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G8再考(3)先進国に追いつくか、途上国にとどまるか、決断を迫られる日本

2013年8月19日 in Special

世界的な非営利団体であるWorld Wide Web Foundation(WWWF)は、2012年9月18日に世界各国のオープンデータ進捗度Open Data Indexを発表しました。WWWFは以前から、インターネットの接続状況、インフラの整備具合などを評価し指標化したWeb Indexを発表しており、Web Indexの評価項目の中からオープンデータに関する14の評価指標だけを抜き出しOpen Data Indexとして公開しました。G8各国のOpen Data Indexは、米1位、英4位、加8位、伊13位、日本19位、仏23位、露25位、独36位となっています。

またOpen Knowledge Foundationは、オープンデータ度を評価する別の指標としてOpen Data Censusを発表しています。Open Data Censusは、政府の透明性向上や市民サービス向上のために必要な10分野のデータ公開がどの程度進んでいるかを測定したものです。Open Data Census は現在評価中で全体ランキングは未発表であるが、G8に限定した順位だけを見ると、米、英、仏、日本、加、独、伊、露の順となっています。

Open Data IndexおよびOpen Data Censusの両評価結果から、英米がオープンデータを世界的にリードしていることは明らかです。一方、日本はいずれの指標においてもG8においては中位にとどっており、オープンデータの世界標準に照らし合わせると、日本はオープンデータ途上国とも言える状態です。

日本政府はG8直前の2013年5月24日、「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ(案)」及び「二次利用の促進のための府省のデータ公開に関する基本的考え方(ガイドライン)(案)」を公開し、パブリックコメントの募集を始めました

日本政府が「電子行政オープンデータ推進のためのロードマップ(案)」において、公開を優先するとした重点分野は「白書、防災・減災情報、地理空間情報、人の移動に関する情報、予算・決算・調達情報」となっています。G8で合意したデータカテゴリと比べると、「法人、犯罪と司法、地球観測、教育、エネルギーと環境、世界的な開発、健康、科学と研究、社会的流動性と福祉、輸送と社会基盤」など、多くのデータカテゴリが含まれていません。現状はまだ案レベルでこれから改善の可能性は残されていますが、日本政府のオープンデータ政策はデータ公開のカテゴリだけを見ても、世界標準から大きくかけ離れています。

日本政府はG8での合意に従ってデータ公開や人材の育成やビジネス創出を積極的に進め、先行する英米を追いかける積極的な政策に転換するのか、それとも現状のガイドラインで示すように、できるところからデータを順次公開していくというこれまで通りの消極的な政策を続けるのか、大きな決断を迫られています。

オープンデータ政策の遅れは、オープンデータビジネスの遅れに直結します。それは国内だけの問題ではありません。もし日本政府が早期にオープンデータ政策をG8で合意したような世界標準に合わせられなければ、オープンデータビジネスを担う人材の育成が遅れ、日本におけるオープンデータビジネス市場は育たず、世界のオープンデータビジネス市場に参入するチャンスも失います。日本の国際的な競争力は間違いなく低下するでしょう。豊富な天然資源に恵まれながら極度な貧困から脱することのできない途上国と同様の運命をたどりかねません。

2011年時点の英米の状況と2013年の英米の状況を比べてみればわかり通り、2年間で両国はオープンデータに関して政策的にもビジネス的にも著しく進展しました。これからの2年間、英米はさらにスピードアップすることは間違いありません。2013年時点の英米のレベルに日本が2015年に追い付くようなロードマップでは、いつまでたっても追いつけません。それどころか、さらに遅れてしまいます。難しいことではありますが、官民一体となって2015年末の世界最先端を予測し、あるいは自ら描き、英米にどうやってキャッチアップし、追い抜くのか、具体的な政策立案と迅速な実行が今こそ必要です。

G8再考(2)オープンデータ先進国、英米の思惑

2013年8月16日 in Special

G8首脳コミュニケに別添された技術的文書Technical Annexには、G8各国が公開すべき「価値の高いデータ」が具体的に指定されており、G8各国は以下のデータを優先して開示しなければならないとされています。

データカテゴリやデータセットの例を見ると、なるほどと納得できる点も多々あります。しかしどんなデータを公開するのかは、基本的に各国政府の自由裁量に委ねるという選択肢もあったはずです。

もし、仮にTechnical Annexにおいてデータセットを明記するにしても、今回のG8ではオープンデータはトップアジェンダではなく、透明性の中の3つのサブテーマの1つにすぎないのですから、国際関係の透明性に関わるデータを優先して公開するということであれば納得がいきます。しかし、Technical Annexで指定されているのは透明性の範囲をはるかに越えた多様なデータセットです。なぜわざわざG8でこのような具体的なレベルまで踏み込んだのか、ここで少し考えてみたいと思います。

