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FixMyStreetでガバメント2.0を始めよう!

2013年4月1日 in Special

FixMyStreet Japan / CC BY

FixMyStreet Japan / CC BY

FixMyStreetとは

英国のmySocietyが開発したアプリケーションで、道路施設の破損や不法投棄などに気づいた市民が報告し、行政はそれを見て必要に応じた対応を行う仕組みです。ガバメント2.0あるいはオープンガバメントを実現するツールのひとつに位置付けられます。日本でもmySociety 版に触発されたFixMyStreet Japan がWeb版、Android版、iOS版ともに札幌のダッピスタジオによってフルスクラッチで開発され、現在無料で誰でも使えるようになっています。

ただし利用を開始するにあたっては、予め市民と行政の双方でその目的や趣旨を共有しておく必要があります。

従来型の市民VS行政

まず市民の側から見ると、従来のやり方であれば自宅前に粗大ごみが放置されているから早く何とかして欲しいとか、熊蜂が巣を作っているから駆除して欲しいとか、主に自分の生活環境に不都合がある時に苦情処理依頼という形で行政に対処を要請します。
こういったやり方で素早く対処してもらえると市民側の満足度は上がりますが、あまりにもこういったサービスを受けるのが当然の権利という意識が強くなると、例えばビニール傘が落ちていて危ないから早く持って行って欲しいとか、やろうと思えば自分でも簡単にできることまで、税金を払っているのだからと要請の内容がエスカレートする場合があります。
これを費用で見れば、自分で拾って処分した場合は限りなくゼロですが、行政職員が自ら、あるいは業者に依頼して処分するとコストが掛かります。通常、労働者を雇用する費用はその給与の約2倍といわれます。仮に月給が40万円の人であれば月の勤務時間が180時間平均だとして時間当たりのコストは4400円ほど。ビニール傘を拾いに行って処分するのに2時間掛かったとすれば処理料は8800円ということになります。この8800円は税金から支払われるわけです。

一方行政側から見れば、これは苦情処理というやや気の重い仕事です。千差万別の内容に応じて都度担当部署を判断する必要があります。場合によってはいわゆるたらいまわしになることもあるでしょう。内容によっては法的な監督責任を問われることがあるので気の抜けない仕事です。そのため、言われてから動き始めるのではなく、定期的に街を見回り、問題が無いか予防的に点検するようになります。できるだけ漏れなく点検しようとすればするほど費用が嵩む構造です。さらに、この予防点検が効果を発揮すればするほどその状態が当たり前になり、市民からの通報はあたかもそれを事前に発見できなかった行政のミスのようになってしまいます。
これでは行政側もピリピリするばかりでなかなか士気が上がりません。日本全体で高齢化、少子化が進み、税収が減少する中、高コストのサービスを続けることが難しくなっている状況もあります。

FixMyStreetで何が起こるか

それではFixMyStreet を使えば従来の市民と行政の関係はどのように変わるでしょうか。

市民側は自宅周辺だけでなく、街全体を歩くことにより、街の抱える課題をまず視覚的に理解します。気づいた課題のうち、自分にとってだけでなく、社会にとっても解決したほうが良いだろうというものを自分なりの考えで取捨選択してFixMyStreetを使って通報します。(実際は、取捨選択の段階ではひとりで考えるのではなく、後述の街歩きイベントなどで、複数の立場の人々と意見交換する方がより良い結果が生まれます。)

通報内容は行政側の窓口でいったん検討して優先度を付けた上で対応が行われます。行政だけでなく、その投稿を見た別の市民が例えば「蜂の巣の扱いは慣れているので自分が駆除しようか」と言ってくれるかもしれません。自分の通報した内容が必要性を認められて適切に対応されると、通報者には小さな成功体験が芽生えます。これを積み重ねるうちに、たとえ内容によっては対応されないものがあったとしても、誰もが見られるウェブサイトで公明正大に行われているので、行政側の立場や考え方も分かってきます。行政の意思決定や予算の中身が分かってくると、社会の中の自分という視点を得ることができ、例えば自分の家計や自宅周辺という部分最適の視点であったものが、より大きな町内会、市町村、県、国といったそれぞれのレベルでの全体最適の視点を持てるようになります。
また、社会から孤立しかけている人が問題の解決のために自分の時間やスキルを提供する機会があれば、社会とのつながりを取り戻すきっかけになるかもしれません。

