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アジアで電気代が一番高いフィリピン(2)、日本もフィリピン並みのデータ公開を

2013年8月13日 in Special

前回は、フィリピンエネルギー省が立ち上げたデータ公開サイトkuryenteと、ソーシャル・ニュース・ネットワークのRAPPLERが作成したビデオ、Why are Electricity Rates in the Philippines the Highest in Asia?を中心に、フィリピンの電気代について詳しく見てきました。今回は、アジアではフィリピンとトップを争う日本の電気料金と、電気料金に関するデータ公開の実態について調べてみます。

kuryenteで使われている電気代のモデルは、消費者が月に400kwhを使用した際の電気代を計算したものです。このkuryenteのモデルを使って東京電力の電気代を計算してみます。契約アンペアは30アンペアとし、東京電力のホームページに掲載されている「契約アンペアごとの平成25年9月分電気料金の算定」をもとに、従量電灯B・30Aで契約している家庭が月に400kwh使用した際の電気代を計算してみました。

  • 基本料金:819
  • 第1段階料金(120kwhまで): 18.89円/kwh × 120kwh = 2266.8
  • 第2段階料金(300kwhまで): 25.19円/kwh × 180kwh = 4534.2
  • 第3段階料金(300kwh超): 29.10円/kwh × 100kwh = 2910.0
  • 燃料費調整額: 1.98円/kwh × 400kwh = 792
  • 再生可能エネルギー発電促進賦課金: 0.35円/kwh × 400kwh=140
  • 太陽光発電促進付加金: 0.05kwh × 400 = 20
  • 口座振替割引額: – 53
  • 月額料金: 11,429円/月(400kwh)
  • 平均: 28.57円/kwh

東京電力の電気代は28.57円/kwhと、フィリピンのMERALCOの電気代11.25php/kwh(約24.86円/kwh)よりも高額です。ただし、MERALCOのデータが2013年7月時点で燃料価格高騰前であるのに対して、東京電力のデータは燃料価格高騰後、且つ、値上げ後であることから考えると、電気代について両者にそれほど大きな差はありません。

しかし、データ公開という点では両国に大きな差があります。上記の東京電力のデータは毎月契約者に渡される「電気ご使用量のお知らせ」に記載されていますが、その読み方は東京電力のホームページで探さないとわかりません。また東京電力によれば、電気料金は総括原価に基づいて決定しているとのことですが、その総括原価の内訳については「よくあるご質問」の中で質問に答える形で記載されているだけです。以下は総括原価について「よくあるご質問」で公開されている内容です(2012年9月の新料金決定時のデータ)。

  • 燃料費: 約43%、購入電力料: 約14%、減価償却費: 約11%、人件費: 約6%、修繕費: 約7%、その他(事業報酬、税金、委託費など): 約19%

しかし一方で、こうした総括原価に関するデータはすでに電力会社から政府に提出され、集約され、公開されています。下図は日本の資源エネルギー庁が公開しているグラフで、電気料金に占める総括原価の金額を電力10社の平均値として公開したものです。

 

 

このグラフは、電力10社が認可申請・届出時に資源エネルギー庁に提出した資料をもとにして作成されています。すでに電力各社は総括原価配分のロウデータを資源エネルギー庁に提出しており、上図のようなグラを各電力会社に対して描くことが直ちに可能な状態にあります。そして、各事業者ごとの総括原価配分のロウデータが公開されれば、ドリル・ダウンをしてさらに詳細な分析をすることや、他の財務諸表との突合せなどによってデータに矛盾がないかどうかをチェックすることも可能になります。

東京電力は、「総括原価の配分は電気事業法および経済産業省令に定められたルールに基づいて、公平に行っている」とのことです。この言葉には嘘はないと思います。それを裏付けるデータはすでに資源エネルギー庁に何年も前から提出されています。

今回行った単純な試算では、2013年9月時点での東京電力の電気料金は28.57円/kwhとなり、5年前の電力10社平均である16.38円/kwhに比べて、実に74%、12円/kwh超も電気代が高騰したことがわかります。燃料価格の高騰というコントロールし難い要因があるにせよ、命に直接かかわるライフラインを守るためには、市民の理解を得た上で、その力を活用することも必要です。上手くいかない時には「閉ざす」のではなく「開く」ことが必要で、信頼はデータの上に築かれます。

日本の資源エネルギー庁はフィリピン・エネルギー庁のように、データ公開を早急に進めて欲しいと思います。

 