G8で合意された公開すべき「価値の高いデータ」には、オープンデータ先進国である英国の思惑が色濃く反映されています。例えば上記のデータと、英キャメロン首相が2010年から2011年にかけて書簡で政府機関に公開を指示したデータ とを比べてみると、多くの項目に重なりがあることは前にも指摘した通りです。G8ホスト国のトップでオープンデータ推進に極めて積極的なキャメロン首相が、オープンデータを推進するOpen Data InstituteOpen Knowledge Foundation などの協力を得て、オープンデータ憲章の策定にリーダーシップを発揮した結果だと思われます。

一方、米国はオバマ大統領が2009年にOpen Government Directive を発行したのを皮切りに、これまで政府機関に対してさまざまな種類のデータ公開を求めてきました。やはりその大部分もG8のオープンデータ憲章に反映されています。つまり、オープンデータ先進国の英米はすでに実施済み、あるいは自国にて実施中のオープンデータ政策を改めてオープンデータ憲章として今回のG8に提案し、他国から国際合意を取り付けたとも考えられます。

G8首脳コミュニケにわざわざ技術的文書Technical Annexを添付して公開すべきデータを明記したのは、英米がこれらのデータを自国にとって経済的価値が高いデータであるとみなしているからです。オープンデータ先進国である英米は、ビジネス化する上で重要な経済的価値の高いデータを世界標準として定めることで、国内のオープンデータビジネス市場のみならず、G8をはじめとする海外のオープンデータビジネス市場への参入をも視野に入れています

例えば2013年6月13日、台湾のQuanta Computer(広達電脳)は英国のOpen Data Institute(ODI)と業務提携を結び、ODIのメンバーとなりました。Quanta ComputerはノートPCの受託生産大手企業で、今後はODIとクラウドコンピューティング分野やオープンデータの推進に協力していきます。ODIは公設民営のような組織で、運営については一般の営利企業とほとんど変わりません。ODIのCEOガービン・スタークスはスタートアップ育成のプロ中のプロで、実績も豊富です。

この提携に関して、British Trade and Cultural Office (英国貿易文化弁事処)のクリス・ウッド所長は2013年6月19日の記者会見において、「今回の提携を通じてオープンデータの最新動向が台湾に伝わり、産業のイノベーションにつながるだろう」と指摘し(NAA)、「インフラ構築、鉄道と地下鉄、サービス産業、情報と通信技術、クリエイティブ産業において、英国と台湾はさらなる協働を推進する」と共に、英企業の台湾投資を積極的に支援していく意向を表明しました(BBC)。

英国がオープンデータを英企業の海外進出にとって非常に重要な要素と位置付け、国家戦略として推進していることは明らかです。今回のG8におけるオープンンデータ憲章の合意は、そのための周到な地ならしと見ることもできます。世界でオープンデータ運動が高まり、公的機関をはじめとするさまざまな機関が経済的な価値の高いデータを公開しはじめたときに、どうしたら世界のビジネスにおいて主導権を握ることができるのか、オープンデータ先進国の英米はそこまで視野に入れて行動しています。

 

参考:

  • UK wants more trade, energy, infrastructure ties with Taiwan – diplomat(BBC)
  • 広達電脳、英ODIとオープンデータで提携(NAA)

 

G8再考(1)オープンデータ憲章

2013年8月15日 in Special

2013年6月17日から18日にかけて、イギリス北アイルランドのロック・アーンにてG8サミットが開催されました。日本ではほとんど報道されていませんが、今回のG8では透明性が3つの主要課題の1つに設定され、その中のサブテーマの1つとしてオープンデータに関する議論が行われました。オープンデータとは、主に公的機関が保有するデータを公開することによって、政府の透明性向上や市民参画の促進、さらには新ビジネスの創造を目的とする世界的な運動です。

今回のG8サミットが日本にとってどんな意味を持ち、日本はどう対応しなければならいのかを、G8を振り返りながらもう一度考えてみたいと思います。

G8最終日に発表された首脳コミュニケでは、オープンデータ憲章をはじめとするオープンデータ推進に関する数々の合意事項が明記されました。G8で合意したオープンデータ憲章の概要は次の通りです。

  • ž   原則としてデータを公開すること
  • ž   高品質なデータをタイムリーに提供すること
  • ž   できるだけ多くのデータを、できるだけ多様かつオープンな形式で公開すること
  • ž   ガバナンス改善のためにデータや基準、プロセスに関する透明性を確保すること
  • ž   データ公開によって次世代イノベーターを育成すること

日本政府はG8の合意に基づき、2013年末までにオープンデータ憲章を実現するための行動計画を策定しなければなりません。さらに日本政府は、2015年末までにオープンデータ憲章並びにその技術的な詳細を定めた別添Technical Annexに明記されている項目をすべて実現する義務があります。G8の合意内容には、国際的な土地取引や天然資源採取に関する透明性確保のために公的機関が保有するデータを積極的に開示することや、開発援助の透明性について説明責任を果たすためにデータを積極的に公開することなども含まれています。

今回のG8では、日本政府は国際会議という公の場で、オープンデータ憲章を守るという国際公約をしたことになります。