行政側は市民からの通報への対応を真摯に続けるうちに、クレームが減り始めることに気付きます。気付きを得た市民は行政に近い視点で課題を捉えるようになり、無茶な要求が減って行政の適切な対応に納得したり感謝するようになります。そうすると行政側にも仕事を認められたという小さな成功体験が生まれます。

市民と行政双方の成功体験が噛みあってプラスのフィードバックループが生まれた時、街は変わって行きます。市民は自らのアクションで街の経営に寄与したり変えることができるのです。行政の側も誇りと喜びをもって仕事を遂行することができます。

しかしながらその実現には市民と行政双方の意識や関係性の切替を伴うものであるため、ある日突然できるものではありません。FixMyStreet というツールはそのきっかけを作ることはできますが、最終的に市民が街の意思決定や予算策定に関わるようになるには単発のイベントだけでなく、中長期的な計画に基づく継続的な活動が必要と言われています。(詳細は前の記事「ガバメント2.0を理解する国連のツールキット-OGDCE Toolkit」を参照してください。)

事前準備

最低限、通報する市民とそれを受ける行政側でより良い街づくりに共同で取り組む、という共通認識がまず必要です。さらにいえば課題を適切に解決するには議員、町内会、商工会、学校、などできるだけ多くのステークホルダーにも、できるだけ初期段階から参加してもらうことが必要です。
共通認識を得る手段のひとつとして、街歩きイベントを開催します。

街歩きイベントの開催

FixMyStreet の通報(投稿)はPCを使ってWebブラウザからでも可能ですが、スマートフォンを片手に歩きながら写真付きで投稿することもできます。スマートフォンを持っている人は事前に専用アプリをインストールします。持っていない人は歩く範囲の紙地図を予め用意して、そこに投稿対象の位置や内容をメモします。デジカメなどで撮った写真も、状況の把握に不可欠です。

3~4名をひとグループとして担当エリアを決め、1~2時間かけてそのエリアを歩きます。
歩きながら道路設備の破損など、何らかの対応が必要と思われる街の課題を探して歩きます。見つけたものはスマートフォンでその場で投稿したり、紙地図にメモしたりして記録します。

歩き終わったら、インターネット接続があり、PCの使える会議室などに移動します。プロジェクタもあると便利です。紙地図にメモした内容をデジカメで撮影した写真とともにWebブラウザから投稿します。

記事の投稿が終わったら、ひとつずつ投稿者による状況説明を受けて、その解決策をみんなで話し合います。この時の、立場の違いによる問題点の捉え方の違いに気付くことが重要です。全ての問題が行政の責任で処置されるべきこととは限りません。市民を含めた地域の資源を最大限活用して解決策を考えることが必要です。

問題の例

右の写真は街にゴミが多く見られるという投稿に添付された例です。

FixMyStreet Japan / CC BY

FixMyStreet Japan / CC BY

これに対して参加者からは以下のような意見が出ました。

・街歩き参加者の子供さんが、ずっとあるいている間にゴミを拾ってくれた。
・繁華街の裏通りは結構ちらかっていた。
・ゴミは拾っていただけると助かるけど、ゴミを捨てようとする人が減っていくように街がなっていくといい。
・ゴミがゴミを呼ぶ。落書きが落書きを呼ぶ。常に綺麗にしておくというのが捨てさせない防止策。
・ゴミの発生源があるはず。例えばコンビニの前でその場で食べたり飲んだりしてしまうということはあるかもしれない。
・ゴミ箱の位置が可視化されているといい。郵便ポストのマップのように。
・ゴミ箱がないから捨ててしまうということがある。結局コンビニに捨てる。
・公共のゴミ箱は設置しない方針がある。ゴミは持って帰ってもらおうという趣旨。
・方針としては理解できるがゴミが排出されている現実がある。どうしたら良いか、考える余地がありそうに感じる。
・市街地のコンビニは(ゴミ箱を)外でなく、店内に設置するようになってきている。
・街から公衆電話がなくなってきているが、コンビニの前には公衆電話がおいてある。スマホの電源がなくなると公衆電話を使う。コンビニは人の集まりやすい場所になっている。

ゴミひとつ取っても様々な社会背景や解決策があることに気付きます。
あなたはどのような解決策が良いと思いますか?