アジアで電気代が一番高いフィリピン(1)、その理由がわかるアプリとビデオ

2013年8月12日 in Special

アジアで一番電気代が高い国、フィリピン。意外と知られていませんが、日本やシンガポールよりもフィリピンの電気代は高い言われています。なぜフィリピンの電気代が高いのか、その理由がよくわかるアプリとビデオをご紹介します。

フィリピンの電力代が非常に高いことについては、日本からフィリピンに長期滞在した方や、移住した方のブログなどでときどき報告されています。その中でよく指摘される原因の1つが盗電です。盗電とはその名の通り、配電事業者と契約をしていない人が電線から勝手に電気を引き込んで使ってしまうことです。盗電による損失は配電事業者が負担するのではなく、Systems Lossの一部として電気代に加算され、電気代を支払っている人が負担しています。そのため、高い電気料金に苦しんでいる人から見れば、盗電は憎むべき犯罪とみなされています。

それでは実際に盗電がどれくらい電気代に影響しているのか見てみましょう。フィリピンの電力事業を取り仕切るエネルギー省は、フィリピン国内の電力事業者に関する情報を公開するサイトkuryenteを立ち上げました。kuryenteはタガログ語で電力の意味です。kuryenteではフィリピンの街の名前を指定したり、電力事業者名を指定することで、電気代について詳しく調べることができます。

例えば、マニラ近郊を事業地域とするフィリピン最大の配電会社Manila Electric Corporation、通称MERALCOについて調べてみます。kuryenteでテキストボックスにManilaとタイプしていくと、候補がドロップダウンリストに表示されます。Manila, NCR – METRO MANILA MERALCOを選択するとMERALCOの電気代が、どんな構成になっているのか詳しく知ることができまます。MERALCOの電気代はこのブログ執筆時点で、11.25php/kwh(約24.86円/kwh)となっています

 

 

フィリピンの電力セクターは、発電、送電、配電に分割されています。MERALCOは配電事業者ですから、発電、送電の各事業者への支払いをそれぞれGeneration Charge、Transmission Chargeとして加算し、さらにMERALCO自らの配電コストをDistribution Chargeとして加算しています。Metering Chargeとは、配電事業者であるMERALCOが負担しているコストで、電力メータの設置、メンテナンス、メータ読み取りなどにかかる費用です。

MERALCOの場合、Systems Loss Chargeは0.58php/kwhで、電気代の5%ほどを占めています。ここで表示されているSystems Lossには配電上の技術的な問題から生じる正真正銘のロスも含まれており、残念なことに盗電と実ロスとの切り分けはできていないため、盗電が電気代を実際にどのくらい押し上げているのかはわかりません。少なくともMERALCOの場合、盗電によるロスはは電気代の5%以下と言うことができます。

UCで始まるコストは、ユニバーサルチャージ(Universal Charge)に関するもので、電力供給の不平等をなくしたり、環境への負荷を低減するためのプログラムを実行するためのコストを、広く電気利用者に負担してもらおうというものです。例えばUC-MEは、Universal Charge for Missionary Electrificationのことで、ユニバーサルチャージのうち電力供給が遅れている地方の電化に使われる部分であり、UC-ECはUniversal Charge-Environmental Chargeのことで、環境負荷低減プログラムへ使われます。

さらにkuryenteは、配電事業者をさまざまなデータをもとにしてランキングする機能を備えています。電気代、従業員数、営業収益、技術的な優越でランキングを表示したり、条件を指定してフィルタリングをすることができます。たとえばSystems Lossがどうしても気になる方は、Systems Lossの最も少ない配電事業者を簡単に見つけ出すことができます。

フィリピンの電気代はなぜ高いのか、過去の経緯を含めてもっと詳しく知りたい方には、ソーシャル・ニュース・ネットワークRAPPLERが作成したビデオ、Why are Electricity Rates in the Philippines the Highest in Asia?がお勧めです。電気代を構成する費用や収益の構造だけでなく、電力に関する過去の歴史や政治的な経緯などを含めて実に詳しく、楽しく解説してくれます

 

解説はひとつひとつのコストを積み上げる形で進んでいきます。発電・送電・配電のコスト、利益の上乗せ、ユニバーサルチャージ、過去の負債の清算など、電気利用者の肩に次々と重しが積まれていく様が、ホワイトボード上に実にダイナミックに描かれていきます。最終的に出来上がったイラストは、高額な電気代を背負い、四苦八苦しているフィリピン市民を描いた秀逸なものに仕上がっています。

アジアで電気代が一番高いと言われているフィリピンですが、電気代に関するデータ公開という点でもアジア最高クラスにあると言えます。