンにされた情報やデータに基づいて多様な意見をぶつけ合う場を設け、みんなで街づくりを考えていくことが、様々な課題にとって解決の糸口となることでしょう。

むすび

ITのチカラを借りて新しい社会のあり方を目指すオープンガバメントやガバメント2.0は、なんだか遠い世界のことのようにも聞こえますが、そのアプローチは実は私たち日本の文化にはとてもなじみ深いものです。日本各地に残る共助の仕組みや地域再生の試みを再評価し、さらには市民自らが行政に積極的に参画する時が来ているのです。

参考資料:
(*1) 普請
(*2) ティム・オライリー特別寄稿:ガバメント2.0―政府はプラットフォームになるべきだ
(*3) 英国新政権の市民社会政策-「大きな社会の構築」について-
(*4) 道普請(みちぶしん)」って何???
(*5) 江戸時代のくらしとご隠居パワー
(*6) 液体民主主義 液体フィードバック入門

FixMyStreetでガバメント2.0を始めよう!

2013年4月1日 in Special

FixMyStreet Japan / CC BY

FixMyStreet Japan / CC BY

FixMyStreetとは

英国のmySocietyが開発したアプリケーションで、道路施設の破損や不法投棄などに気づいた市民が報告し、行政はそれを見て必要に応じた対応を行う仕組みです。ガバメント2.0あるいはオープンガバメントを実現するツールのひとつに位置付けられます。日本でもmySociety 版に触発されたFixMyStreet Japan がWeb版、Android版、iOS版ともに札幌のダッピスタジオによってフルスクラッチで開発され、現在無料で誰でも使えるようになっています。

ただし利用を開始するにあたっては、予め市民と行政の双方でその目的や趣旨を共有しておく必要があります。

従来型の市民VS行政

まず市民の側から見ると、従来のやり方であれば自宅前に粗大ごみが放置されているから早く何とかして欲しいとか、熊蜂が巣を作っているから駆除して欲しいとか、主に自分の生活環境に不都合がある時に苦情処理依頼という形で行政に対処を要請します。
こういったやり方で素早く対処してもらえると市民側の満足度は上がりますが、あまりにもこういったサービスを受けるのが当然の権利という意識が強くなると、例えばビニール傘が落ちていて危ないから早く持って行って欲しいとか、やろうと思えば自分でも簡単にできることまで、税金を払っているのだからと要請の内容がエスカレートする場合があります。
これを費用で見れば、自分で拾って処分した場合は限りなくゼロですが、行政職員が自ら、あるいは業者に依頼して処分するとコストが掛かります。通常、労働者を雇用する費用はその給与の約2倍といわれます。仮に月給が40万円の人であれば月の勤務時間が180時間平均だとして時間当たりのコストは4400円ほど。ビニール傘を拾いに行って処分するのに2時間掛かったとすれば処理料は8800円ということになります。この8800円は税金から支払われるわけです。

一方行政側から見れば、これは苦情処理というやや気の重い仕事です。千差万別の内容に応じて都度担当部署を判断する必要があります。場合によってはいわゆるたらいまわしになることもあるでしょう。内容によっては法的な監督責任を問われることがあるので気の抜けない仕事です。そのため、言われてから動き始めるのではなく、定期的に街を見回り、問題が無いか予防的に点検するようになります。できるだけ漏れなく点検しようとすればするほど費用が嵩む構造です。さらに、この予防点検が効果を発揮すればするほどその状態が当たり前になり、市民からの通報はあたかもそれを事前に発見できなかった行政のミスのようになってしまいます。
これでは行政側もピリピリするばかりでなかなか士気が上がりません。日本全体で高齢化、少子化が進み、税収が減少する中、高コストのサービスを続けることが難しくなっている状況もあります。

FixMyStreetで何が起こるか

それではFixMyStreet を使えば従来の市民と行政の関係はどのように変わるでしょうか。

市民側は自宅周辺だけでなく、街全体を歩くことにより、街の抱える課題をまず視覚的に理解します。気づいた課題のうち、自分にとってだけでなく、社会にとっても解決したほうが良いだろうというものを自分なりの考えで取捨選択してFixMyStreetを使って通報します。(実際は、取捨選択の段階ではひとりで考えるのではなく、後述の街歩きイベントなどで、複数の立場の人々と意見交換する方がより良い結果が生まれます。)

