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クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例5 ForestWatchers.net

2012年12月15日 in Special

森林の減少は二酸化炭素の吸収源、あるいは動植物の生息域といった世界的なエコシステムに対する脅威となっており、中でも世界最大の熱帯林アマゾンでは違法な森林伐採は大きな問題だ。
しかし、対象エリアはあまりに広く、従来型の保護政策だけではその膨大なタスクを遂行しきれなくなってきている。

そこでForestWatchers.net は、宇宙衛星から撮影された高解像度の画像のうち、フリーで提供されているもの(オープンデータ!)や寄贈されたものを利用してボランティアによるコンピューティングに基づく集約的なパラダイムを提唱している。

具体的なツールとしてはシリーズ最初にご紹介したPyBossa が使われている。

マイクロタスキングにおいては作業を誰もが簡単にできる手順に落としこむための事前準備が重要だ。このため、PyBossaで構築されたDeforestedAreas アプリケーションでは事前準備としてコンピュータ処理で自然林(オレンジ)、保護区(ピンク)、水域(青)を自動認識してそれぞれ色を付けて人間の目で見た時に状況を把握しやすくしてある。

こういった準備がなされた上で、ボランティアはDeforestedAreas アプリケーションを選んでタスクを引き受ける。

たいていの画像はぼんやりした森林域に見えるので「I do not see deforestation, give me another one!」をクリックしてどんどん次の画像に進めて行くが、中には上記の画像のように緑の中に褐色の地面がむきだしになっている箇所がある。これが森林伐採の跡だ。

「Polygon」をクリックしてこの肌色のエリアを囲む。最後にダブルクリックすればポリゴン(多角形の面)での描画は終了だ。予め色のついたエリアはそのままでは画像がよく見えないのでマップ右上のレイヤーボタンをクリックして、色付きのレイヤーを非表示にすることもできる。これら以外にも、判然としないが、注意が要りそうな場所があれば「Point」をクリックして印を付ける。最後に「Save these the polygons or points」で保存して一丁上がり。

素人目には状況が判然としないものも多いが、何せ数が多いので分からないものはどんどんスキップすれば良い。小さな作業だが、大きな成果につながる可能性を秘めている。森林保全に興味のある方は具体的なアクションとして試してみてはいかがだろうか。

参考: クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例1 PyBossa/Crowdcrafting

  • クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例2 UN-ASIGN
  • クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例4 OSM Tasking Manager
  • クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例4 OSM Tasking Manager

    2012年12月10日 in Special

    内輪のツールで恐縮だが、今回はHOT(Humanitarian OpenStreetMap Team:人道支援OpenStreetMap チーム) が使っているOSM Tasking Manager を紹介させて頂く。

    大規模災害・政治的な迫害・疫病など、国連や赤十字などが緊急支援を始めるような事象が起きた場合、OpenStreetMap で該当エリアの地図を描くことで支援作業の手助けをできることが多い。緊急支援が必要な場所は、マップが整備されていないことが多いのだ。
    そんな時、HOTチームではマッピング(地図描き)の作業をマッパー(地図の描き手)が作業しやすい適度な大きさに分割するOSM Tasking Manager というサイトを立ち上げる。

    実際の例をご紹介しよう。
    HOTチームは現在イギリスの「国境なき医師団」とコンタクトを取っており、彼らから見て優先度の高い地域からマッピングを進めようとしている。この中でも優先度が高い地域としてコンゴ民主共和国が挙げられた。コンゴでは内乱と治安悪化が続き、国内難民が発生しており、多方面での支援が必要な状況下にある。これを受けて下記2箇所のマッピングタスクがつい最近アクティベートされた。

    1.ゴーマ(Goma)の西側
    2.ブカブ(Bukavu)付近

    上図はGoma西側の例だが、地図が適当な大きさの矩形で区切られている。白(透明)は未処理、赤は処理済、緑は処理済かつ検証済、白抜きのオレンジは現在処理中を表す。マッパーは未処理の矩形の中から好きなものを選んでマッピングし、終わったら処理済にして次の矩形に取り掛かる。まさに「マイクロタスキング」である。(尚、このサイトで作業に参加するにはOpenStreetMap で予めアカウントを作成しておく必要がある)