このFixMyStreet Japan は誰でも自由に使えますが、使い方や進め方などご質問やご相談などありましたらこちらの下部のフォームでお気軽にお問い合わせください。

『ベンチを直す人は出せないが、ペンキならある』、FixMyStreetでわかったこと

2013年2月12日 in Special

2月11日千葉市にて、FixMyStreetを使った『こどもNo.1度チェック』というイベントを開催しました。これはInternational Open Data Day in Japanの一環として23日に千葉市で開催予定の『Chiba Open Data Day 2013 – こどもNo.1千葉 –』のプレイベントとして、Chiba Open Data Day 2013実行委員会が開催したものです。当日は北風が徐々に強まる寒い日にもかかわらず、16名の方に参加していただくことができました。参加者は3つのグループに分かれ、千葉市を熟知した市民リーダーと一緒に街歩きをし、こどもにとって危険な場所や、改善した方が良いところがないかをチェックしました。

この街歩き&レポートイベントでは、札幌のダッピスタジオが開発したFixMyStreet Japanを活用しました。FixMyStreetと言えば、あのUKのmySocietyが有名ですが、今回利用したのはmySociety版ではなく、ダッピスタジオがmySocietyの承諾を得て独自に開発した日本版です。スマートフォンにアプリをインストールするだけで準備OK。あとは気になる箇所をカメラでパチリ、位置はGPSで自動的に取得されます。タイトルを書き、分類を選び、どこが問題なのかを簡単に書いて、その場でレポートをアップして1件完成。今回は3チーム、総勢16名(うち、こども3名)が1時間半ほど歩いて、60件のレポートをアップしました

街歩きの後は、参加者全員でレポートを見ながら、報告者がなぜそこをレポートしたのかについて説明し、それについてどんな改善方法があるのかなどを自由に話し合いました。市民の皆さんが「これは行政の仕事だろう」と思っていたのが、実はそうではなかったりするものもあり、とても有意義でした。

その中でも、私が一番「コレは!」と思ったのは、あるベンチについて話をしている時です。そのベンチは木製で、作られてからかなり年月が経っているのか、表面がひどく傷んでいました。さらに横木が一本外れてしまっていて、こどもがそこに足を挟んでしまう恐れもありました。「ベンチを取り換えたり全体を修理すると数十万円かかる」、「横木を修理するとなると素人では難しい」、「傷みがひどすぎて修理するのは無理だろう」、「もっと早くメンテナンスしていたら良かったのに」、等の話が次々と出る中、千葉市役所に勤めているある参加者の方が

『ベンチを直す人は出せないが、ペンキならある』

と発言しました。市役所が常にベンチをメンテナンスすることは難しいが、もしペンキの塗り替えなどを市民がやってくれるのなら、それに必要なペンキは提供できるということです。これは些細なことに聞えるかもしれませんが、従来の「サービス提供者vsサービス消費者」という関係を越える非常に画期的な出来事です。

今回の壊れたベンチ問題についての典型的なシナリオは次のようになります。

  • 市民:ベンチをメンテナンスするのは市役所の仕事、税金も払っているんだからきちんとやって欲しい
  • 市役所:市民のためにメンテナンスしたいのは山々だが、予算にも限りがあり、全部をやるのは到底不可能
  • 市民:市役所はきちんと仕事をしてくれない
  • 市役所:市民は役所の仕事をわかってくれない

これではいくら市民が問題点を指摘しても、進展する望みはありません。市民も市役所も、お互いにフラストレーションが溜まるだけです。どうしてそうなってしまうのかというと、「完全にやる(やらせる)か、まったくやらない(やらせない)か」という考え方にとらわれすぎているためです。市民は「税金をはらっているのだから市役所で全部やって欲しい」、市役所は「やるなら全責任をもって自分たちでやらなければならない」と考えています。この壁を壊して、お互いにオープンになることで、「わが街、千葉」のためにできることは大きく拡がります

FixMyStreetは市民が行政に対して問題点を指摘するツールではありません。「わが街」のために市民と行政が一緒になって考えるテーマやきっかけを提供するツールです。FixMyStreetで問題箇所をレポートし、後は行政にお願いという使い方は正しくありません。FixMyStreetのレポートをもとに市民や行政が話し合い、お互いに協力できるところは協力し、妥協できるところは妥協していくという、話し合いのプロセスこそが最も重要です。今回の千葉市でのプレイベントは、そのことの重要性を改めて思い出させてくれました。

寒い中、参加していただいた皆様、本当にありがとうございました。

23日も引き続き千葉市でFixMyStreetを活用したイベントを開催しますので、ご興味のある方は是非ご参加ください。