通報内容は行政側の窓口でいったん検討して優先度を付けた上で対応が行われます。行政だけでなく、その投稿を見た別の市民が例えば「蜂の巣の扱いは慣れているので自分が駆除しようか」と言ってくれるかもしれません。自分の通報した内容が必要性を認められて適切に対応されると、通報者には小さな成功体験が芽生えます。これを積み重ねるうちに、たとえ内容によっては対応されないものがあったとしても、誰もが見られるウェブサイトで公明正大に行われているので、行政側の立場や考え方も分かってきます。行政の意思決定や予算の中身が分かってくると、社会の中の自分という視点を得ることができ、例えば自分の家計や自宅周辺という部分最適の視点であったものが、より大きな町内会、市町村、県、国といったそれぞれのレベルでの全体最適の視点を持てるようになります。
また、社会から孤立しかけている人が問題の解決のために自分の時間やスキルを提供する機会があれば、社会とのつながりを取り戻すきっかけになるかもしれません。

行政側は市民からの通報への対応を真摯に続けるうちに、クレームが減り始めることに気付きます。気付きを得た市民は行政に近い視点で課題を捉えるようになり、無茶な要求が減って行政の適切な対応に納得したり感謝するようになります。そうすると行政側にも仕事を認められたという小さな成功体験が生まれます。

市民と行政双方の成功体験が噛みあってプラスのフィードバックループが生まれた時、街は変わって行きます。市民は自らのアクションで街の経営に寄与したり変えることができるのです。行政の側も誇りと喜びをもって仕事を遂行することができます。

しかしながらその実現には市民と行政双方の意識や関係性の切替を伴うものであるため、ある日突然できるものではありません。FixMyStreet というツールはそのきっかけを作ることはできますが、最終的に市民が街の意思決定や予算策定に関わるようになるには単発のイベントだけでなく、中長期的な計画に基づく継続的な活動が必要と言われています。(詳細は前の記事「ガバメント2.0を理解する国連のツールキット-OGDCE Toolkit」を参照してください。)

事前準備

最低限、通報する市民とそれを受ける行政側でより良い街づくりに共同で取り組む、という共通認識がまず必要です。さらにいえば課題を適切に解決するには議員、町内会、商工会、学校、などできるだけ多くのステークホルダーにも、できるだけ初期段階から参加してもらうことが必要です。
共通認識を得る手段のひとつとして、街歩きイベントを開催します。

街歩きイベントの開催

FixMyStreet の通報(投稿)はPCを使ってWebブラウザからでも可能ですが、スマートフォンを片手に歩きながら写真付きで投稿することもできます。スマートフォンを持っている人は事前に専用アプリをインストールします。持っていない人は歩く範囲の紙地図を予め用意して、そこに投稿対象の位置や内容をメモします。デジカメなどで撮った写真も、状況の把握に不可欠です。

3~4名をひとグループとして担当エリアを決め、1~2時間かけてそのエリアを歩きます。
歩きながら道路設備の破損など、何らかの対応が必要と思われる街の課題を探して歩きます。見つけたものはスマートフォンでその場で投稿したり、紙地図にメモしたりして記録します。

歩き終わったら、インターネット接続があり、PCの使える会議室などに移動します。プロジェクタもあると便利です。紙地図にメモした内容をデジカメで撮影した写真とともにWebブラウザから投稿します。

記事の投稿が終わったら、ひとつずつ投稿者による状況説明を受けて、その解決策をみんなで話し合います。この時の、立場の違いによる問題点の捉え方の違いに気付くことが重要です。全ての問題が行政の責任で処置されるべきこととは限りません。市民を含めた地域の資源を最大限活用して解決策を考えることが必要です。

問題の例

右の写真は街にゴミが多く見られるという投稿に添付された例です。

FixMyStreet Japan / CC BY

FixMyStreet Japan / CC BY

これに対して参加者からは以下のような意見が出ました。

・街歩き参加者の子供さんが、ずっとあるいている間にゴミを拾ってくれた。
・繁華街の裏通りは結構ちらかっていた。
・ゴミは拾っていただけると助かるけど、ゴミを捨てようとする人が減っていくように街がなっていくといい。
・ゴミがゴミを呼ぶ。落書きが落書きを呼ぶ。常に綺麗にしておくというのが捨てさせない防止策。
・ゴミの発生源があるはず。例えばコンビニの前でその場で食べたり飲んだりしてしまうということはあるかもしれない。
・ゴミ箱の位置が可視化されているといい。郵便ポストのマップのように。
・ゴミ箱がないから捨ててしまうということがある。結局コンビニに捨てる。
・公共のゴミ箱は設置しない方針がある。ゴミは持って帰ってもらおうという趣旨。
・方針としては理解できるがゴミが排出されている現実がある。どうしたら良いか、考える余地がありそうに感じる。
・市街地のコンビニは(ゴミ箱を)外でなく、店内に設置するようになってきている。
・街から公衆電話がなくなってきているが、コンビニの前には公衆電話がおいてある。スマホの電源がなくなると公衆電話を使う。コンビニは人の集まりやすい場所になっている。

ゴミひとつ取っても様々な社会背景や解決策があることに気付きます。
あなたはどのような解決策が良いと思いますか?