    下図は選んだエリアを編集する画面だ。flash アプリなのでPCとブラウザさえあればどこでも編集できる。OpenStreetMap ではマイクロソフト社のBing 衛星画像を地図トレース用として利用する許可を受けているので、それをなぞり描きすることが主な作業となる。
    ひとつの矩形は概ね1時間程度でマッピングできるサイズになっているため、自分の使える時間で、1日にひとつかふたつこなしていく、といった作業となる。OpenStreetMap の登録ユーザ数は世界で年内にも100万人になろうかというところだ。ひとりあたりの作業はごくわずかであっても、参加者が多ければそのパワーは計り知れないものになる。

    出典: OSM.org

    こういった作業を経験しておくと、いざコトがあった時にスムーズな対応が可能だ。日本にはウェブで使えるマップがいろいろあるために、改めてマッピングする必要性は一見無さそうだが、それは都市部の話で、山間部や離島では使えるマップが紙でしか無いといったケースがよくあるのだ。

    クラウドソーシングを地で行くOpenStreetMap の使い方はあなた次第だ。こういった活動に興味ある方はぜひマッピングに参加してみて欲しい。

    またOSM Tasking Managerはオープンソースとしてgithubで公開されているので、このソースをベースに別のアプリケーションを開発することもできる。地図を区切って、何らかの作業を分割するような使い方であればいろいろ応用できると思われる。興味ある方はその応用にもトライしてみて頂きたい。

    クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例3 FloodAlerts

    2012年12月8日 in Special

    FloodAlerts は視覚化の得意な企業Shoothill によって開発された洪水のアラート情報を配信するサービスだ。元データはイギリスの環境局が15分おきに提供している洪水に関するオープンデータである。

    まずは元データを見て行こう。元は環境局が提供しているFloodline Warnings Direct というプッシュ型のサービスによるものだ。洪水警報が欲しい人は電話、携帯、メール、SMSテキストメッセージ、FAX、どれでも好きな手段で受け取ることができる。

    登録手続きに進むと、まず自宅用と職場用それぞれで住所、電話番号、メールアドレスなどを登録する。イギリスに住所が無い者にとってはその先の手続は不明だが、住所からエリアを探すため、やや操作がわかりづらい印象だ。

    そこでFloodAlerts だ。
    こちらは場所の名前を入力してマップを検索したり、グリグリと動かすことで直感的に操作できる。

    対象エリアに移動したら、上図のように半径を指定してできあがり。アラートはメールやフェイスブックで受け取れるようになっている。

    自宅や職場で過去に洪水があったようなところでは、このような情報は貴重なものだ。安全面もさることながら、個人の財産や企業の事業継続性を守る上でも有効だ。

    このサービス自体は無料で提供されるが、企業ユースにはより付加価値を付けた別のソリューションを有料で提供するというビジネスモデルだ。裏の仕組みが見えていないが、環境局にとって負荷分散の役割も果たしているものと思われる。オープンデータと利用者の間に立って、操作しやすいインタフェースを提供するという、まさにお手本のようなサービスといえよう。

    参考:Live UK flood warning map uses Environment Agency data

    クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例2 UN-ASIGN

    2012年12月8日 in Special

    フィリピンを襲った台風24号のさなか12月5日にUNITAR(国連訓練調査研究所)よりCrisis Mappers のメーリングリストにUN-ASIGN と呼ばれるアプリが役に立つかもしれない、との示唆があった。
    これはUNITAR/UNOSAT からの委託を受けてノルウェーの企業AnsuR が開発したクラウドソーシング用のスマートフォン向けアプリで、下図のように、去年のタイ洪水の折りに実際に使われたものだ。

    iPhone用Android用があり、いずれも無料でリリースされているのでぜひお試し頂きたい。お試しの際はプリファレンス(設定)で「テストモード」にすると良い。

    このアプリは位置情報付きの写真とテキストを大規模被災エリアから国連の下部組織であるUNITAR/UNOSAT宛に送るためのものだ。UNITAR/UNOSAT では全ての投稿をマップ上で見られるが、投稿者自身も自分の投稿分については同じマップ上で見ることができる。

    被災地ではネットワーク環境が混乱していることが多いという点を考慮して、貧弱な通信環境であっても使えるような工夫が凝らされている点が特徴だ。
    撮影された写真は大幅に圧縮して送信され、クリアな画質が必要な場合は、SMS(ショートメッセージ)を通じて自動収集するためのメッセージが届く仕組みだ。このため、アカウント作成画面では電話番号を入力するようになっている。
    また、位置情報の取得については、GPS衛星が捕捉しずらい環境では3GやWi-fiの基地局などの位置を利用して取得する、といった多段階の手順となっている。

    撮影された写真には自動的に撮影時刻と位置情報が付加され(スマートフォン側で位置情報取得を許可する必要がある)、テキストで説明を付けて送信する。

    UNITAR/UNOSAT は投稿された写真・テキストと衛星画像を比較しながら、被害の度合いなどを評価する。

    出典: ASIGN Online

    さらにいくつかの写真・テキストは専門家によって別の、より専門的なオンライン地図ポータル上に表示・公開される、といった流れとなっている。

    収集された情報は非営利目的の再利用は許可されることになっているので、収集結果を提供してもらい、独自のマップ上にマッシュアップ表示することは可能であろう。

    尚、このアプリにはプロフェッショナル版が別にあり、そちらではより詳細な情報も送信できる模様だ。(Android版のチュートリアルはこちら)

    クライシスレスポンス用アプリ・サービス事例1 PyBossa/Crowdcrafting

    2012年12月8日 in Special

    出典: http://newsinfo.inquirer.net/files/2012/12/banana-pablo.jpg

    オープンデータの活用分野のひとつに災害時対策が挙げられる。災害発生の前後で最も信頼出来る情報はやはり政府・自治体から発せられるものだ。地震予報・速報、津波警報、台風の進路、大雨警報などは大局的な判断には欠かせない。臨機応変な対応が必要な災害時にあっては政府・自治体のデータはできる限り公開され、誰でも利用できる状態であるべきだ。

    ところが、想定外の事象が起きたり、必要な情報が身近なことになってくると、大本営発表型では手に入らない情報が増えてくる。事件は会議室で起きている訳ではない。災害の現場にいるのは多くは一般市民であり、現場の情報は実は市民自身がいちばん得やすい状況にある。もちろん危険な現場に飛び込めと言っているわけではないが、目の前で起きていることをいちはやくキャッチできるのは市民自身だ。

    災害時の対応には政府・自治体による「公助」、地域コミュニティなどによる「共助」、自分自身による「自助」の3つのレイヤーが連携することが必要とされるが、オープンデータは3つの中でも「共助」のレイヤーでの活用が最も期待される。
    このシリーズではオープンデータと連携して、「共助」のレイヤーを支援するために開発されたアプリやウェブサービスを紹介して行きたい。こういったアプリを日本で開発する際に、多少とも参考になれば幸いである。

    「共助」については理屈としては分かりやすいのだが、地域社会の崩壊が言われて久しい現代社会では、実際問題としてなかなか難しい面がある。その根本解決に向けた議論は専門家に譲ることにして、バラバラに切り離された個人であっても力を合せてできることはないだろうか。

    生活様式や行動パターンが異なる群衆(クラウド)の力を借りて、誰もが目的に賛同できるような活動を共同で行う概念として「クラウドソーシング」がある。その群衆に作業を依頼する手法のひとつが「マイクロタスキング」といわれるもので、要するに膨大な作業をみんなでよってたかってやりとげるために小さな単純作業の塊に切り出すものだ。例えば就寝前の30分間だけ人助けの作業をやる、そんなイメージである。インターネットを使った作業であれば、世界規模での共同作業を行うことが可能となる。そうすると、日本にいる自分が寝ている間にもアジア、中東、ヨーロッパ、アメリカと24時間体制で作業は引き継がれていく。まさに世界市民としてのつながりを肌で感じることができる瞬間だ。

    12月4日から5日にかけてフィリピンを横断した台風24号(Pablo/BOPHA)でいちはやく対応したのはgoogle のクライシスレスポンスチームだ。12月4日時点でオープンデータのマッシュアップサイトTyphoon Pablo (Bopha)が立ち上がった。
    台風の進路、避難所の位置、雨雲の画像など各種オープンデータをマップ上に重ね表示するものだ。被害状況がわかりはじめた翌12月5日には尋ね人サイトであるPerson Finder も立ち上がった。