このFixMyStreet Japan は誰でも自由に使えますが、使い方や進め方などご質問やご相談などありましたらこちらの下部のフォームでお気軽にお問い合わせください。

ガバメント2.0を理解する国連のツールキット-OGDCE Toolkit

2013年3月31日 in Special


2013/6/1 第2版が出ました。詳細は市民参画のためのオープンガバメント・データに関するガイドラインを参照。
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開発管理における 市民参画のためのオープンガバメント・データ 指導ツールキット(OGDCE Toolkit)

国連の行政開発管理部門(DPADM),経済社会局(UN DESA)による開発管理における市民参画のためのオープンガバメント・データツールキット

ガバメント2.0、オープンガバメント、オープンデータ、ガバメントデータ、オープンガバメント・データ等々よく似た用語が飛び交い、お互いが少しずつズレた概念のことを話しているのに気付くことがあります。生産的な議論のためには用語の定義や概念についての認識が共有できていないと、いつまでたっても噛み合わない不毛なやりとりになりかねません。

2013年2月、国連行政機関ネットワーク(UNPAN)より「開発管理における市民参画のためのオープンガバメント・データ 指導ツールキット(OGDCE Toolkit)」(原文はこちら)が公開されました。これは世界各国のオープンガバメント及びその鍵となるオープンガバメント・データへの取り組みをベスト・プラクティスとして整理し、関連する用語や概念の定義を試みたものです。

構成としては政府や自治体内部向けにオープンデータを軸にしたオープンガバメントを推進するのに必要な情報や手順をまとめた形式になっていますが、もちろんそれ以外のオープンデータやオープンガバメントに関心のある方向けにも有益な内容です。

例えば「オープンデータ」とは何か、ということについて法的なライセンスなどの側面と、技術的なファイル形式などの側面がある点など、幅広い視点から捉えており、各国の事情に合った進め方をして行く上での議論のベースになる内容です。

画像の出典:DPADM/UMU

画像の出典:DPADM/UMU

冒頭に挙げたオープンデータ、オープンガバメント、ガバメントデータ、オープンガバメント・データの関係は上図のようになっており、こういった関係性の整理は重要です。ちなみに、ガバメント2.0はティム・オライリーが提唱したものでITを活用したプラットフォームとしての政府やDo It Ourselves な社会のことであり、オープンガバメントの概念とほぼ重なるものです。

今回、「オープンデータ活用!」というFacebook グループの有志によりこのツールキットの日本語版初版がリリースされました。内容について、興味ある方はぜひ上記ツールキット画像をクリックしてPDF(約4.3MB)をダウンロードの上、ご一読ください。複製や再配布はご自由にどうぞ。

また、ガバメント2.0やオープンガバメントの推進をお考えの方でご質問やご相談などありましたらこちらの下部のフォームでお気軽にお問い合わせください。

以下、目次のみご紹介します。

ツールキットの概要
始める前に
ツールキットの使い方
誰がツールキットを使うべきか
セクションⅠ- オープンガバメント・データとは
透明性と説明責任のための市民参画
市民参画とは
オープンガバメント・データにおける「オープン」の定義
データの種別、セット、及び用法
構造化データ、機械可読データ、ローデータ、そしてLinked Data
データセット
データを制限無しに利用、再利用及び配布する権利
なぜガバメントデータのオープンが重要か
オープンガバメントデータの原則
課題、制限及びリスク
セクションⅡ – オープンガバメント・データ戦略の設計
政府及び国家発展戦略の一部としてのオープンガバメント・データ戦略
ステークホルダーを巻き込もう
他者に学ぶ
自己評価
オープンガバメント・データのレディネス
リソースを識別する
人的及び組織的資源
技術とインフラのリソース
財政的なリソース
ゴールと目的の設定
アクションの定義
セクションⅢ – 実施、モニタリング及び評価
アクションプランを開発する
中期計画と長期計画
ロジスティクス、訓練及びファシリテーション
実施計画を監視する
実施計画の遂行
ステークホルダーからのフィードバック
データをオープンにするには
データセットを選択する
需要駆動型アプローチ
供給駆動型アプローチ
人々に尋ねる
コスト対用法と利益の分析
オープンライセンスを適用する (法的なオープンネス)
データを利用可能にする (技術的なオープンネス)
オンラインの手法
データを発見可能にする
データポータルとカタログ
Linked open data
結果とインパクトを評価する
パフォーマンス指標の確立
セクションⅣ – オープンデータ・エコシステムを持続する
コミュニケーションとアウトリーチ
オープンガバメント・データの利用法をプロモートする
再利用コミュニティ参画の持続
より広くアウトリーチするためのソーシャル・ネットワーキング・サービスの利用
ステークホルダーとのコミュニケーションとフィードバックループ
セクションⅤ – 附属書
I. オープンガバメント・データ・レディネス評価
II. データプラットフォーム
III. データとファイルの形式
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参考図書