    これらの支援活動の中ではいくつかの注目すべきアプリが使われたが、今回ご紹介したいのがPyBossa というオープンソースで構築された「Crowdcrafting」というサイトである。PyBossa は、それ自身がアプリケーションというよりも開発プラットフォームだ。そのプラットフォーム上で、ハッカーが自分の目的に合ったアプリケーションをスニペットと呼ばれるJavascript とHTML から成る小さなコードの固まりを書いて組み上げる。既存のテンプレートを利用することもできる。

    このCrowdcrafting がフィリピンの台風向けのアプリケーションPhilippines Typhoon を実装し、ボランティアを募ってツイートの分類作業を行った。これは台風通過直後の12月5日にOCHA (国際連合人道問題調整事務所)より被災状況を示す写真やビデオの収集依頼を受けての活動だ。

    このPhilippines Typhoon アプリケーションでは、12月4日~5日の膨大なツイートの中から今回の台風に関連するハッシュタグ付きのものを予め収集し、リツイートやURL を含まないツイートは除外してあるので、対象件数はかなり絞り込まれている。

    やり方は簡単だ。ログインせずとも操作はできるが、情報の信頼性向上のためにもアカウントを作って操作することをお勧めする。
    「Start contributing now!」をクリックして作業開始。まず、上段に何らかのURLを含んだツイートが現れる。

    そのURLをクリックして現れたものを確認し、

    出典 http://twitpic.com/bj4tdi

    それが「画像」「ビデオ」「何らかの位置情報」「その他」のどれに該当するか分類し、最後にそのURLを貼り付けて「Submit classification」ボタンで登録、

    ひとつの作業はこれだけの単純なものだ。アカウントを作成してログインすると1700件ほどのツイートが割り当てられるので、この作業を自分が使える時間の枠内で淡々と繰り返す。飽きたり眠くなったら中断してまた明日にすれば良い。

    もっとも重要なのは個人が自分のスマホで撮影した写真やビデオだ。日時や位置情報が付加されていればそのまま地図上にマッピングでき、必要な支援を検討することができる。

    ここまでの流れを振り返ると、市民が収集・発信した大量データの中から災害対策に有用な情報を抽出するという作業を、効果的な前処理によるフィルタリングと、タスクの単純作業への分割と、実作業要員の大量・短時間確保と作業分担などをうまく組み合わせて短時間で実現した好例と言えるであろう。

    OCHAからの依頼は12月4日~5日のツイートをおおよそ12月6日いっぱいで分類して欲しいというタイトなものであったが、Standby Task ForceHumanity Road といった人道支援組織から成るDigital Humanitarians Network がみごとにこの依頼に応えた形だ。下記はその結果、及び他の手法で収集したものと併せて地図上に可視化したものである。

    出典: iRevolution / Patric Meiyer

    詳細な評価はまだこれからであるが、PyBossa を使ったツイートからの情報収集はクラウドソーシングとマイクロタスキングのひとつのモデルとなる可能性がある。Philippines Typhoon にはまだ多数の未分類ツイートが残っている。緊急支援に向けた分析はいったん終わっているが、今後に向けて何らかの役に立つ可能性がある。この機にぜひその手軽さを体験して頂き、次に備えて頂きたい。ハッカーのあなたにはぜひこのプラットフォームで何が作れるか、考えてみて頂きたい。

    素人のボランティアが発信・収集した情報はその精度や信憑性が問われることがあるが、このようにして集められたデータには、日付時刻や位置情報が付いた写真やビデオが付加されているところがポイントである。テキストだけの情報であれば悪意や悪ふざけで虚偽の情報を書くことが容易だ。写真の加工もできない訳ではないが、数を絞り込んだ上で専門家の目を通せばそういったものは見抜けるであろう。例外的なことを懸念するよりも、市民自らが「共助」に参加する意義ははるかに大きい。スマートフォンを常時持ち歩いている人や自宅などでよくインターネットを使っている方々には実は社会を助けるチカラがあるのだ。

    ちなみにこのPyBossa には、Open Knowledge Foundation の共同創設者のひとり、Rufus Pollock も開発者のひとりとして参加している。

    —-
    12/9追記: 12月8日付で続報記事How the UN Used Social Media in Response to Typhoon Pablo (Updated) が投稿された。結果はOCHA の公式レポートに掲載され、フィリピン政府でも利用されているとのこと。クリーニングされた情報はgoogle crisis response のマップにも「Crowdsourced Photos and Videos」として追加されている。
    参考:Citizen Cyberscience helps assess damage in Typhoon stricken Philippines (UNITAR)